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第16話 瘴気沼の巨獣討伐

上席係官の呼び出し


ギルドの扉を押すと、ざわめきが一瞬止まった。

受付のミランダが俺を見つけ、声をかけてくる。


「……ドウマ、上席係官が呼んでる。すぐに行ってくれる?」


胸の奥でリムルードが小さく震える。

俺はうなずき、二階の上席係官室へ向かった。


扉を開けると、黒髪を撫でつけた男――上席係官ライネルが机に肘をついていた。


「来たか、ドウマ。今回の合同依頼に参加してもらう」


「合同依頼……?」


「対象は【瘴気沼】に巣食う異常発生個体。推奨人数は十二名。三つのパーティと君で編成される。リムルードは眷属扱いで“1名”として数える」


「……十二名」


「そうだ。選ばれた理由は二つ。一つは、塩漬け依頼だったゴブリン・シールドファイターを討伐して持ち帰ったこと。もう一つは――Ω監査官の意向だ。彼は『試す価値がある』と判断した」


その名を聞き、胸の奥に熱が広がった。

Ω――大陸最強と呼ばれる存在。その意向で選ばれた。

俺は深く息を吸い、答えた。


「……わかった。」



三つの精鋭パーティ


広間に集められたのは三つの精鋭パーティと俺。


〈鋼の群狼団〉

•【ヴォルグ=ストラウス Lv34】(大剣戦士/リーダー)

•重戦士2名、斥候1名を加えた計4名。

堅牢な肉体で壁役を担う。


〈風切りの矢〉

•【カイル=フェン Lv29】(双剣士/リーダー)

•弓兵1名、魔術師1名、軽戦士1名を加えた計4名。

機動力と緻密な連携に優れる。


〈紅蓮の灯火〉

•【エリナ=グラン Lv32】(炎術師/リーダー)

•剣士1名、治癒術師1名を加えた計3名。

少数精鋭、火力に特化。


そして――


〈無所属〉

•【ドウマ Lv18】

•【リムルード(ビッグスライム) Lv18】

計1名(1組扱い)。


合計十二名。これが今回の討伐隊だった。



道中 ―ぎこちなさと信頼


瘴気沼まで三日の行程。最初は誰も俺に声をかけなかった。

焚火の輪からは外され、食事も一歩引いて口にする。


だが、俺が作った茸と香草のスープを口にしたヴォルグが低く唸った。

「……悪くねぇ。戦場飯にしちゃ上等だ」


その一言をきっかけに、少しずつ視線が和らいでいった。

他の者も味見し、黙って食べ続けた。

“ただの奴隷崩れ”ではない――その意識が芽生え始めていた。



小競り合い ―進化


瘴気沼の入口で待っていたのは【沼トカゲ Lv22】の群れ。

腐蝕液を吐き、地面を崩す厄介な敵だった。


「毒だ! 気をつけろ!」誰かが叫ぶ。


リムルードが酸を吸収し、逆に吐き返す。数体が泡を吹いて転げ落ちた。

幾度も繰り返す戦闘で、リムルードの核が眩く光を放つ。


――進化。


【リムルード(マジックスライム) Lv20】


新たに得た特性は“敵の弱点部位”と“弱点属性”を見抜く力。

俺の視界にも明確なラインが浮かんだ。


「カイル! 膝裏を狙え、雷が通る!」

矢が膝を貫き、モンスターの群れを崩れさせた。


仲間たちが息を呑み、驚きと疑念の視線を向けてきた。

だが俺は応えるように、次々と弱点を叫び続けた。



クラガン戦


瘴気沼の奥、泥の湖面を割って現れた巨影。


――【瘴沼の巨獣クラガン Lv40】

全長12メートル。鉄の鱗と怪力を持ち、咆哮だけで木々が震える。


「っ……でけぇ……!」カイルが顔を引き攣らせた。

「全員散開! 直撃すりゃ即死だ!」ヴォルグの怒号が飛ぶ。


1. 鋼の群狼団の壁


ヴォルグの大剣が鱗を裂き、重戦士たちが盾で尾を受け止める。

だが一撃ごとに地面が陥没し、受けるだけで精一杯だった。


「ヴォルグ! 右肩下、衝撃を!」

指示通りの一撃で、鱗の隙間から血が散る。


2. 風切りの矢の機動


カイルが双剣で切り込み、弓兵の矢が膝裏へ突き刺さる。

俺の指示に従った攻撃は確かに通った。


「本当に効いた……!」

驚愕と共に、信じるような視線が俺へ集まる。


3. 紅蓮の灯火の魔力


エリナの炎と雷の複合魔法が肩口を貫き、肉を焦がす。

巨獣はのたうち、泥を巻き上げて再生を図るが――

「再生する前に叩け!」俺の声に全員が動いた。


4. ドウマとリムルード


リムルードは膜で仲間を守り、俺は弱点を次々に示す。

散らばった十二名が、一つの生き物のように噛み合っていった。


5. 決定打


尾が俺を狙い、振り下ろされる。

「ドウマ、避けろ!」

「いや……今しかない!」


纏・穿突を放つ。クロコダイルを仕留めた必殺技。

だがクラガンには致命打にならない。

それでも――巨体の体勢を崩すには十分だった。


「今だ、仕留めろ!」


ヴォルグの大剣、カイルの双剣、エリナの雷炎。

三者の攻撃が束ねられ、クラガンの巨体は泥に沈んだ。



軽蔑から驚嘆へ


静寂が訪れる。荒い息の音だけが響いた。


「……終わったのか」誰かが呟いた。


ヴォルグが大剣を地に突き、俺を見据える。

「正直、お前を足手まといと思っていた。だが――今の戦いはお前がいなきゃ成立しなかった」


カイルが苦笑した。

「アヴェルネの小僧がここまでやるとはな……。いや、“ドウマ”だ」


エリナも肩を竦めて笑った。

「次も一緒に組んであげてもいいかもね」


仲間たちの視線が、軽蔑から驚嘆へと確かに変わっていた。

俺は胸の奥でリムルードを撫でる。


【ドウマ Lv22】

【リムルード(マジックスライム) Lv22】


沼を渡る風が、俺たちを前へ押し出していた。

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