終わりのうた
とある休日
ひとり
グランドを走りつづけた少女は
急に立ち止まると
雲ひとつない青空をみあげました
そこには空しかみえなかったけれど
しあわせのすべてがみえた気がしたのです
近くの赤い屋根の洋館から
ショパンの別れの曲なんか
流れて来るものですから
なんだかつまらない悲しみに触れた気がして
少女は立ち止まってしまったんでしょう
悲しみは
あとからあとから降って
少女のちいさな唇に
やさしいキスをしたんです
そして
空をみあげる輝く瞳にも
悲しみはたえまなく降り落ちつづけたのです
すべてを諦めてしまったのは
すこし過去のことなのです
いまはもういちばん好きな空気を
その身に纏っているのです
まるで
じっとしていることが
なにかの魔法でもあるかのように
影を縫われた少女は
しずかに息をしているのです
それは不可思議な静止画でした
そしてそこに爽やかな風が吹き
やがて少女をのぞく一切の世界が
ゆるやかにゆるやかに
まわりはじめるのです
それですべてが終わるのだと
はっきりと知っている少女は
瞳に溜まった悲しみをこぼさないように
夢のようににこりと笑っているのです




