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第3話:真打ちは遅れてやってくる

「ド、ドラゴンを打倒しました……!」

 兵士が信じられないといった様子で報告する。

「水を司るエレメンタルストライカーとはいえ、その水を防御結界、さらに攻撃にも転用させるとは……これが『魔女』か……」

 メリッサの戦いぶりに大臣は感嘆とする。

「帝国軍、退却の構えを見せています!」

「黙って逃がすこたあねえ! このままやっちまおうぜ!」

 セイラが声を上げる。

「追加料金を支払っていただけるのなら、直ちに追撃するが……」

 ヒルデが淡々と告げる。

「いや、ここは追い払っただけでよしとしよう……」

「ああん⁉ そんな弱腰で良いのかよ⁉」

「慎重だと言ってもらいたいところだな」

 セイラの言葉に大臣が冷静に反論する。

「勢いってものも大事だぜ?」

「こちらの体勢が十分に整ってはいない。無理をするのは禁物だ。連中が奥の手を隠し持っているとも限らんからな」

「奥の手だあ?」

「ああ、仮にも王都を攻めるわけだ。あの程度の戦力しか擁していないとは思えん」

「……賢明な判断かもしれんな」

 ヒルデが呟く。

「ヒルデは納得してくれたか?」

「雇い主の意向には素直に従うまでだ」

「理解を頂き、嬉しく思う」

「ちっ!」

 セイラがわざとらしく大きく舌打ちをする。

「でも……」

「どうした? メリッサ?」

「こっちのエレメンタルストライカーに面食らったんじゃない? 連中にとってはまったく予想外の反撃だったわけでしょ?」

「ふむ……」

「と、いうことは……あれ以上の戦力は有していない可能性が極めて高いわ」

「それもそうか……やはり追撃してもらおうか、セイラとヒルデも頼む」

「へへっ、そうこなくっちゃよ!」

「……了解した」

 セイラとヒルデ、そしてメリッサが、それぞれイグニス、ウェントゥス、アクアを前方へと勢いよく進ませる。しかし……。

「どおっ⁉」

「なにっ⁉」

「きゃっ⁉」

 セイラたちの驚きの声と軽い悲鳴が聞こえる。

「ど、どうした⁉」

 大臣の問いかけにメリッサが答える。

「……前言を撤回するわ」

「なに?」

「連中、とんでもない〝奥の手〟を用意していたわ……」

「なんだと⁉ ああっ⁉」

 大臣が驚く。地上を走る巨大な鉄の艦が眼前に現れたからである。

「な、なんだよ、こいつは……」

「帝国が海上戦艦というもの運用していることは確認していたが、まさかそれを地上にも上陸させられるとはな……」

「戦艦⁉ こいつが船だって言うのかよ⁉」

 セイラが困惑する。

「ああ」

「……迎撃した方が良いのだろう?」

「うむ」

 ヒルデの問いに対し大臣が頷く。

「やってみよう」

「おいおい、やってみようってよ……」

「なんだ、怖じ気付いたのか、海賊女」

「! だ、誰が!」

 セイラがイグニスを飛び込ませる。

「……!」

 戦艦は射撃を行う。イグニスはそれをまともに食らってしまい、後方に思い切り吹き飛ぶ。

「どわあっ⁉」

「射撃か……近づくのも容易ではないな……それならば真上から!」

 ヒルデはウェントゥスを戦艦の上に飛ばす。

「……‼」

 戦艦は対空射撃を行う。ウェントゥスはあえなく撃ち落とされてしまう。

「ぐうっ⁉」

 ウェントゥスは地上へと落下する。

「これはまずいわね……うん?」

「……」

 メリッサは戦艦の大きな砲口がアクアに向いているということに気が付く。

「ちょ、ちょっと待ってよ……」

「‼」

「きゃあああ!」

 アクアが砲撃を食らう。大臣が慌てて呼びかける。

「だ、大丈夫か⁉」

「け、結界を張ったからなんとか……でもかなりの衝撃だわ……」

 メリッサがか細い声で呟く。

「くっ……エレメンタルストライカーでも歯が立たんとは……」

「誰かお忘れではなくて⁉」

「ん?」

 そこに白いエレメンタルストライカーが颯爽と現れる。

「『テラ』、土を司るエレメンタルストライカー……乗っているのはマリーか」

「ええ、そうですわ!」

「随分と遅いご到着だな」

「真打ちは遅れてやってくるものですわ!」

「……大方、操縦に手間取ったのだろう?」

「ぐっ……!」

「図星か」

「あ、当たり前でしょう⁉ わたくし、かよわい令嬢なのでございますわよ⁉ こんな鉄の塊をいきなり満足に動かせる方がどうかしていますわ!」

「それもそうだな、無理をするな、下がっていろ……」

「そうは参りません、王国の危機を救ってみせますわ! ええい!」

「⁉」

 マリーがテラを操作し、背部に背負った大槌を大きく振りかぶって、地上に叩きつける。地面はひび割れ、戦艦がそこにハマり、動かなくなる。大臣が啞然とする。

「な、なんという強大なパワー……」

「これで帝国を懲らしめましたわね!」

「っていうことは……酒池肉林! いい女! いい男!」

「旨い酒と料理……それに金……」

「ふかふかのベッド!」

「いや……帝国との戦いはこれからが本番だ。損害も出てしまったし、褒美はお預けだ」

「そ、そんなっ⁉」

 マリーたちは愕然とする。とはいえ、王都に迫る脅威はなんとか退けることが出来た。

お読み頂いてありがとうございます。

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