EPILOGUE
その後、ダグラスの街改め、ダグラス王国はミノス・ケルディアを国王とし、レイノス王国国王と和解をし、再び両国は友好的になった。
その立会人として、レイノス王国前国王のクラース・デルト・レイノスと、異世界人であり、ミノスを説得した支倉 誠が出席した。
これにより、両国は決してダグラスの街のようにしないために、世界各地に呼びかけ、これを全世界に条約として締結された。
後にこの条約を、ダグラス条約と名付けられた。
全世界はこれを受諾し、争いを起こさないと誓い合った。
だが、問題は未だ山積みであった。
すべての国の王が集まり、会議を開いている。
全てが解決するまでにまだまだ時間はかかるだろう。
だが、全ての国が同じ方向へ動こうとしている。
だからもう心配はいらない。
誠はそんなことを思いながらハルバート達と帰っていた。
「本当に平和になるんかなぁ?」
「なるさ。願わくば、この世にすべての争いがおこらぬように。」
ハルバートは少し心配になっていたが、誠には確信があった。
ミノスの眼はどこまでも真剣でまっすぐ見つめていた。
他の国の王も、同様にだ。
彼らならこの世界を平和にしてくれるだろう。
争いは何も生まないことを知ったから。
「もう、大丈夫さ。」
誠達五人の顔は晴れやかだった。
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家に帰った彼らは両親に抱きしめられた。
心配してくれる人が、優しく抱きしめてくれる人がここにいて、温かい人たちがいるそんな世界を守りたかった。
誠はそんな一心でミノスに言葉をぶつけ、世界を変えた。
世界を変えた行動をしたのは彼だけじゃなく、世界のすべての人が変えたのだ。
誠はそう思っている。
そんなことを考えるよりも今は両親に会えたことを喜んだ。
「父さん、母さんただいま。」
ダイスはいつもと変わらない表情だったが、目にうっすらと涙を溜めていた。
シノフィは誠とカノンを抱きしめながら号泣していた。
それを見ていたハルバート達の目にも涙が浮かんでいた。
「おかえり…。」
「よく帰ってきたな。」
「よかったな。」
「そうですね。それよりハルバートにも涙線はあったんですね。」
「本当によかった。」
口々に再開ができてよかったと口にしていた。
だが、そんな彼らにお別れの時間がやってきた。
誠の指先がうっすらと透明になっていた。
全員が言葉を失った。
誠の体全体がみるみるうちに透明になっていく。
「お別れみたいだね。僕はみんなと会えて嬉しかったし、楽しかった。」
「俺だって同じだ!!何でだよ!!これからみんなでもっと遊べると思ったのに!!」
「誠にこの世界の知識をもっと教えてあげようと思っていたのに。」
「お別れなんていやだよ…。」
ハルバート、ケルス、リンネは口々に言う。
誠は心が熱くなっていくのを感じた。
「どうしてよ…。家族になったばかりなのに…。」
「ごめん。」
カノンは俯いて肩を震わせていた。
そんなカノンの肩に手をそっと置いた。
誠とカノンの横にシノフィとダイスもいた。
「父さん、母さん、次はいつ帰って来れるかわからないけど行ってきます。」
「しっかりやって行けよ。」
「気をつけてね。」
「うん。」
シノフィは涙を流しつつ優しく微笑んだ。
ダイスはいつも通りの無表情かと思ったが、思いっきり男泣きをしていた。
誠は彼らを見ながら今までを思い出す。
ハルバートは最初に会ったときから気さくに声をかけてくれた。
ケルスは最初、警戒していたがだんだん心を開いてくれて、いろいろ教えてくれた。
リンネにはたくさん心配をかけてしまった。
カノンは初め、敵意むき出しだったが、家族になってとても優しかった。
ダイスはいつも無表情だが誰よりも家族のことや、周りの人たちに心配りをできる人でとても尊敬できる人だ。
シノフィはどんな人でも優しく接し、どんな時も温かい微笑みを向けてくれる太陽のような人だった。
そんな二人が誠は好きだったし、何度も心を救われた。
もちろんハルバート達も好きだ。
異世界から来た誠を友達として歓迎してくれた。
全員に対して誠は感謝をしてもしきれない。
だが、誠にはやれることはないため、完全に消える前にこういった。
「みんな今までありがとう。またいつか会える日が来ると信じて。」
言うのと同時に誠は消えた。
その場にいた全員は泣き崩れた。
だが、誰もが思っていた。
近いうちにまたいつか必ず会えると。
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誰かの声が聞こえる。
誠はその声の主を見るために目を開けようとした。
その瞬間眩しいばかりの光で一回、目を閉じたが再び開けようとする。
ぼんやりとした視界がだんだんとはっきりしていく。
誠の周りには久しぶりに見た顔があった。
日向、徹、麗奈。
彼らの顔を見て誠はほっとした。
「誠くん!!私のことわかる?」
「当たり前だろ。日向。」
「まことっち私のこともわかるよね?」
「あぁ。麗奈だろ。」
「誠!!俺のことは!?」
「えっと誰だったかな…。思い出せない…。」
「お、おい…。」
全員が心配そうに顔を覗き込む。
徹にいたっては本気で泣きそうだった。
「嘘だよ。ごめんよ、徹。」
「びっくりさせんなよ…。よかった。」
「心配させてごめん。」
誠の言葉を聞いた全員は首を横に振った。
「私たち絶対に目を覚ますことを信じていたから。」
日向がそういうと首を縦に振りながら微笑んだ。
誠はまた心が熱くなり泣きそうになった。
今日一日で再開し、別れ、再開した。
誠は様々な感情があったが、信じてくれた友がいることに感謝と共にこう思った。
この世界もあの世界のように温かく、美しい――
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退院した誠を待っていたのはクラスメートの祝福だった。
「みんなありがとう。」
誠がそういうと皆当然と言わんかのような顔をしていた。
そうしてこの不思議な物語のようなことは終わり、誠の耳鳴りもなくなっていた。
その後はいつも通りの生活に戻った。
朝起きて、学校へ行き、みんなとしゃべり、勉強して、遊ぶ。
そんな当たり前の生活が誠は嬉しかった。
その時に誠はこう願った。
こんな平和な日常が永遠に続くように、と。
この話はこれで終わりです。
こんな駄文を読んでくれてありがとうございました。
短かったので読みごたえがなかったと思いますが。
もしよければ感想を書いてください。




