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僕を共有した五人の乙女~告白は1億ポイントから!?~  作者: 寝不足魔王


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第16話:日曜日、禁断の朝食と二度目の温もり

 日曜日の朝、午前7時。

 一条凪いちじょうなぎは、意識の微睡まどろみの中で、鼻腔をくすぐる芳醇な香りに目を覚ました。出汁の効いた味噌汁の匂いと、炊きたての白米が放つ甘い香り。

 一人暮らしの自室で、自分以外の誰かが朝食を作っている。そのシチュエーションに、凪の脳内は激しく混乱した。


「……夢か? それとも、不法侵入……」


 寝ぼけ眼を擦りながらキッチンへ向かうと、そこには見慣れたエプロン姿の少女が、甲斐甲斐しく菜箸を動かしていた。支倉聖奈はせくら せいなだ。


「あら、おはよう凪くん。ちょうど今、焼き上がったところよ」


「……おはよう、聖奈。……なんでうちにいるんだ? 鍵、閉めてたはずだけど」


「幼馴染の合鍵を忘れたの? 昔、おばさんに預かってから返してないわよ。それより、今日は『朝食を一緒に食べる約束』だったでしょう?」


 聖奈は、さも当然といった風に、湯気の立つ茶碗をテーブルに並べた。

 凪は「そんな約束したっけ……?」と首を傾げたが、彼女の迷いのない瞳に圧され、「……そうだったかな」と、曖昧な記憶のまま椅子に座らされた。


 しかし、聖奈の内心は、平穏とは程遠い嵐の真っ只中にあった。

(……150ポイント。今週稼いだすべてを注ぎ込んだ、私の『聖域』。この一膳一飯に、私の血と汗と、そして凪くんへの愛が詰まっているのよ……!)


 聖奈は、凪が一口食べるごとに、まるで自分の心臓が差し出されているかのような緊張感で彼を見守った。

 凪が味噌汁を啜り、一息つく。


「……美味い。やっぱり聖奈の料理は世界一だよ。なんだか、実家にいる時より落ち着くな」


 その瞬間、聖奈の胸ポケットでスマートフォンが激しく震動した。

『【愛の証明】胃袋の完全掌握:50pt獲得』


(……50ポイント! これだけで、来週の軍資金の半分が回収できたわ……! 凪くんの『美味しい』は、どんな宝石よりも価値がある……!)


 聖奈は、溢れ出しそうな幸福感を必死に抑え込み、上品に焼き魚を口に運んだ。

 しかし、その幸せな空間を、外からの「異物」が乱そうとしていた。


 凪はふと、窓の外に違和感を覚えた。

 ベランダの向こう、隣の家の屋根裏付近に、キラリと光るレンズのようなものが見えた気がしたのだ。


「……ねえ、聖奈。あそこに誰かいないか? 鳥……じゃないよな、双眼鏡?」


「っ……! な、凪くんの気のせいよ! 最近、この辺りは野鳥の観察が流行っているらしいから、それじゃないかしら!?」


 聖奈は、慌ててカーテンを閉めた。

 実際には、隣の屋根の上には、双眼鏡を構えた一ノ瀬舞夜いちのせ まやが、鬼の形相で二人の食卓を監視していた。

「朝食枠に150pt……。密着度は低いけれど、胃袋を掴むことで長期的な依存関係を築こうという魂胆ね。……チェックよ、聖奈さん。行き過ぎた『あーん』があれば、即座に警察(凛)を突入させるわ」


 さらに、ベランダの縁には、必死に壁を登ろうとして指先をプルプルさせている藍澤凛の姿もあった。

「くそっ、ボクだって、凪と一緒に朝飯食いたい……! ボクが作った特製プロテインパンケーキの方が、凪は喜ぶはずだ……!」


 監視の波に包まれているとも知らず、凪は食事を終え、聖奈の片付けを手伝った。

 すると、聖奈がおもむろに足首を抑えて、ベンチに座り込んだ。


「……いたた。凪くん、ごめんなさい。昨日挫いたところが、まだ少し痛むみたいで……。……ゴミ出し、お願いしてもいいかしら?」


「もちろん。……それより聖奈、まだ歩くのは無理だよ。……ほら」


 凪は、昨日と同様に背中を向けた。

 聖奈は(……追い『おんぶ』! 30ポイントの端金で勝ち取った、奇跡の二度目……!)と、狂喜乱舞しながらその背にしがみついた。


 しかし、凪の表情は、昨日とは違ってどこか真剣だった。

 背負った聖奈をリビングのソファまで運ぶ道すがら、凪は静かに問いかけた。


「……ねえ、聖奈。僕、ずっと不思議に思ってることがあるんだ」


「え、ええ。何かしら?」


「……最近の君たち、なんだか『台本』があるみたいに正確に僕の前に現れるよね。バッティングセンターにみんながいたり、ほのかちゃんが急に魚の漢字を覚え始めたり……。……僕に、何か隠してることがあるよね?」


 聖奈の心臓が、ドクンと跳ねた。凪の背中越しに、その鼓動が伝わってしまいそうなほどに。


「そ、それは……! みんな、受験のストレスで規則正しい生活を心がけているだけよ! ほら、進学校だし、みんな将来が不安で、つい……凪くんという『安心できる場所』に寄り添いたくなっちゃうのよ!」


 凪の先日の「受験ストレス説」に便乗した、聖奈の決死のブラフ。

 凪は「……そうなのかな」と呟き、彼女をソファに降ろした。


「……でも、みんなが仲良くしてくれるのは嬉しいよ。……ありがとな、聖奈」


 凪は最後に優しく微笑み、彼女の頭を一撫でしてキッチンへ戻った。

 聖奈は、その手の感触を抱きしめるようにして、ソファに沈み込んだ。


(……バレかけている。でも、もう止まれない。……凪くん。あなたが私たちの『共有財産』だなんて、死んでも言えないけれど……)


 聖奈は、スマホの管理端末を取り出した。

 画面には、次期ディーラーである自分の名と、舞夜が保持する『978pt』という圧倒的な数字が表示されている。


「……明日から、私がこの世界の管理者ディーラーよ。……一ノ瀬さん。あなたの独裁も、明日で終わりよ」


 聖奈の瞳に、恋心と執念、そして管理職としての冷徹な野心が宿る。

 一条凪の平和な日常の裏側で、システムの支配権を巡る「聖奈政権」がいよいよ幕を開けようとしていた。


---

■日曜日終了時の獲得ポイント(確定)

支倉 聖奈:100pt(朝食・おんぶの感謝ボーナスにより完全破産から回復)

霧島 凪沙:249pt

一ノ瀬 舞夜:978pt

藍澤 凛:85pt

瀬戸 ほのか:5pt


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