第二話 Resuscitation―蘇生―
誤字や脱字があるかもしれませんが最後まで読んでくださると光栄です。
風が心地よく吹いている…。
誰かの声が聞こえてくる。
俺…生きてるんだ…。
誠はぼんやりとそんなことを思った。
もう少しだけ寝させてくれよ…。
そう思ったのだが、今度は体をゆすられる。
声が聞こえるが、あの三人の声ではない。
誠は違和感を覚えて目を少しずつ開ける。
光で初めは何も見えなかったが、しばらくすると、見たことのない人の顔が誠の顔をのぞいていた。
驚いてしばらくは動けなかった。
覗いていたのは女の人だった。
看護婦かなと思ったのだが、服装が変だった。
一昔前のような格好をしていた。
誠は夢を見ていると思った。
夢であってほしいと思ったが、女の人がほほ笑みながら質問をしてきた。
「大丈夫?ここら辺では、見かけない顔だけど君は誰?どこから来たの?」
「えっと…。俺の名前は、支倉 誠です。日本から来ました。」
「にほん?そこってどこ?」
「え?」
誠は絶句した。
言葉は一応通じてはいる。
何かがおかしい、そう思った。
「ちなみにここはどこであなたの名前は?」
「ここはライッシュ村で、私はシノフィ・リナーファ。」
場所を聞いた時、何かのどっきりかと思った。
だが、本当のことだろう。
このシノフィと名乗った人の目は真剣だったからだ。
「そうですか…。ありがとうございます。」
誠はそう言って立ち上がり、どこかに歩いていこうとしたところ、シノフィに呼び止められた。
なんだろうと思い振り返ってみる。
「行くあてはあるの?」
「これからあてをつくります。」
「それだと大変だから家に来ない?」
確かにいくあても何もない。
それにここは完全に異世界だろう。
だったらここでの常識は知らないし、道も何も分からない。
当然いつかはだれかの家に泊まることになっただろう。
それがいつかはわからないが…。
誠にとって今が絶好のチャンスだ。
だが、ここで誠は考える。
何か裏があるかもしれない、と。
昔からの癖で変な風に人を疑ってしまう。
たとえそれが善意だとしても。
「迷惑じゃないでしょうか。」
「迷惑なんかじゃないわ。あなたがどうしても嫌っていうなら無理強いはしないけど。」
「お金持ってませんよ?」
「構わないわよ。お金が欲しくて言ってるわけではないから。」
誠は感じた。
この人の言葉に嘘、偽りがないことに。
逆にこれが演技だとしたら名演技どころではないだろう。
誠はシノフィの言葉に甘えさせてもらうことにした。
「わかりました。では、お言葉に甘えさせてもらいます。しばらくお願いします。」
「いいのよ。困った時はお互い様でしょ?」
「そうですね。」
こうして誠はシノフィの家に行くことになった。
まだいろいろわからないことが多すぎる。
だがこれから勉強していけば何とかわかるかもしれない、そう思いながら誠は、シノフィの後をついていった。
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シノフィの家に着いた。
外観は木造でもといた世界だと合掌造りのような感じだった。
誠が寝ていた場所から十分ほどのところにあった。
中に入ると年が同じぐらいであろう少女が椅子に座っていた。
その少女は誠を見て驚いた顔をした。
その反応は当たり前のものだろう。
誠はそんなことを思いながら中に入っていくと、その少女に思いっきり睨まれてしまった。
その眼が怖くて誠は眼をそむけた。
「カノン、そんな目をしない。」
「誰?」
敵意むき出しのまま誠から目を放そうとせずにシノフィに聞いていた。
シノフィはそんな質問には答えず、誠に向き直り、頭を下げた。
「ごめんなさい。この子は私の娘でカノンというのよ。仲良くしてあげてね。」
にっこりほほ笑みながらシノフィは言ったがまだずっと睨んでいるカノンを見て、しばらくは仲良くなれそうもないと思う誠であった。
その後、カノンの父親らしいガッチリとした男が家に入ってきた。
彼は誠を見るとにっこりとその体からは想像ができない、優しい笑みを向けてくれた。
「君の名前を教えてくれるかい?」
「あ、はい。はじめまして。支倉 誠と言います。」
「誠くんか。私はダイスだ。君の事情は聞いてるよ。しばらくゆっくりしていきなさい。」
「ありがとうございます。」
いつの間に事情を話したのかと気になったがシノフィが今誠がいる部屋におらず、いい匂いがしてくるので誠は台所からダイスに事情を話したのだろう。
そんなダイスは誠にそういうと黙って水を飲んだ。
コップを置いた瞬間だった。
「なんでこんなやつをこの家に!?」
誠を指しながらカノンが叫んだ。
誠はそれに対して傷ついた。
自分は好きでこんなところに来たわけではない。
ましてや、救いの人たちに巡り合えた、そういう思いがあった誠にとって心に重りとなって圧し掛かった。
騒ぎを聞いてシノフィもやってきた。
そして、急遽家族会議のような感じになった。
「カノン、何が不満なの?」
「こんな、何も知らない人をなんでこの家に入れたの!?この人はどこの誰!?」
何も答えられないダイスとシノフィ。
誠は気が引けたが口をはさんだ。
「僕は、どういう経緯でこの世界に来たのかわかりませんが、僕がもといた世界はこことは違う世界です。」
言い終わるとダイスとシノフィは大して驚いていなかった。
だがカノンは目を見開いて驚いていた。
この違いはなんだろうかと思っていると。
「やはりな…。シノフィから聞いた時に、もしやと思っていたが…。」
「信じるんですか?」
つい誠は質問をしていた。
それに対して返ってきた言葉は意外なものだった。
「過去にもそういった事例があった。ただその人物は今はもう亡くなってしまった。」
「そうなんですか…。」
「それはカノンが生まれる前にこの家で滞在していた。」
「それは本当!?」
カノンがこれ以上ないぐらい驚いた顔をしながら、ダイスに聞いた。
それに対して落ち着いてダイスは頷いた。
一瞬にして家の空気が今まで以上に張りつめた気がした。
その空気を断ち切るかのようにシノフィが声を出す。
「だから私たちは次また異世界人と出会ったら保護しよう、そう決意したのよ。」
「そうなんだ…。」
意気消沈したのかカノンは力なく椅子に座っていた。
誠もまだ驚きが隠せなかった。
カノンに声をかけられるまでは。
「誠さん?ごめんなさい。」
「いや、こちらこそ。僕がもっと早く言えばよかったんだけど…。」
「私が悪いですよ。」
謝りあいが際限なく広がっていく。
それを見かねたシノフィが手を叩きながら二人に声をかけた。
「二人とも、その辺で終わらせて。きりがないでしょ。」
「はい。」
二人はようやく謝りあいに終止符を打ち、ダイスの提案でお互いにもう一度自己紹介をすることにした。
「カノン・リナーファ。十七歳。よろしくね。」
出会ったばかりの敵意むき出しの目ではなく、優しい目をしてカノンが自己紹介した。
カノンにならって誠も自己紹介を始める。
「支倉 誠です。改めてよろしくお願いします。歳はカノンさんと同じ十七歳です。」
自己紹介を終えるとリナーファ家の全員からよろしくという声と温かい拍手をもらった。
誠はそのことに少しくすぐったい気持ちがありながらも、同時に心地いいと思った。
そうして、異世界だが生き返った誠はリナーファ家の家族と共に、暮らしていくことを誓った。
その先に降りかかる災難のことは知らずに…。




