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第21話 金眼の刃、侍のこころ

一か月の歩み


 ガルドを眷属に迎えてから、一か月が過ぎた。

 この短い期間で、俺たち三人の関係は大きく変わった。


 まずレベルだ。

 俺とリムルードは依頼を重ね、順当に【Lv45】へ到達。リムルードは魔法の扱いにさらに磨きがかかり、火・氷・雷の基礎属性に加え、回復術まで習得していた。汎用性という点では、すでに中堅パーティに引けを取らない。


 ガルドは【Lv25】。

 Lv20を迎えた瞬間に進化を果たし、「ゴブリン侍に進化した」細身ながらしなやかな体躯へと変わった。背丈は一・七メートルに届き、筋肉は無駄なく締まり、眼光には知性の光が宿っていた。


 特に驚いたのは、その「智力の進化」だ。

 契約のあと、読み書きを一から教えたのだが……一度理解すると飲み込みが異常に速かった。ギルドの蔵書を漁り、ついには遠い東方から伝わった古い武人の記録を手に取るようになった。


 そして、ある日。

 木刀を振るいながら、彼はぽつりと口にした。


「……拙者、この生き方に学びたいでござる」


 その瞬間、言葉遣いまで変わった。

 侍――遠き国の戦士に憧れた彼は、自らを「拙者」と称し、語尾に「ござる」と添えるようになったのだ。


 最初はぎこちなかったが、今ではすっかり板につき、仲間としての誇りをその言葉に込めている。



裏の影


 そんな折。

 ギルドからの依頼で、街道沿いの村を荒らす盗賊団の討伐に向かうことになった。


 ただの盗賊ではない。

 報告によれば、彼らは「裏稼業」に通じる者――つまり、アヴェルネ出身者を集めて作られた、半ばギルドに背を向けた存在だった。


「……アヴェルネの裏か」

 俺は依頼書を見つめ、無意識に眉を寄せた。

 虐げられ、行き場をなくした者たちの末路。だが、それが許されない道であることも分かっている。


 リムルードが肩で震える。(まもる?)

「ああ。村を守る。それが今の俺たちの仕事だ」



盗賊団との遭遇


 村外れの草原で、俺たちは奴らと鉢合わせた。

 十数名の男たち。粗末な布で顔を隠し、武器を構えている。


 中でもひときわ目立つ三人が前に出た。

•【ハンター崩れ:ブライス Lv38】 職業:大斧戦士

•【ハンター崩れ:ディル Lv36】 職業:闇術師

•【ハンター崩れ:マルタ Lv35】 職業:短剣盗賊


 いずれもかつては正規のギルドに籍を置いていたらしい。だが、今は裏切り者だ。


「……アヴェルネの小僧か。てめえも同じ穴の狢だろうがよ」

 ブライスが大斧を肩に担ぎ、歯を剥いた。


「違うな」俺は腰の剣を抜いた。「俺は“ギルドのハンター”だ」



戦闘開始


 巨体のブライスが地を蹴った。大斧が風を裂き、地面をえぐる。

 土煙を裂いて俺は前へ。剣を交わす衝撃で腕が痺れる。


「拙者が参る!」

 ガルドが飛び込む。鋭い剣筋が閃き、斧の隙間を狙った。

 金眼が淡く光り、刹那――ブライスの動きが止まる。


「今でござる!」

 刹那の硬直。その瞬間にリムルードの雷撃が炸裂し、ブライスの体が痙攣した。


 だが、大斧戦士は倒れない。怒声を上げ、反撃の斬撃を繰り出す。

「ちぃっ!」俺は咄嗟に身を引き、刃先が髪をかすめた。



闇術師の罠


 背後で詠唱が響いた。

 ディルの影が膨れ上がり、無数の腕となって俺の足を絡め取る。


「影縛りか!」

 身体が沈む。息が詰まる。


 だが――リムルードが飛び跳ねた。

「ドウマ!」

 氷の矢が放たれ、影の根元を凍りつかせる。俺の体が解放される。


「助かった!」



盗賊の刃


 マルタの短剣が闇に紛れて襲いかかる。

 その速さは一瞬目で追えないほど。

「死ね!」

 刃が俺の喉を狙った瞬間、ガルドが割り込んだ。


「どくでござる!」

 剣と短剣が激しく火花を散らす。

 進化後のガルドの剣技は、もはや人間の上級剣士に匹敵していた。


「小僧が……!」マルタの顔に焦りが走る。



三人の連携


 俺は呼吸を整え、纏の力を集中させた。

「纏・穿突!」

 剣先が闇を裂き、ディルの肩を抉る。


 リムルードが続けて炎を放ち、影の術を焼き払う。

 ガルドは金眼でマルタの動きを止め、その隙に剣を振り抜いた。


「拙者の刃、受けてみよ!」

 鮮やかな斬撃がマルタの胸をかすめ、血飛沫が舞う。


 三人の力がかみ合い、敵は次々に倒れていった。



決着


 最後に残ったのはブライス。

 満身創痍になりながらも、まだ大斧を構えている。


「……まだやるか」俺は剣を下げた。


 ガルドの金眼が再び光る。刹那、巨体の動きが止まる。

 そこへリムルードの雷と、俺の穿突が同時に叩き込まれた。


 斧が地に落ち、巨躯が崩れ落ちる。

 ――戦いは終わった。



戦後


 荒い息を整えながら、俺は仲間を振り返った。

 リムルードは誇らしげに跳ね、ガルドは剣を収め、静かに言った。


「拙者、ようやく一人前の刃を振るえた気がするでござる」


 その眼差しには、もうかつての孤独なゴブリンの影はなかった。

 代わりに宿っていたのは、侍に憧れた一人の戦士の誇り。


 俺は剣を鞘に戻し、頷いた。

「これからだ。俺たちは、まだまだ強くなる」


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