13 目が覚めると
今回のお話は、登場人物の情緒がやばいことになって長文が多いです。「混乱してんなー」とか思いながらサラッと読んじゃってください。
夢を、見ていた。
幸せな夢だった。暖かくて優しくて、泣きそうになるほどの。……今までは怖い夢を見ることが多かったのに。
お母様が笑っている夢だった。私が3歳の頃に亡くなってしまったお母様。ずっと忘れてしまっていたけれど、お母様は優しい人だった。本を読んでくれて、よく笑っていて。
愛してくれていた。
それなのに、どうして記憶から消してしまっていたんだろう。
「ごめんなさい、お母様。私……」
「いいのよ、もう大丈夫」
そう言ってお母様は私を抱きしめてくれる。
だけど長くは続かなくて、お母様はふわふわと消えていってしまう。引き止めようとしても止まってくれない。
最後にお母様は、ほら、と私の後ろを指差した。
「フィーネ」
そう優しく呼ぶ人がうっすらと見えた。
そこにいたのはーーー
◇ ◇ ◇
ぱち。
目を開くと突如見知らぬ部屋に……!
なんてことはなく、フィアーネ、つまり(元)皇女してのライアーネ領の屋敷の自室だった。
どれくらい寝ていたんだろう。いや、それよりも騎士様達もみんなも無事だっただろうか。全力は尽くしたんだけど。
…………あぁ、そうだった。魔力を出し切る勢いで魔法を使っちゃったから、バレちゃったんだった。私が皇女フィアーネであるのと同時に、魔法使いフィーネだってこと。私が騙してたこと。騎士様に気づかれちゃった。
どうして分かったのかなぁ。
なんで気づいちゃうかな。
どう思ったかなぁ。
……やっぱり、嫌だよね。ずっと付きまとってた人と気づいたら結婚してたとか。騎士様には好きな人がいるのに。そんなの嫌に決まってる。怖いし。
.....……まって、ガチで怖くない? 普通に恐怖じゃない? ずっと私に告られてて、騎士様はずっと断ってたのに、私姿を変えて結婚しとるよ? 恐怖以外の何ものでもなくない? え、どうしよう。騎士様好きな人連れて逃げてるんじゃない?
とりあえず……土下座?
皇女の土下座ならいけるか?
いやまって。その前に私、本物の皇女だって思われてる? もしかしてみんなに、フィーネが皇女を殺ってなりすましてるとか考えられてる?? こいつならやりかねないと思われてるんじゃ!? やっぱ騎士様逃げたほうが良(略)
……......まあ、その辺はいったん置いておこう。今の私には分からないし。
よし、まずは起きて状況を確認しよう! 今日があれから何時間、何日経ったのか分かんないし、怪我人の状態も心配だし。騎士様逃げてるかもしれないし。まぁそれなら大人しく去るしかないかぁ。……けど、それだと騎士様に一生怖がらせたままなのかな? それはいやだなぁ。あーもう思考が悪い方向にしかいかない!!
このままじゃダメだ、一回このネガティブ思考を消そうと、私が起き上がろうとした、その時だった。
「え」
私の左側。椅子に座ってベッドに倒れ込むように寝ている人が見えた。騎士様である。
騎士様である!?
どぅえあぁぁぁあああ!!?? とつい叫びそうになった。もちろん耐えたよ。叫び声で騎士様を起こすわけにはいかないからね! びっくりしすぎて、どうして、え、うわぁぁあああ!! が合体しちゃったよ!? 本当に心臓が飛び出るかと思った。なぜ今まで気づかなかったんだ私。
せっかく騎士様と同じ空間にいたのに!!
ちゃんと寝ていることを確認してから、私は騎士様をガン見した。
…...寝顔も綺麗で可愛くてかっこよすぎじゃない?。騎士様の髪すごいさらさらだし。潤いも、つやもすごいし。どうなってんの? なんでそんなに綺麗なの? 触っていいかな? 撫でていいかな? あーきれー国宝級だわ〜。触りたい触りたい頭なでなでしたい〜〜!
……ごほん、冗談はこの辺にしておこう。
今の心の中覗かれたら誰もが『こいつヤバいやつだ』ってなるから!まじで ハーハー言ってたかも。絶対ヤバいやつの目してた。まじ私気持ち悪いな? 騎士様に引かれる!
……さすがに離れた方がいいかも。最近騎士様と話してないし、こんな近くにいたことないし。ここにいたら絶対頭撫でちゃう! そしてエスカレートしちゃう!! 騎士様が危険!
……いや、待てよ? ここにいた方がいいのでは? 私が居なくなった後に騎士様が起きたら、「いなくなってる!?」的な感じになるんじゃ? だから私がここにいるのは決して下心があるところなんかじゃなく……
……はぁ。冷静になって考えたら、好きな人がいる相手にこんなこと考えてんのほんと無いわ。最低。なんか急に我に返っちゃった。いや、それで良かったんだけど。ほんと騎士様早く逃げて、ここにヤバいやついるから……私酷いことしないけど! しないけど、客観的に考えて私ヤバいやつなんだよなぁ。
……ふぅ、落ち着け私。とりあえずここから離れよう。うん、やっぱりそれが良い。
騎士様のいる方とは反対から、私がベッドからおりようとしたその時だった。
「ん……フィーネ?」
そう騎士様に呼ばれた。
……え、起きたの? 起きてたの!? さっきの『髪サラサラすぎ寝顔可愛いぐへへ』っていう独り言聞こえてないよね? 私口に出してないよね? というか今の声可愛すぎたなやばいんだけど。どうしよう(どうもしないだろ)。
私はそんなことしか考えてなくて、それしかできなくて、頭がいっぱいで。背を向けたままは良くないって、振り向いたほうがいいってわかってるけど、動けなくなっていた。
だって、フィーネの時酷いこと言っちゃったし、皇女もフィーネも私ってバレちゃったし。どんな顔して何話せばいいの!?
「……あの、」
どうしようどうしよう。これどうしたらいい? とりあえずなんか返事しようとしたけどなんか口動かないし言葉出てこないしどうしよう……って、
「え」
騎士様に抱きしめられてる。
抱きしめられてる!!??
back hug!? なんで!? どうして!?
待ってよ!! 何が起きてるの!?
「良かった、目が覚めて」
え、アッ……
魔法使いかつ、元皇女であったフィーネ。死因は騎士様に抱きしめられたことと、耳元で話されたことであったーーーー
あぁ良い人生だった。
もう後悔はない…………
.....ハッ!やばいやばい意識飛んでた。威力が高すぎる。ていうか騎士様何してるの、私ほんとに抱きしめられ.....!?
「……あの、侯爵様?」
「もうそんなに堅い言い方はもうやめてくれ、フィーネ……」
…………一回待ってほしい今これどういう状況? なぜ私が抱きしめられてるの? ずっと、めっちゃぎゅーってされてるんだけど? 耳元で名前呼ばれちゃったんだけどやばいんだけどほんとに何これうそでしょ? あ、 夢? あぁ、そっか夢かそうだよねこんなこと現実にあるわけないよね私こんな夢をみるほど騎士様が好きなのかぁ、まあ好きなんだけどあぁ夢のはずなのにいい匂いがするあー夢ならスーハーしてもいいかな? なんでこんなにいい匂いするの香水? それとも自然? あぁ騎士様の身体の筋肉を感じるし待ってなんか男の人って感じするやばいどうしようもうなんも考えられないんだけど心臓の音すごいしあァァ騎士様の吐息を感じちゃうやばいもうほんと死ぬどうなってんのこの夢(略)
「ふぅ…………え、ゆめ?」
「現実だ」
1回深呼吸したが、やはりこれは夢だという結論に至った。が、否定されちゃった。
ぽろりと出た私の言葉を騎士様はガッチリと掴んだ。そう今の私を抱きしめるように……っておい私何ポエム刻んでるんだちょっと気持ち悪いぞ落ち着け落ち着け
「……俺が好きなのはフィーネだよ」
そう騎士様は言った。
優しくてか弱い小さな声だった。
私は、一瞬目を見開いた。
……けど、現在も抱きしめられていて息がかかるし、耳に近いところで騎士様の声で話されるのやばあぁぁぁとか思っていた私は、混乱していて頭が全く回っていなかった。
「……オ・レガス・キナノハフィー・ネダヨ? ……えっと、お菓子の名前ですか?」
「違うが……?」
違った。
「すみません。じゃあ、オレ・ガスキナ・ノハフィー・ネダヨでしたか」
「だから違うが!? ……なんでこの流れでお菓子が出てくるんだ」
騎士様はふぅと息をはいて、抱きしめるのをやめて私に向き合った。
騎士様は目を逸らしていて、顔は少し赤い。
私はようやく頭がまわってきて、その騎士様の様子から何を言っていたのか、何が言いたいのかだんだん理解してきて、顔が熱くなってきて、また混乱してきた。
……だって、そんなはずないじゃんか。
わたしはずっと振られてて、騎士様は好きな人がいるって言ってたじゃん。
だから、こんなことあるはずないのに……
それなのに。
騎士様はそらしていた顔を上げて、私の手を握って言う。
「だから、俺は、君のことが、」
目が離せない。
なんか、ふわふわした感じがする。
時がゆっくりに感じる。
「フィーネのことが好きだ」
騎士様は目をそらすことなく、私にそう言った。




