任命、そして新たなる世界へ
オスカーの苗字、国名、その他の名前を考えるのが1番大変でした。
森羅殿の最上階直通エレベーターの扉が開き、高位の冥官が出てきて入り口へ向かう。
「そこな指導霊を中へ。」
入り口警備の冥官に指示した。
「そなたの請願、大王陛下が聞き届けるとの仰せじゃ。」
「誠でございますか!」
「ここは森羅殿、その主である陛下の仰せじゃ、中で詳しく語るが良い。」
高官はそのままきびすを返し、クロードは慌ててその後を追う。
その一方で、別の高官が皇太子の元を訪れていた。
「殿下、大王陛下よりのお召しにございます。」
「何でしょう、特に失態を犯した覚えはないのですが?」
と、何かびくついたように応じる皇太子。
「殿下、陛下のお召しと言えば、毎回失態への叱責ではございませんよ。」
と苦笑しながら高官が答える。
「陛下からのお召しに毎回良い思い出がないんだよなぁ・・・。
仮病を使ったら、舌を抜かれて腹を物理的に探られたし。」
「はっはっはっ、殿下、それは違いますぞ。」
「何が違うんだい?」
「まずは病の原因を探るためにお腹の中をお障りになられて、
嘘と判明したので罰として舌をお抜きになられたのでございますよ。」
「はぁっ、皇太子でも容赦がないんだよなぁ、あのお方は・・・。
とりあえず行ってくるから、みんなは休憩でもしていてくれ。」
ぼやきながら立ち上がり、部下達に休憩を申しつけて皇太子は高官とともに執務室を出る。
閻魔大王の執務室に皇太子が入室してきた。
「お召しと言う事で参内つかまつりました、陛下。」
「来たか。
そなたが抱えている案件と、放置している案件をまとめて解決するぞ。」
「抱えている案件はともかく、放置している案件とは?」
「ここ1ヶ月ほど、そこな守護霊を警備の者達が門前払いしておった。
警備責任者の裁量の範囲故、皇子には報告も上がっておらぬようじゃな。」
「誠に以て面目次第もございません。」
「まあよい、そなた、面を上げて、皇太子に子細を話せ。」
とクロードに話を促す。
「ははぁっ、私は、ヴァッサーラントの北トルサ大陸東側に位置しますナンダーラ王国子爵オスカー・ヤンセンのソウルマスターであるクロード・ヤンセンと申します。
今回まかり越しましたのは、オスカーの妻ミリアリアが宿した胎児が持つ魔力を、現在のソウルマスターであるジェームスでは抑え切れそうになく、生まれ落ちたのちすぐに魔力制御リングを20個ほど付けられかねません。
あれは1つでも大変つらい物でございますので、魔力の制御が出来そうな霊を胎児の新たにソウルマスターとして派遣していただきたく参上いたしました次第にございます。」
チラッと皇太子に目をやり大王が続ける。
「普通であれば、そのような力を持つ魂は森羅殿に来る前から行き先を定めておる。」
「そこを何とかなりませぬか。」
と平伏して懇願するクロード。
「普通であれば、と申したであろう。
幸いなことに、そのような魂にアテがある、なぁ、皇太子。」
「もしや、待機室の?」
「そうじゃ。
あの日増しに増え続ける魔力をどうにかしないと森羅殿の結界すら危ういし、もし暴走してしまったらそなたか余が出ないと、被害甚大じゃ。
ソウルマスターとして送り出せば、その心配も無くなるであろう?」
「しかし陛下、相馬颯真はヴァッサーラントに縁がございませんが、そこはいかようになさるおつもりで?」
「なぁに、縁ならあるさ。
問題の胎児の魂は、そなたが転生させたあの嬰児の魂ぞ。
相馬颯真とともに冥界へ上がってきたであろう、それも立派な縁じゃ。」
「なるほど、そう言うことであれば、一石二鳥、いや三鳥と言うものでございます。
では誰か、相馬颯真をここへ。」
衛兵の1人が伝令に走って行った。
そして颯真が瞑想している待機室の扉が開けられ、エドが飛び込んできた。
「喜べ、お前の行き先が決定したぞ。」
「へ?修行はもうよろしいのですか?」
「大王陛下直々の御裁可だ、それにお前の魔力は、暴走してしまうと皇太子殿下や大王陛下でないと抑えきれないから、早くここから出したいそうだ。」
「なんか、後半に本音がダダ漏れですね。
まあ、閻魔様に逆らうと舌を抜かれますからねぇ。」
「よし、早速最上階にある陛下の執務室へ行こう。」
颯真はエドの案内で閻魔大王の執務室行きのエレベーターに乗った。
「相馬颯真を案内して参りました。」
「ふむ、相馬颯真はこちらへ。」
と閻魔大王が手招きするので、広間の真ん中に立っている魔法使い風の人がいる所へ歩み寄る。
「相馬颯真よ、此度、死す運命にあったそなたの次の生を用意できていなかったことについては、我ら森羅殿の落ち度だ、面目ない。
そなたの今後についてであるが、しばらく守護霊として過ごして貰うこととした。」
「守護霊でございますか。
となりますと、孫、甥や姪の子供など、或いは親族の子供の守護でございましょうか?」
「いや、そなたはいずれ、魔力を力として振るうことが出来る世界へ転生させるつもりじゃ。
よって、その世界に生まれ落ちる予定の子供の守護について貰おうと思っておるが、どうじゃ?」
「異世界転生・・・、物語のようでございますね。」
「ふはは、この冥界にいること自体、生者の世では物語であろう。
これが嫌であれば、冥官として雇い入れることも可能じゃぞ。」
「失礼ながら、参考までに冥官として雇っていただけた場合の仕事は何を?」
「それだけの魔力があれば、甥に任せている重犯罪霊を封ずる遊撃隊へ編入じゃ。」
「君の魔力であれば、陛下か私の側近勤務になるのだけれど、いきなりだと今いる冥官達との軋轢が起きかねないしね。」
「なるほど、しばらくの間は荒事専門部隊ですか・・・、謹んでご辞退申し上げます。」
「では、そこなクロード・ヤンセンが守護するオスカー・ヤンセンの妻が孕んでおる子供の守護、ソウルマスターの任に就くことでよいな。」
「ソウルマスターとは、どのような役割でございましょうか?」
「守護する人の魔力制御や使い方を指導する守護霊と思ってくれれば良いよ。」
「そなたと一緒にここへ来た嬰児の魂が守護する相手じゃ、縁もある。
クロードよ、バーバラ達への橋渡しを頼んだぞ。」
「ははっ、ご配慮、感謝いたします。」
「それと現在ソウルマスターとなっているジェームスは、颯真の補助に入って貰ってくれ。
任期が切れたらそのまま復職して貰うから。」
「陛下、並びに皇太子殿下、あの娘のソウルマスターに就くにあたり、1つよろしいでしょうか。」
「申してみよ。」
「異世界に渡るのであれば、生前の名に意味はございません。
そこで、ソウルマスターに任ぜられるのであれば、相馬でも颯真でもなく、ソウマと名乗らせていただけないでしょうか。」
「君ねぇ、犬をわんこ、ネコをにゃんこと名付けるような感じで・・・。」
「よかろう、ソウマ、ソウルマスターとしての任期の終了は追って指示する、行けぃ。」
大王が退室を指示したので、ソウマはクロードとともにヴァッサーラントへと旅立った。
最初は、ソウマと名乗る前の名前を出さない予定でしたが、話が進まなかったのでやむを得ず。