任命の裏事情・守護霊たちの事情
どうにか1ヶ月経過前に続きを投稿することが出来ました。
時は少し遡る。
皇太子は嬰児の魂を抱いて裁定室に向かっている。
「あの~~、皇太子殿下、何故私は殿下に抱かれているのでしょうか?」
「あぁ、君の記憶調整に微妙な加減が必要でね、僕が細かい調整をやっているんだよ。」
「細かい調整って・・・、どうなるのかお伺いしても?」
「そうだね、全部消してしまうわけにはいかないし、さりとて全部残すわけにもいかない。
普通はきれいさっぱりと記憶を消すんだけど、生前の赤子を何人も殺したと言う記憶と、死んでからの修行の記憶は残したいから、結構手間なんだよ。」
「そんなの聞かされたら、生まれ変わりたくなくなりますよ。」
「なぁに、転生したらぼんやりとそんな記憶があるなぁ、って感じかな。
あとは、守護霊達から啓示があるはずだよ。」
会話をしながら記憶の微調整を終わらせた皇太子は、嬰児の魂に前世の記憶などの確認を取る。
「あれ?・・・、名前もどこでどんな暮らしをしていたのかも思い出せないけど、いっぱい赤ちゃんを堕ろしたり殺したことだけ・・・、と死んでから何回も赤ちゃんのまま死んだこと・・・。」
「どうやら上手くいったようだね。」
裁定室の扉が開き、中にいた霊達が皇太子に向かって頭を下げる。
「この人達は?」
「君の守護霊団だよ。
あぁ、今までの転生は君への罰だったから編成されなかったけどね。
今度は異世界の下級貴族とは言え、そこそこ裕福な家に生まれさせる予定なんだ。
キチンと成長できるはずだよ。」
霊達のリーダーとおぼしき霊が進み出て皇太子に一礼して話し始める。
「殿下、ひ孫として生まれる魂を送り届けていただき、誠にありがとうございます。」
「ん、確か・・・、バーバラだったか、大儀である、では、あとはまかせた。」
平伏するバーバラに嬰児の魂を手渡して、皇太子は部屋を出て行った。
「儂がおぬしの守護者のリーダーであり、曾祖母となるバーバラじゃ。
まあ、生まれ変わったのちには憶えておらぬと思うがな。」
「ひいお婆ちゃん、ですか・・・、よろしくお願いします。」
「おいバーバラ、そろそろ行かんと孫娘達のまぐわいに遅れるぞい。」
「そう焦りなさんなジェームスや、排卵から受精のタイミングまでバッチリじゃよ。」
「・・・、うわ、なんか生々しい・・・。」
「わははっ、人の、いや、生きとし生けるもの全ての真理じゃよ。
では飛ぶぞぃ。」
一瞬にして、男女が夜の一戦を交えた部屋の中。
「おぉ、来たか来たか、玄孫とその守護者達。」
「昨晩まぐわったのが、もうすぐ受精じゃ、これを逃すとまた1月待ちじゃぞ。」
母親と父親の守護霊達が出迎える。
「そっちのが玄孫の魂か。
私は、お前の母親となるミリアリアの守護をしているエリザベスじゃ。」
「そして俺が、父親のオスカーの守護、ジャックだ。
すぐに忘れると思うが、成長して墓参りなどしてくれたら嬉しい。」
「は、はい、よろしくお願いします、・・・、お父さんがオスカー、お母さんがミリアリアですね。」
「そうじゃ。
まあ、産まれたら忘れるじゃろうが、また憶えればよいよい。」
「ほれ、もうすぐ受精じゃ、おぬしが入らんと、卵割が始まらないぞい。」
「あ、はい・・・、さん、にぃ、いち、では、行きますっ!」
と、嬰児の魂が受精卵に飛び込んで定着したところで卵割が始まる。
「ふぅっ、これでミリーに無茶をさせぬよう誘導せねばならぬな。」
「俺も、ミリーに無理させないようオスカーを指導する。」
そして2週間。
「ようやく器官形成が始まったわい、しかし、これから4ヶ月は気が抜けんな。」
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そろそろ妊娠3ヶ月で悪阻が起き始める頃、オスカーの守護霊の1人がジャックに話しかける。
「おいジャック、ミリーの腹の中の子供がチト不味いぞ。」
「何が不味い、クロード。」
「胎児の魔力が歴史に名を残す魔導師になりそうなくらい大きくなりそうだ、バーバラ達では抑え切れんぞ。」
「と言うことだが、エリザベス、お前の方ではどうだ?」
とエリザベスに話を振る。
「そうね、この位の胎児にしては魔力は大きいと思うわ。
うちの家系は魔法師だけど、産まれて物心がついたら魔術師に弟子入りさせて、魔力の制御を憶えさせないとマズイかもね。」
そこに割り込むクロード。
「いや、産まれる前からこっちで制御しておかないと、産まれて早々から魔力制御リングを何本も付けされられる羽目に陥る。
15歳くらいになって自分で魔力制御を出来るようになるまで5本付けさせられていたが、あれは、結構きつかった。
こっちで何もしないと、バーバラ達の制御では、あの娘に魔力制御リングを私の2倍か3倍付けないとダメだろう。」
「クロードさん、そう言えばあなたはオスカーの家系で名を馳せた中堅クラスの魔導師でしたね。
オスカーのソウルマスターであるあなたがそう言われるのであれば・・・、私たちでは無理かも知れません。」
そこでエリザベスが提案する。
「とりあえず、産まれるまでなら私たちもバーバラ達に協力できるわ。
それまでに冥府からソウルマスターを手配してもらえるよう要請してみてはどうかしら。」
渋い顔でジャックが応じる。
「あの胎児の制御となると、かなり強力な魔力の持ち主をソウルマスターとして回してもらわねばならん。
しかし、そんな魂であれば、とっくに冥界に入ったあとの予定も定まっておろう。」
「まあ、ダメ元で要請してみても良いのではないかしら?」
と、エリザベス。
「ふむ、では言い出しっぺのクロードがダメ元で冥府への要請に行く、結果が出るか十月十日まではエリザベス達とバーバラ達が主体、俺たちは補助で胎児の魔力を抑える、でいいな。」
そうジャックが提案すると、
「こちらで何も出来ずに、月が満ちて産まれてしまったら、現世の者達の手に委ねるしかありません。」
と、エリザベスが応じる。
「では、冥府に直訴してきます。」
「じゃあ、エリザベス、ジャック、ご協力、よろしくお願いします。」
クロードが冥府へと飛び出し、バーバラが両親の守護霊達に頭を下げた
次こそなるだけ早く投稿しようかと。