表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

9 もやもや




「この前は本当に申し訳ありませんでした。……その、フィーネはちゃんと見つかりましたので……」

「そうでしたか、それはよかったです」


まぁ、そうだよね。私がフィーネをちゃんと出したんだから。あぁ、誠実な騎士様。確かに、ちょっとあの時のお顔は怖かったけど。仲間思いということにしておこう。……それに比べて私は。


「……何か、不便なことはないでしょうか」

「いえ、とても良くしていただいてます」


正直、気まずいというか恥ずかしいというか、なんというか。……申し訳ないというか。先日()()()()としてあんなこと言っちゃったのに、今はフィアーネとして騎士様と夕食を食べている。



騎士様にしては珍しく、今まで見たことないほど髪がボサボサとしている。食べようとしたトマトを落としたことも気づいていない。アデルもいつもならからかいそうだが、黙ったまま俯いている。ぼーっとしている、そんな騎士様も可愛いのだけど、多分今はそんな場合じゃない。明らかに様子が変だ。何かあったのかもしれない。フィーネのことがあったから? 違う、よね? ……うん、好きな人関連?だ。きっと。絶対そう!! だって、そうだと思わないと、私が……



「……何かあったのですか、私でよければ相談にのりますわ」


私の(じゃない)騎士様を悲しませるなんて。一体どこの女です!?……なんて。何自分を棚に上げてるの、私。


「……いや、なんでもないんだ」


ふむ、やっぱり話してくれないか。まぁしょうがない。騎士様が嫌なら無理に聞き出さず……


「いやいや、相談に乗ってもらいましょうよ〜、やっぱり男の僕達で話しててもキリないし!」


ほう? やはり女ね? 女なのね!?

くぁあ騎士様の役には立ちたいけど聞きたくないぃ。でも気になるぅ。



「……そうだな、その……」

「好きな子が逃げちゃったんですよぉ〜」

「おい……!」

「フィアーネ様、どうすれば良いと思います? どこ行ったかも分からないんですよ」



ほう? 痴話喧嘩か。

女め、贅沢な。


あぁ、私から聞いておいてあれだけど、私にそんな話をしないで……いや、私がフィーネだって、分かってないんだからしょうがない。


実はアデルにも『好きな人いるとか言われて大丈夫か』的なこと聞かれて、何とも思ってないから大丈夫、って返しちゃったんだよね。だから恋愛相談も……私にできると……



「……どこに行ったか分からない?」

「……あぁ、消えてしまって」



ふむ、消えた、ね……

好きでいてくれる騎士様を置いて消えるなんて、全くほんとに贅沢でずる(以下略

とにかく、騎士様のためにはその女を見つけなければ。けど、私が魔法を使って見つけるわけには行かない。危害は加えたくない。見つけたら危害を加えてしまうのか、と言う質問にはノーコメントでいこう。……その女に何かあれば、騎士様が悲しんでしまう。うぅ、そう考えるとモヤモヤする。


はぁ、だから最近辛そうだったのか。


「……領外へ出たかどうかなどは……」

「分からない」


分かんないんだぁ。

あれかな、喧嘩してもう良い! ってなって、

お互い血が昇っちゃって、それで時間が経ってから

騎士様が謝りに行ったらいなくなってた的な?



「……話を聞いてくれなくて」


おっと、ちょっと私にも心当たりが。

女の子あるあるなのかな?

ぬぁ、悲しんでる騎士様もかっこい、じゃなくて!



「……話を聞きに来てくれるんじゃないですか、その人なら。ちょっと時間を置いたほうが良いこともあります。嫌いになったわけじゃないと思いますよ。会えないなら出来ることをやるしかないです」

「……そうだな」




ちょっと冷たすぎたでしょうか。

まぁ、しょうがない。好きな人の恋愛相談って思ってた以上にきつい。自分で言ったんだけど。発狂しなかっただけ褒めて。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




あの出来事から2日。

まだまだ騎士様のお顔は暗いです。

()()()()として本当はギルドに行かないとなんだけど、あんなことがあった手前、ちょっと無理です。


なのでお昼寝してたら夜寝れなくなりました。

現在夜のお散歩中です。


庭でお散歩。暗いけどこれはこれで綺麗です。風がそよそよと気持ちがいい。髪もスカートもちょっとなびくくらい。この感じとても好きです。



暗闇は嫌いです。それでも、騎士様の髪を思い出すので好きでもあります。騎士様が光でした。暗闇の中でも、光ってくれる。温かく優しく。


気分、転換のつもりできたんでしょ、私。

騎士様のことは忘れなよ。



「……ふんふんふふーん」


鼻歌を歌い、指をくるくるとする。

何か綺麗な魔法でも使って……




「フィーネ!?」

ぐいと手首を掴まれる。いつの間にか人がいたようだ。騎士様の声。驚いて見上げればすぐ近くに騎士様の顔がある。こんなに騎士様の切羽詰まったような表情の騎士様は初めて見る。いや、最近では何度か見たか。フィーネの時も。かっこい……じゃない。

まさか、フィーネだとバレた!?



「……侯爵様?」


バレてない。バレるはずない。

姿も違う。声も違う。魔法だって使っ……たことあるなまずい。


「……皇、女様、?……あぁ、すみません。こんなに急に……」

「いえ、気にしてませんよ」



あっぶない。バレてない。バレてないよね?

たぶん、騎士様疲れてるんだよ、うん。

好きな人とも喧嘩して、フィーネもあんなこと言っちゃったし。……かなり申し訳ない。


「お疲れのようです。お早くおやすみください」


そう言いながら回復魔法とか諸々魔法をかける。せめてもの罪滅ぼしだ。きっと大丈夫。ばれない。ハンナごめん。


「……?……はい。ありがとうございます」


……よし、バレてないバレてない。大丈夫。

それにしても。フィアーネがフィーネに見えるくらいなら……いくら何でもあんな風に去っちゃったのはやっぱ酷かったよね。話があるって言ってたし。……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




次の日。

覚悟を決めて、私は騎士様を避けずにギルドへ行くことにする。正直不安しかないが今のままではいけない。ちゃんと心のモヤモヤを取り除こう。1週間後には、参加しなきゃいけない1回目のパーティがある。フィアーネとして騎士様とまあまあ一緒にいないといけないのだから、ボロを出さないためにもしっかり話をしよう! 会えるかわかんないけど!!



と、思っていたのだけど。

やっぱり会うのが怖くて動けず。



うぅ、明日こそは、ちゃんとギルドに行きます。

きっと。たぶん。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ