鯖虎猫1〜2歳
君が一歳の誕生日を迎えた時、君は人よりも早いスピードで大人になった。
君へのプレゼントは新しい名前入りの首輪。
君はたまに部屋から他の部屋へ脱走する。
(家の外に脱走することはなくなったね!)
君につけられた鈴は、上手く隠れた君を探すためのもの。
君はかくれんぼが大好きで、一目散に走って、上手く隠れようとする。
誰かが君を見つけて抱き上げると、君は満足そうに喉を鳴らす。
見つけられたい君に、ちりんとなる小さな鈴は必要だね。
いつの間にか大人になった君は、身体が大きくなることはなくなった。
君が喧嘩をするのは、庭にやってきた近所の猫と窓越しに鳴き合うくらい。(たまに窓ガラスがバンバン叩かれてる…)
うさぎとはよく陣取り合戦を繰り広げて遊んでいるし、人ともそうやって遊びたがる。
ある時体調を崩して、君にしばらく会えない時があった。
君は近寄ってきてしばらく遊んでいくと、急に威嚇するように噛みついてきた。
(すごくびっくりした!)
しばらく遊んでも、君を捕まえて話を聞いても、君は一向に態度を変えない。
君達の3階建てのアパートメントを見て、ようやく気づいた。
2階のお姉さんうさぎの水がなくなっている。
それに気づかなかったことを君が怒っていたのか。
君はいつの間にか動物達のボス猫になっていたようだ。
ボス猫だったら、怒るのは当たり前だね。
水が貰えたうさぎを見て君は、満足そうにお姉さんうさぎの部屋の前に座っていた。
昨日は雪が降った。
君はうっかり窓から飛び出して、初めて雪を踏んだ。
飛び跳ねるように庭の少し奥まで行くと、しばらく立ったまま周囲を窺っていた。
そしてあっという間に部屋の中に飛び込んだ。
かなり寒かったのか、あたたかい場所から動かない。
君の初雪探検はそうやって終わりを告げた。
翌日雪は無くなったが、君は窓を開けた途端に庭へ出ていく。
君にとって外の世界は魅力的で、飛び出す衝動は抑えられぬようだ。
でも君は遠くまで行かず、少し離れた場所で、新しい世界をじっと見ている。
君にとって外の世界が安全であれば、たまには出してあげられるんだけどね。
春が近くなり、君は家の住人の隙を見ては、たびたび外に出るようになった。
扉の鍵などものともしない君は、逃げ出すとたいてい暗がりの倉庫や庭の片隅に佇んでいる。
暗い場所が居心地のよい場所らしくて、家の中でもマイポジションは暗い寝室の布団の上。
でも、二歳になる頃。
君はいろんな音に悩まされるようになった。
家の中で響く奇妙な音。
君はその正体を探しに、または音から逃げるように、家から飛び出すことも多くなった。
猫の君には人の聞こえぬ音も聞こえているようで、君は外の景色が見える窓の近くで、時折耳を澄ましたまま立ち止まる。