二人の悪戯
ある平和な時代。
二人の悪戯好きな青年がとある悪戯を思いついた。
夜の暗闇の中で一人が言う。
「大丈夫かな? こんなことをして」
「なんだよ、今更ビビっているのか?」
相方にそう言われた青年はムッとした顔になって答える。
「そんなわけないだろ! ただ、もしこれが真実だったらって……」
それを聞いてもう一人の青年は笑い出す。
「まさか伝説を信じているのか? あるわけないだろ? あんなの滑稽な作り話さ」
相方の言葉に青年は一度口をつぐみ、そして笑った。
「信じているわけないだろ」
「なら、出来るよな?」
「もちろんさ」
二人の青年はニヤッと笑うとスコップを取り出す。
「それじゃ、早い内にやっちまおう」
「滅茶苦茶に長かったりしてな」
「そんなわけねえだろ」
二人の悪戯を夜の闇が舐めるようにして見つめていた。
やがて二人の青年は自分達の悪戯の成果を前にして大声で笑っていた。
「ははは、まさか本当に出来るなんてな」
彼らの眼の前には一本の剣が転がっていた。
その切っ先は深々と大きな石に突き刺さっていたが、石ごと持てば問題なく運ぶことも出来るだろう。
「勇者にしか抜けない聖剣ね」
そう。
この剣は勇者にしか抜けないと呼ばれた聖剣なのだ。
しかし来たるべき日に備えて眠っていたはずの聖剣は二人の悪戯者がその周りを掘ったことであっさりとその場を離れてしまった。
「さて、こいつをどこに隠したもんかな……」
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この日、彼らがした悪戯によって、後の時代に多大なる影響を与えた。
数え切れないほどの人々が死に、数えるのも厭われるほどの歳月を人々は苦しむ羽目になったのだ。
全ては、二人の悪戯によって。