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5 壁ドン!?



「皇女様」

「へっ!?」


これはどういうことなのでしょうか。

侯爵邸に来てから早3日。

なぜか騎士様に壁ドンされてます。顔は真っ赤になっていないでしょうか。本当に心配です。魔法を使いましょうか。いや、でもこんな至近距離で使って、バレたらどうしよう……あぁ、騎士様がこんなに近いなんて。毛穴なんて見当たりませんね。綺麗。すごい。さすが。 近い。やばい。かっこよ。


私はただ廊下を歩いていただけなのですが。どうしてこのようなことに? いえ、騎士様に壁ドンしていただけるなんてお金をお支払いしたいくらいなのですが。むしろ払わせてほしい。貢ぎたい。



それにしても何があったのでしょうか。とっても焦っているように見えます。



「魔法使い、フィーネをご存知ですか」



えっ? と言いそうでしたが必死で飲み込みました。良いですか、フィアーネ。この言い方、まだ確信は持っていないはずです。つまり鎌をかけられているということ。知らぬが勝ち。



「……フィーネ? さんですか。さぁ……聞いたことくらいはあるかもしれませんが……」



嘘は真実とともに。決してわたわたと、してはいけません。堂々と、今だけはフィーネだ、ということを忘れるのです。私はフィアーネです。フィーネなんか知りません。



「皇女様は、あの時確かに私のことを“騎士様”と言いましたよね」


「……そうでしたか? それが何か」


それはっ……! なんて言っちゃだめです。怪しまれるどころか、バレます。相手の思うつぼです。……フィーネだと、バレるわけにはいかないのです。私のためにも、騎士様のためにも。



「フィーネはどこですか」

「知りませんよ。どうして私に?」


ここにいますよなんて言いませんよ、私は。絶対に。……というか、あれ? これ、私がフィーネだと疑ってるわけではない??


「ならなぜ“騎士様”と言ったのですか」

「あなたも騎士と呼べるでしょう?今だって剣を持ってるじゃないですか」


ふぅ。とっさに言ってしまったけど、なかなか良い言い訳ね。ふふん、偉いぞ私。正直領主様とか侯爵様と呼ぶ人しかいないから、変ではあるけど。相変わらず、というかさっきから騎士様の顔がすごいけど。もちろん、怖いって意味。あ、かっこいいって意味もあるけどね。まさにゴゴゴッて感じ。黒いオーラも出てる気がする。……すごいな、どうなってるんだろう。



「そうですか、そういうことにしておきます。それで? 本当に何も知らないと?」

「えぇ」


ふふ、もしや、()()()()が急にいなくなったので心配してくれてるのでしょうか。そういえばもうすぐ3週間になりますね。忘れてた。まさか気にしてくれてるとは。フィーネは、嫌われてはないのですかね? ぴかぴかの笑顔でこたえられますね。いや〜、しつこい騎士様もかっこいいですねぇ。好きです、なんて。



まぁ、この人好きな人がいるんですけどね!!



まだ睨まれてますね。疑っているようです。不思議ですね、さっきまでとても嬉しかったのに、なぜか怒りが湧いてきちゃいました。はぁ、なぜフィーネを探すんでしょう? 好きな方がいることを黙ってたのに。教えてくれなかったのに。さっさと本当のこと言ってくれれば良かったのに。言いづらいだろうけど。……魔法が必要とか? ……落ち着け、私。騎士様は、きっとそんな人じゃない。利用したりなんてしない。



「私は何も知りませんよ、侯爵様こそ、何か心当たりがあるのでは?」

「心当たり、ですか」


ひやぁぁあこわい! まじで顔! なんかピキピキ言ってる! なにが鳴ってるの大丈夫騎士様!? ちょっと待って怖いまってまって流石にかっこいいより、怖いが勝つ!

……けど負けません……ちょっと怒っちゃったので……うぅ怖い。けどそれもかっこいい。

暗に好きな人がいることを教えなかったからだという意味を含ませつつ、言ってみる。


「えぇ。だからいなくなったのでは? ……私は知りませんけど」


「あなたがっ!」


肩を掴まれドンッと押される。

一瞬魔法を使いかけた。危ない。


が。

すぐに手を離され、はぁっと息を吐いた。そんな姿でさえ絵になる。それにしても、こんなに余裕のない騎士様見るのは初めてだ。そんな騎士様も好き。


そんなことを思って目を見開いてしまった。あぁ、まだこんなにも好きなのか。焦ってる騎士様を見て好きだと感じるとか。なんなの私。


「……いえ、すみませんでした。ご無礼をお許しください」

「……こちらこそごめんなさい」


それだけ言うと、くるっと振り返って帰ってしまいました。騎士様、機嫌わるいなぁ。怖いし。体調悪そうだし。大丈夫かなぁ。




それにしても、フィーネがここ最近現れてないからってフィアーネを疑うとは。いや、確かに騎士様と言っちゃったのはまずかったが。皇帝のこと嫌いだろうし、そうなっちゃうのも仕方ないけど。

……フィーネがいなくなっても別にいいくせに。好きな人がいるくせに。先程からそう考えてしまう。


……まぁ、でも。

さすがに心配かけてるよなぁ。

フィーネで会っちゃったら感情爆発しちゃいそうなんだけどな。



あぁ、どうしよう。

騎士様が“フィーネ”を気にかけてくれたのが嬉しい。嬉しいのにな。なんでかな。それよりも、何でっていう、怒りとか悲しみとか溢れちゃうや。



……そりゃそうか。

騎士様に好きな人がいるって聞かされたばかりなんだし。



私は泣いてるのがバレないように、必死に隠して、借りている客室に戻った。



 

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