魔王さまと巫女、出会う
久々の投稿です
暗い牢の中
身動きをするとシャラリと鎖の音がする
簡素な木のベッドしかない牢内はすきま風が吹きとても寒い
日本にいたときはまだ夏だったがこの世界は冬なのだろうか?
はぁーとため息をつくと白い
何故こんな状況になっているのかと言うとそれは数時間前のこと
今日は8月の暑い日だった
あまりの暑さに仕事帰りの私は家の手前にある公園のベンチに座り
よく冷えたコーヒーを飲んでいた
そしたら急に地面が光りだし、意識が遠のいたのだ
目が覚めたときにはもう知らない場所にいた
目の前にはギラギラした趣味の悪い広間が広がっていて
階段の上のところに宝石をじゃらじゃらと付け
やたら偉そうな肥え太ったカエル顔のおじさん(周りのおじさんが陛下と呼んでいたので王様なのだろう)と
その周りには他にも私の父親と同じ世代のおじさんが30人ほどいた
突然のことに茫然としているとカエル顔のおじさんが
「それを地下牢に閉じ込めよ。前の者のように逃がしてはならぬ。」
といった
それって私はもの扱いですかなんてのんきなことを考えていられたのはそこまでで
両腕を片方ずつ鎧を着た人たちに捕まれ
無理矢理この地下牢へ入れられた
しかもご丁寧に頑丈そうな鎖までつけて
日本の一般家庭で平凡に育った私は脱獄なんて出来ないし
鎖を外すなんて無理である
しかし私は何とかして逃げなくてはならないようだ
何故かと言うと私をここに連れてきた兵士がニヤニヤして話してくれたのだが
私は巫女にされるためにこの世界に召喚されたらしい
ふざけるなといった感じだが何でもこの国の国王は周辺国に強欲で知られており、数年前に近隣の国を征服するために勇者召喚という名の戦闘奴隷を召喚したらしい
しかし当然召喚されたものが国王の言うことを聞くはずもなく、一応呪縛は掛けられていたそうだがすぐに解かれ逃したらしい
その異世界人はひとつ国を滅ぼし、魔王と呼ばれる魔族の王を下したそうだ
その結果、異世界人が魔王と呼ばれるようになり、そして勇者を召喚し、新たな魔王を産み出したこの国は現在他国からバッシングをくらっているらしい
まあ当然のことだろう
そしてその状況を打開しようと考えた結果新たな異世界人を召喚ということになり、私という巫女を召喚したらしい
異世界から膨大な量の魔力をもつ者を呼び出し、邪神と呼ばれる神に捧げ自分達を苦境に追い込んだ(自業自得)魔王を討伐しようということだそうだ
なんでもこの国は数千年前に勇者を召喚し、世界を滅ぼそうとしていた魔王を討伐、その後邪神も封印したらしい
だからこの国の王城の地下、深くに封印の間がある
私を捧げて本当に邪神蘇るのか、また邪神が自分を封印した国の頼みを聞くのか疑問である
だがどうなるかはわからないが生け贄といわれると人柱等が思い浮かぶ
よみがえろうとよみがえらなかろうと私は死にそうだ
どうしよう本当に
逃げないとヤバイだろう
だけど王様の言ったことから鑑みるに前に召喚された人も逃げたのだろう
牢に連れてこられるときも見張りの人があっちこっちにいたし
いくら異世界に来たとはいえ全く魔法とかファンタジーな力を使える感じはない
恥を忍んでファイアーボールと叫んでみたが沈黙が痛かった
この年になって黒歴史ができてしまった
そして身体能力が上がってないことも牢の石の壁で確認済みだ
思いっきり蹴ってみたらすごく痛かった
この世界のお金があるわけでもないので外に出ても当てもないし
魔物とかいそうな世界でどうすればいいのかさっぱりである
前の人はいったいどうやってここから逃げ出したのだろう
完全に詰んだわ……
「お腹も減ったなー。」
「お前、のんきなやつだな。」
呟いたら後ろから返事が返ってきた
「だっ、誰!」
振り向くと若い二十代前半の美形がいた
「俺は魔王だ。お前の前に召喚されて、勇者にされかかって逃げた。助けに来てやったんだからとりあえず逃げよう。」
何というか魔王だなんて宣言されるとこいつ大丈夫かって思ってしまう
まあこの世界は本当に魔王がいるみたいだけど
魔王っていうのが嘘でも本当でも逃がしてくれるならついていってもいいかな
「わざわざありがとうごさいます。よろしくお願いします。」
「あぁ、じゃあ行くぞ。目を瞑っておけ。」
そう言って魔王さんが指を鳴らすと牢内が目をつぶっていてもわかるくらい明るく光った
そして目を開けるとそこはふっかふかなベッドだった
「ここは?」
始めてくる場所だ
もっともいったことがある場所なんて牢に入る前の広間と牢くらいなのだが
この世界で初めてみた場所と違って落ち着いた印象ながらも高級感漂う部屋である
今いる部屋だけでも私が住んでいた家(1LDKバス・トイレ付き)よりずっと広い
趣味のいい人が住んでるんだなーと感じるインテリアだ
「ここは魔王城だ。俺が前魔王から受け継いで住んでるところだ。」
魔王城……
「なんか全然イメージと違いますね。魔王城というともっと毒々しくて骸骨とか転がってるイメージだったんですけど。」
「当たり前だろ。そんな場所住めるか。」
確かにそんなとこ住みたくない
「で、お前を助けた理由なんだがただ同郷のよしみでだ。俺がお前の前に召喚されて身体能力があがってて魔法も使えたから逃げたんだ。」
あれ、私は何の力もついてないんですけど
「私も何か能力とかありますか?」
「ないな。俺という前例のせいでお前は純粋に魔力を大量に持ってるだけの人だ。召喚陣にそう組み込んであるらしい。」
そんな、魔法使ってみたかった、かっかりである
「それで、逃げ出したあといろいろあって魔王にあったんだが魔王と戦ったら勝ってそしたら魔王の座を譲られたんだ。」
「魔王に勝つとか本当にチートなんですね…」
「だって俺戦わせるのを目的に呼び出されてるからな。正し戦闘以外の能力はたいして変わってないし。」
なるほど、そうなのか
「これからどうしよう」
魔法も使えず、身体能力だって普通どころか日本での便利な生活に慣れていたのだから低いのだろう
「俺たち異世界人は莫大な魔力を大量に持ってる。それは使えなくてもお前も一緒だ。だから下手したら魔力の貯蓄タンク扱いされる。他の人間の国に行けばある程度丁寧に遇されるだろうが、ほとんど幽閉に近い状態になりそうだ。」
「日本に帰ることはできないんですか?」
魔王だったらできそうだよね
「無理。召喚は上位世界から落とし穴で落とす様なものだし。代々伝わってる魔王の術でもそんなのないんだ。」
「どうしよう……」
「安心しろ、俺が仕事をやってもいい。お前料理は出来るか?」
「出来ますけど。」
独り暮らしだったから料理はできる
読書くらいしか趣味もなかったから休みの日にはいろいろ調べて作っていた
お菓子作りも得意だ
「だったらちょうどいい。俺の食事係なんてどうだ?。この世界の料理はやたら塩辛いから苦手なんだよ。だけど俺料理とか出来ないし。掃除なんかは魔法で片付くけど料理どうしようもなくて。」
「助かります。でも私この世界の材料は知らないですよ?」
「それは大丈夫。もう確認済みなんだ。もとの世界と同じだった。調達は俺がするから。それで仕事をしながら文字とかこの世界のことを学べばいいだろう。」
それだったら出来そうだ。
「これからお願いします。」
「あぁ、こちらこそよろしく。」