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世界

 この世界には<起源の力>と呼ばれる二つの力がある。

 膨張と熱を司る<陽力>

 収縮と冷を司る<陰力>

 あらゆる物質に発動し、しかし生物には単純な毒として蝕む力。

 自然界に当たり前のように存在しているそれらは、混ざり合い、時には反発しあって命を生み育ててきた。

 しかし、知性という罪を負う生き物、人間によって生態系の歯車は狂い始める。

 ある人間は<陽力>を使い、炎を自由に焚くことを覚えた。

 またある人間は<陰力>を使い、食料を冷凍保存することを覚えた。

 長い年月をかけて人間はその力を研究し、それぞれ特有の文明を築き上げたのだった。


 起源の力<陰力>と<陽力>

 この世界の理にして禁断の力。 

 人間はそれらを好き勝手に使うことが何をもたらすのか知らない。

 たった一種類の生物が世界を牛耳ることになる。

 動物が、植物が消えていく。

 そして世界さえも、神の怒りを買ったと言わんばかりに掻き消されて行った。


 この世界には4つの大陸がある。

 北に位置する<陰ノ国>本土。

 南に位置する<陽ノ国>本土。

 中央に位置する未開の地<森林地帯>。

 そして西に位置する<霧の大陸>。


 霧が世界を浸食していく。

 <霧の大陸>は元々、陽と陰の共存を図った人間による文明が栄えていた。

 世界の理を支配しようとした人間達。

 しかし、ある時何も前触れも無く大陸を<霧>が飲み込む。

 最も罪深き人間達は一夜にして消え去ったのだ。

 かつて栄えた文明の後を残して。


 <陰ノ国>、<陽ノ国>は片方の力だけで繁栄してきた人間達。

 西の人間達は両方の力を使ったが為に滅びた。ならばどちらの力が原因なのだろうかと考える。

 彼らは<起源の力>について、間違った解釈をしてしまったのだ。

 人間とは浅はかな物だ。お互いがお互いの力を頭ごなしに否定しあい、統一しようとする。

 元々相容れない考えは平行線を辿り続け、ついには戦争に発展した。

 どちらが勝っても未来は無い。世界はもう人間を許すことは無いだろう。

 霧の浸食は止まることは無い。だが、彼らはそのことに気づいてはいない。


 位置の関係上、中央大陸の森林地帯が主戦場となった。

 未開の地。この世界で唯一調和のとれた場所。

 自然は異物を取り除くかのように人間を邪魔し、追い出し、時には取り込んだ。

 進軍すら滞り戦争は長期化。少人数による散兵戦術を余儀なくされたのだった。


 兵器開発は進んで行く。

 <陽ノ国>は、鉄塊を<陽力>の膨張力を用いて飛ばす<陽式射鉄筒>を発明。

 <陰ノ国>は、クロスボウの弦を<陰力>の収縮力を用いて引くことで速射を可能にした<陰式速射弩>を発明。

 次々とその派生型が生まれて行った。


 ある人間は<起源の力>をその身に宿すことを考えた。

 だが人間はその力がもたらす変化に耐え切れず死んでいく。

 力そのものが人間を拒んでいるのだ。

 だが、稀にその力に順応してしまう者もいる。

 世界と同調する者達。

 彼らを人間は<適合者>と呼ぶ。


 <適合者>とは、人間を越えた何か。人間の罪そのもの。

 起源の力を自在に扱い、超人的な運動神経を誇る化け物。

 しかし、過ぎた力はその身を滅ぼす。

 <適合者>の寿命は短い。強ければ強いほど、力を行使すればするほどに。

 命を削って戦う彼らを英雄と呼ぶ者もいる。

 その英雄が世界を滅ぼしているとは、何とも皮肉である。


 世界から色彩が失われていく。

 終末が近づいてきた。   

 


  

 

 

 

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