表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

好きって?

 わたしには好きな人がいる。彼はわたしのサークルの先輩で、わたしよりも一つ年上だけれど、わたしにとってはお兄ちゃんみたいな存在で、いつの間にか好きになっていた。

 わたしが彼を最初に意識したのは五月。ちょうど新入生歓迎の時期で、例会の後にご飯に連れて行ってもらった時のことだ。声が高めで、よくその点を親に注意されているわたしとしては、声が低めでちょうど安心するトーンである彼の声が好きになっていた。彼の出す大声にはたまにびっくりするし、酔った時の彼はあまり好きにはなれないのだけれども。

 それでもわたしは彼が好きなのだ。でもわたしは彼にその思いを伝えることはないだろう。わたしと彼が一緒にいてもおそらくお互い疲れるだけ。真面目同士のカップルの憐れな結末。そうなりたくないから、わたしは黙っている。いつか、彼に彼女さんができたときに、打ち明けるだけでもいいかな、なんてことを思ったりして。

 それでもわたしは毎日恋愛占いをして、一喜一憂する。こんなにも彼のことを思っているのに、それを伝えるすべがない自分に時々、嫌気がさす。自分の勇気のなさを相手のためなんて押し付けて、十分いやなやつじゃないかって思う。

 これは、わたしの大学入って二度目の恋。一回生で二度目は早いと思うけれど、一回目は五月にその人に彼女がいるって知ったのと、その人が靴の踵を踏みつけて歩いていたから、自分で自分を無理やり納得させた。

 今まで、女子校で六年間抑えられてきた恋愛感情が一気に迸ったみたいにわたしの恋愛サイクルはものすごいスピードで回る。だから信じられない。わたしが彼をずっと好きでいることなんて。

 確かに例会中の彼はかっこいいし、練習している彼はすごく楽しそうでかわいいとさえ思う。でも、それだけだ。それだけなのに、わたしは毎日彼のことを考えてしまう。そして毎回自問する。これは果たして恋なのか、と。

 そう、わたしは自分の気持ちに自信が持てない。彼のことを好きといったところで、恋愛偏差値ゼロ以下のわたしにはそれが本当に恋愛感情なのか確かめるすべを持たない。

 それでもわたしは彼と目が合うと恥ずかしくてそらしてしまう。そのくせ彼に見つからないように彼をじっと見つめている。

 彼を本当に好きかどうかはわたしにはわからない。彼はわたしのことを嫌ってはいないし、わたしも彼のことを嫌ってはいない。今のわたしにはそれしか言えないのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ