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僕を共有した五人の乙女~告白は1億ポイントから!?~  作者: 寝不足魔王


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第13話:水曜日、包囲網と「100pt」の使い道

 水曜日の朝。

 一条凪いちじょうなぎが登校して真っ先に感じたのは、昨日までの重苦しい停滞感の消失だった。

 月曜日、火曜日と、どこか悲壮感すら漂わせていた聖奈やほのかの背中に、今は確かな「覇気」が宿っている。昨日、自分がプレゼントしたお菓子が、よほど彼女たちの疲れを癒やしたのだろう。


(……良かった。やっぱり、たまには甘いものを食べてリラックスするのが一番だね)


 凪は自分の「常識的な配慮」が正解だったと確信し、満足げに頷いた。

 しかし、その視線の先。彼女たちの手元のスマートフォンでは、昨日供給された「100pt」という軍資金を背景にした、熾烈な下剋上の火蓋が切って落とされていた。


「おはようございますぅ、先輩! 今日は私、購買までエスコートしちゃいますよぉ!」


 110ptまで資産を回復させた瀬戸ほのかが、弾けるような笑顔で凪に駆け寄る。昨日、難読魚漢字を泣きながら書き殴っていた姿は微塵もない。


「おはよう、ほのかちゃん。元気そうで何よりだよ。……でも、エスコートって大袈裟じゃないかな?」


「いいえ! 先輩を安全に、かつ迅速に目的地へお運びするのが、私の使命なんですぅ!」


 裏:ほのかのスマホに【朝の挨拶&同行:5pt獲得】。

 わずか5pt。だが、破産寸前だった彼女にとって、自力で稼ぎ出したこのポイントは、何物にも代えがたい「反撃の狼煙」だった。


 休み時間。

 547ptという圧倒的な資産を背景に、一ノ瀬舞夜いちのせ まやが動いた。彼女は優雅な足取りで凪の席へ歩み寄り、一通の封筒を差し出した。


「凪くん。今度の生徒会の行事で使う資料、少しだけ整理を手伝ってくれないかしら? お礼に、この『学園指定喫茶店のペアチケット』を差し上げるわ」


(……先行投資よ。これで凪くんを放課後、確実に独占マイニングしてみせるわ!)


 舞夜の完膚なきまでの独走。

 しかし、その「独裁者」の前に、立ちはだかる影があった。


「あ、それなら私たちも手伝うわ! ねえ、凛?」


「おうよ! ボク、力仕事なら任せろって! 凪一人に苦労させるわけにいかねーもんな!」


 支倉聖奈と藍澤凛。

 昨日、凪からの100pt供給によって息を吹き返した「労働者連合」による、一斉妨害ブロックだった。


「なっ……! 二人とも、これは私と一条君の――」


「あら、みんなでやった方が早いでしょ? 凪くんもその方が助かるわよね?」


 聖奈が眼鏡の奥で勝利の光を放つ。

 凪は「みんな、本当に仲がいいな! 助かるよ、ありがとう!」と大喜び。


 裏:舞夜の単独ポイント獲得を阻止。【妨害成功:獲得ptを4人で分散。舞夜への単独加点ならず】。

 舞夜は「……安値で私の投資を邪魔するなんて……!」と、プライドを傷つけられ唇を噛んだ。


 昼休み。

 舞夜は高級な洋菓子を差し入れようとするが、今度はほのかが「安くて懐かしい駄菓子」を大量に凪の机に広げた。


「先輩、見てください! これ、最近見かけないレアな『チョコバット』ですよぉ!」


「うわぁ、懐かしいな! ほのかちゃん、センスいいよ!」


 凪の庶民的な感覚が、舞夜の高額投資(高級菓子)をあっさりと凌駕する。

 裏:ほのかに【趣味の共有:15pt獲得】。

 舞夜は「……私の、私のマカロンが、十円の棒菓子に負けるなんて……!」と、計算の外にある「大衆心理(凪の好み)」に膝を折った。


 そんな四つ巴の戦いを余所に、霧島凪沙(209pt)が凪の隣でスヤスヤと居眠りを始めた。

 凪は「……凪沙ちゃん、寝顔も平和だね。風邪引いちゃうよ」と、自分の上着をそっと彼女の肩にかけてあげる。


 裏:凪沙に【無自覚な幸運:30pt加算】。


「「「「漁夫の利よ!!」」」」


 結託していたはずの四人の声が、教室内で不自然に重なった。


 放課後。

 凪は満足げにカバンを背負った。

「今日も一日楽しかったな。みんな、僕を助けようとして競い合ってるみたいだ。……これが切磋琢磨っていうやつかな。僕も負けてられないな!」


 彼女たちのポイント争奪戦を、すべて「高め合うライバル関係」と美しく解釈し、凪は軽やかに帰路についた。


 その後。誰もいなくなった教室。

 聖奈が、舞夜に向かって静かに牙を剥いた。


「一ノ瀬さん。……ポイントを持っていれば勝てる時代は、昨日で終わったのよ」


「……随分と威勢がいいわね、破産者ゼロポイントだったくせに」


「来週の金曜日。私が管理者ディーラーになった時。……あなたのその500pt近い資産、すべて『凪くんへの愛の対価』として、一滴残らず没収してあげるわ。……首を洗って待っていなさい」


 次期ディーラー、支倉聖奈。

 彼女の執念は、昨日凪からもらったお菓子の包み紙と共に、静かに燃え上がっていた。

 資産家と、息を吹き返した労働者たち。

 凪という名の唯一の市場を巡る戦いは、もはやラブコメの皮を被った、熾烈な経済闘争へと変貌を遂げようとしていた。


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