平和はどこかに置いてきた
自己満足に好き勝手書いてます。
読みにくい、分かりにくくてもこれが私の精一杯です。
その後、私の名前を何故か知っていた神埼結斗は、一瞬はっとした表情を見せたが、すぐに挨拶に戻った。それ以降は何事も無く、無事に入学式を終えた。
教師の指示で、クラスが掲示板に張り出されている玄関前に生徒達が移動を始めた。
私たちも移動するが、このまま帰りたい気持ちで一杯だった。
「だ、大丈夫……?」
心配そうに私の顔色を伺う穗乃果ちゃん。おそらく彼女の目には、今にも死にそうな程真っ青な顔をした私の顔が写っていることだろう。
「私の高校生活が、半日も経たない内に終わった……。何で私の名前を……」
頭に手を当てて考えてみるも、全く思い当たる節はない。
「星野さんは見覚えないんだよね??」
「まったく」
あんな超絶イケメンで特徴的な赤い目をしていたら、そう簡単には忘れないと思う。
「じゃあ、この学校には同性同名の生徒がいる……とか??」
「そうかな……。とりあえず、クラスを見に行こうか」
色々と謎は多いけど、今は自分のクラスを確かめないと。
最悪、神崎本人に確認すればいいんだし。
昇降口に張り出された大きな白い紙に筆で大きくクラスが書かれていた。
どうやらこの学校の校長は字に自信があるらしい。無駄に達筆なのが、腹が立つ。
「私は……“1-A”か」
この私立桜園高校はクラスがAからGまであり、クラス分けは入試試験の上位から振り分けられる。そして、学年が終わる頃にクラス分けテストが行われ次の学年のクラス分け資料になる。
奇跡的に私は一番上のクラスだった。
勉強の甲斐があったな。
「穗乃果ちゃん、どうだった?」
「Aクラスだったよ」
「やった一緒だ!」
「本当!?よかった〜」
ぼっちにならなくてよかった、とハイタッチして喜んでいれば、クラス分けの結果を見た女子の会話が人混みの中から聞こえてきた。
「最悪、私Cクラスじゃん」
「私なんかGクラスだよ〜。あぁ、結斗様と同じAクラスがよかったなぁ〜」
「あ!私Aクラスだ、やりぃ!」
「ずるーい!」
「抜け駆けしないでよ!」
......恋する女子は怖い。
「席は自由だって。後ろの方にでも座っていよっか」
「そうだね」
教室に移動した私たちは、席が窓側から男、女に分けられていたので、窓側から二列目の後ろに座った。一番左は誰かの鞄が置いてあった。
私が一番後ろで、穂乃果ちゃんはその前。
「この後は、担任の先生からの説明があるみたい」
「まだあるのかぁ〜。もうクタクタだよ……」
机にうつ伏せて脱力している私を見て、穗乃果ちゃんは小さく笑った。
「そうだね。でもあともうちょっとだよ」
「……そうだね。よし、あともうちょっと頑張ろう!」
気合いを入れるように両手を上げてそう言うと、その意気だよ、と斎藤さんがふわっと笑って両手を私と同じように上げる仕草をした。
今疲れが吹っ飛んだわ。
「あ、そうだ。私のことは実鈴でいいよ」
「う、うん。わかった」
教室に人が八割ほど集まり始めた頃、廊下から女子の叫びに似た歓声が響き渡った。
「……アイツかな」
「……あの人だね」
後ろの扉が開き、女子に囲まれ入ってきたのは、朝に挨拶をしていた才色兼備くんこと神崎結斗。
大勢の女子に囲まれているのにも関わらず、表情ひとつ変えずに歩く姿を見て、馴れていることはすぐにわかった。
周りの女子もすごいけど、話しかけられても無視し続けるヤツも相当だと思う。
ヤツは私の後ろを通り、一番後ろの窓側から一列目、つまり私の左側の席に座った。
......え、まさかの隣ですか!?
あの鞄はアイツのだったのか!?しまったああああああ!!
「うわわ……っ!?」
「すごい人の数だね.....!?」
案の定、私と穂乃果ちゃんの席は大量の女子軍団にもみくちゃにされ、身動きが取れない状況に。
女子の数は更に増え、酸素が足りなくなり、このままでは命が......。
「あのっ、好きな食べ物は何ですか!!」
「誕生日はいつですか!!」
「私と付き合ってください!!」
あろうことか、クラスの半分以上が女子に変貌していた。 男子は隅の方に避難している。
あと誰だ、どさくさに紛れて告白したヤツ。
「このままだと授業さえ受けられないことに……っ」
「移動した方がいいみたいだね……っ」
なんとか鞄を持って集団の中から脱出し、なるべく離れた所へ移動しようと踏み出した瞬間、鞄が後ろへ引っ張られた。
引っ掛かったのか……?と後ろを振り返れば、神崎が私の鞄を掴んでいた。
「離してくれません??」
引っ張るがびくともしない。
神埼はじっと私を見るだけで返事もしない。
頼む、私は早くここから脱出したい!!
「何か用ですか。なら、手短にお願いします」
女子の間から、穂乃果ちゃんが黒板辺りまで避難し、心配そうに見ているのが見えた。
女子の視線も痛いから用があるなら早くしてほしい。神埼は、似ている…………と意味のわからない呟きをしている。
「覚えてないか……俺のこと」
「そうですね、あれだけ女子から人気があるリア充野郎は嫌でも忘れなさそうですね。とりあえず、その手を離してください」
「嫌だ」
「……はぁ??」
意味がわからんよこの男!?
嫌って何だよ!!私だって女子に目をつけられるの嫌なんだからね!!
「実鈴」
「な、なんですか」
いきなり名前呼びかよ!?とツッコミたかったが、周りがそんな雰囲気ではなかった。
女子が私の方を鬼のような目付きで見ていたからだ。もうやだ、泣きたい。
「お前の名前は実鈴というのか」
「そうですよ、どうして私の名前をご存知かは知りませんが、用が無ければ早く離してください」
目を伏せて悲しそうな表情を見せると、すんなりと鞄から手を離した。一体何がしたかったのか訳がわからない。
「もうすぐ先生が来る。迷惑だ、帰ってくれ」
芯の通った声で、神埼は机の周りに集まる女子に言った。
「えぇ〜まだ来ないって。それよりさ、日曜日に出掛けようよぉ」
金髪のいかにもチャラチャラとした女子がそう言って、神埼の腕を掴もうと私の横を通った。香水のキツイ匂いに頭がクラクラする。どれだけつけてんだ。
――と、その時だった。
「迷惑だと言ったんだ。消えろ‼」
「っっ!!?」
女子の手を振り払い、神埼は女子達の方を見て威圧感のある声で言い放った瞬間、あまりの恐怖に私は動けなくなった。
女子達に向けた神埼の眼には、言葉にできない威圧感を感じる。挨拶の時には宝石に見えた赤い眼が、憎いものでも見るかのように恐ろしく。
その眼を見た女子達は、い、いこっ……っ、と急いで教室を出ていった。すれ違い様に見た女子達の表情はすっかり怯えきっていた。
「すまなかった。もう来ないから座ってくれ」
そう言って私の方を見た眼はもう鬼のようではなく、また宝石のように綺麗だった。
「あ、ありがとう……」
一体彼は何者なのだろうか、どうして私の名前を知っていたのか。
知りたいことは沢山あるけれど、さっきの眼を思いだし、簡単には聞いていけない気がした。
恐る恐る席に座るが、さっきの出来事に手が震える。どこからか視線も……
「って、あんたか‼まだ私に何か」
そりゃ視線を感じるわけだ、神崎がこっちを見ていたんだから。怖いよ‼無表情なのがさらに怖い‼
「名前は?」
「ほ、星野……実鈴ですけど」
「そうか、神崎だ。よろしく」
「は、はぁ……」
「少し話がある。放課後此処で待っててくれないか」
「話?今じゃできないものなの?」
「いや、問題はないが」
「なら今はなしてよ。先生来るまでもう少し時間あるし」
クラスはみんな集まったようで、全員席について先生を待っている。
「…………いや、やっぱりいい」
そう言うと神崎は前を向いてしまった。
まったく、よくわからない人だ。
「はい、席につけ」
先生が入っきて、結局、挨拶の時の謎は聞けなかった。
まぁいいか、次の機会にしよう。
「突然だか、クラスの代表と副代表を決めたいと思う。そこでだ、うちのクラスには学年代表の神崎がいるんだ。神崎、クラスの代表を頼まれてくれないか??」
「はい、構いませんよ」
「なら私が副代表したーい‼」
「駄目‼、私がするんだから‼」
「神崎くんがするなら私もしたーい」
神崎が代表を承諾したとたん、女子が副代表の座を賭けての争奪戦を始めてしまった。これには先生も苦笑い。
「困ったな……。じゃあ、神崎。お前が決めてくれ」
おい先生、生徒に丸投げってどうなんだ。
「わかりました。じゃあ……」
神崎の言葉を緊張した様子で待っている。だけど、いつまで待ってもその続きが出てこない。横を見れば、赤い眼と目が合った。
「あのー、何故こっちを見てるのかな……神崎くん?」
嫌な予感がする。まさか……いや、まさかそんな……
「星野さんにお願いします」
「う、嘘だろおおおおおおおぉぉぉ!!?」
私の絶叫と女子のがっかりとした声が教室に響き渡った。
なんで私なの!?別にいたでしょやりたい人‼
「星野か?まぁ、星野は神崎に続いて上位二位だからな。頼まれてくれるか、星野。なぁ、頼む」
「実鈴」
「うっ…………、わ、わかりました……」
「ありがとう。じゃあこれで今日は解散だ。神崎と星野は最初の仕事があるから職員室に来てくれ」
以上だ、と先生が言うのと同時にみんな帰り出す。
分かりやすくを重視し、尚且つ読みやすくができません。
神埼と実鈴の関わりをどうしていこうかなぁ。