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三年采配  作者: 多部衣装
一年目
8/16

オーダー発表

「明日の対外試合のオーダーを発表する」

ミーティング室に選手達を集め、俺がそう言うと選手達の顔が強張ったのを感じた。

シーズン本番の試合でもないのに選手達がここまで緊張するのは、やはり対外試合が最大のアピールの場であると把握しているからだろう。

この空気は、俺が高校生の時も感じた事がある。

監督から背番号を言い渡される時の、そんな緊迫した空気だ。

自分で言うのも何だが、野球の名門校だったものだから学年なんか関係無く、実力でベンチ入りできる選手が選ばれる。

結局三年間ずっとベンチ入りできなかった同級生は悔しかったのだろう、全ての背番号を監督が渡し終えた時に下を向いて声を押し殺して泣いていたっけ。

悔しい思いをしてる奴がいるって、背番号を貰った奴もわかっていたから喜ぶ事はしなかった。

今の状況は高校のように最後のチャンスという訳ではないが、恐らく選手達も察しているだろう。

対外試合の初戦。つまり、全くの新しいチームになってからの初戦。

ここで呼ばれる選手は、監督もとい俺から注目を浴びている選手という事に繋がる。

実際に俺もそのつもりだしな。

「先発は岸野。あくまで目安だが、五回まで投げてもらいたい」

「はいっ!」

先発は昨年…いやもうとっくに三月だから一昨年のドラフト一位、今季で二年目を迎える岸野を選んだ。

理由は散々言ってきた通り、一軍レベルの投手だからに他無い。

他の集まっている選手達も”やはりか”と納得の表情を浮かべる者も居れば、悔しい表情を浮かべる者も居た。

続いてリリーフ予定の選手も挙げて、野手のスタメン発表に移る。

「一番、ショート山本」

「はいっ!!!!!」

二軍レベルで高くまとまっている山本は、打撃は勿論、選球眼やカット能力も、しつこいようだが二軍レベルでは優れている。

打撃能力を総合的に見て一番が一番適役だと判断した。

左打者なのもベースに近く、少しでも出塁機会を増やせて良いだろう。

続いて二番を方針通りに、かつ群の中でも一番バントが上手い内野手を発表。

バントがうまいという所に注目しているだけで、やはりシーズンも二番が約束されている訳ではない。

明日の試合で結果が出なければ、容赦無く次の試合ではベンチでアピールの機会を待つ事になる。

「三番、ファースト三田村みたむら

「はい」

三田村は二軍でも打率が二割中盤と率を残せていないが、打率と本塁打の割に良く打点を稼いでいる。

得点圏打率がチームでも高かったから一先ず起用するという話で、やはり三田村も結果が出なければ、やはりベンチで機会を待つ事になる。

仮に三田村の持ち味である得点圏打率を活かす、つまりチャンスが三田村の打席で無かったとしてもやはりベンチになる。

他の選手のモチベーションを維持するにはけじめは必要不可欠であるのは現役時代でも二軍の監督になってからも強く感じている。

ましてや、日の目を浴びるチャンスが全員にある時に少しでも贔屓目な起用をするものなら、尚更だ。

選手の起用には、選手にもわかる理由が無くてはならない。

「四番、ライト山井」

「はい!」

こちらも言わずもがなだろう。

岸野と同じ理由になる。

「五番、レフト中里」

「はい!!頑張ります!」

クリーンアップが余程嬉しかったのか、一言付け加えてきた。

「監督!俺も頑張りますよ!!」

中里の「頑張ります」を聞いた山本が慌てて発言してきた。

「頑張るのは当然だ」

そう俺が言うと、緊迫していた空気が一転し笑いが起きる。

監督である俺が選手達の気持ちを考えれば、直接緊張するなとは言えないから良かった。

前にも言った事だが、ある程度の余裕というのは心に必要なのだ。

ムードメーカーである山本は、やはり内野手の中心に置くべき選手だと改めて実感する。

その後、各選手が一番能力を発揮できそうなポジションと打順を割り当ててオーダー発表を終了し、サインの確認をした。

最後に、名前を呼ばなかった選手に「チャンスは平等にある」と言って解散した。









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