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虹の聖樹 外伝 夫君達の恋  作者: 天の樹
第一部 第一夫君の恋
12/19

第一夫君レオンハルトの恋 12


 『彼女』の瞳と視線が絡み合う。じっと自分の瞳を、心の奥底を覗き込むように見つめられる。時が止まったように感じた。

 それは一瞬の出来事なのにものすごく長い時間のように思えた。

 やがて、『彼女』は満面の笑みを浮かべて応えてくれた。

 

「私でよければ」


 嬉しさで顔が緩む。


「ありがとう…… それではここに署名してくれるかい」


 すでに用意されていた「結婚許可申請書」を開いて『彼女』の前に置かれた机の上に置く。

 兄王であるフリードリッヒによって用意され承認された公文書だ。

 読めるかな? 読めなければ口頭で読み上げることになっていた。

 『彼女』の様子を見る。

 食い入るように文字を追っている。

 翻訳もされるみたいだ。さすがルイス。『彼女』の額に刻み込まれた魔法陣がほんの少し光っている。

 おそらく読み終えたんだろう。『彼女』の視線の動きでそう判断できた。


 躊躇している? 動きを止めている『彼女』を促すかのように迷いなく先に自分の名前を署名する。そんな自分の勢いに押されたのか『彼女』も自分の名前で署名した。この書類には契約魔法がかかっている。互いが署名した時点で『結婚証明書』と文字が変化して浮かび上がり一瞬強い光を放つ。もう一度署名した『彼女』の文字へと目線を戻す。

 丸みのある不思議な文字だ。でも記録に残された『渡り人』の文字に似ている。


「これがハルカの国の文字なのか」


 『彼女』の署名を見て胸が熱くなった。

 

 ああ。これで私の妻だ。


 再び『彼女』の正面に立つと片膝をつくと私は『彼女』の右手を手に取り右手の甲にキスをした。


「私は貴女をいかなる時も愛し守ることを誓う。どうか私の妻になって欲しい」


 改めて求婚する。『彼女』は躊躇いがちに質問があると言った。


「一つだけ、答えて欲しいことがあるんだけど…… もし、私が貴方なら自分の妻を他の男性と共有はしたくないし、できないと思う。貴方は本当に平気なの?」


 『彼女』の瞳をじっと見つめ返す。逡巡することなく答えた。


「正直なところ、本当は貴女を独占したい。誰にも触れさせたくはない。でも、貴女の生死に関わるなら…… 貴女の命を守る為ならば私は何でもする。私の(マナ)で足りないならば、他の誰かのマナを受け入れても貴女に生きて欲しいと思う」


 本当は誰にも触れさせたくはない。当たり前のことだ。でも『彼女』の命に関わるなら、それを最優先にする。生きていてほしい。そばにいてほしい。それが全てだ。『彼女』をぎゅっと抱きしめた。


「私は貴女のものだ、ハルカ。どうか私と結婚して欲しい」


 『彼女』の耳元でそう伝える。すっぽりおさまった頬や耳、うなじが朱色に染まる。ああ、なんて可愛らしい。


「はい」


 と応えた『彼女』を、抱きしめた腕に力をこめる。


「この星の成婚の儀を行なうから」


 『彼女』の後ろに回り込み『彼女』の左手の甲の上に自分の左手の甲を重ねた。

 すると私の左手の甲に虹色の一本の木のような紋様が浮かび上がる。丁度、幹や枝の部分が強い光を放つ。それと同時に私の手の甲も熱くなりエネルギーが体内に流れ込んできた。『彼女』が驚いて手を離そうとするのをがっちりと私の手を重ね、指を絡めて握り込む。エネルギーが自分の身体を熱く巡ってゆく。やがて、光と熱が収まると、『彼女』の手を離した。

 『彼女』の手の甲に透けるように幹と枝の紋様が刻まれていた。

 

 驚いたように自分の手の甲を見つめる『彼女』。


「これは?」

「それは聖樹の刻印。パートナーの証だ」


 これによってマナの授受が可能になると説明をする。

 そして一組の指輪を『彼女』の目の前に出す。

 『彼女』のために自分のマナによって作られた指輪と私の為に『彼女』が選んだ指輪が並べられる。

 『彼女』が選んでくれた指輪は『彼女の瞳の色』を基調にしたものだ。

 焦茶色と金と銀を組み合わせたデザインで結構洒落てる。


 私は自分のマナで作った首飾りの色合いとよく似た自分の瞳と髪の色、アースブルーと銀を使った指輪を『彼女』の左手の薬指にはめた。

 私の左手の薬指に『彼女』によって『彼女』が選んだ指輪をはめる。


 そして『彼女』の顎の角度を上げると口づけた。

 始めは軽く、それから啄むようにキスを何度も重ねる。

 『彼女』が少し息をしようと口を軽く開いた瞬間舌を『彼女』の口内に押し入れる様に入れていく。


 『彼女』は戸惑いつつ受け入れてくれた。

 その瞬間口内に甘い果実のジュレのような味が広がる。

 『彼女』も驚いたように私の顔を見ている。

 すごく甘い。貪るように舌を絡めると『彼女』からもものすごいエネルギーが注ぎ込まれていく。脳内が酔いしれ、もっともっとと求め続け『彼女』の全てを飲み尽くしたいと思ってしまうほど夢中になっていると

 いつの間に部屋に入ってきたのか


「兄上」


 自分を呼ぶその声に反応して身体を離す。とろりと蕩け切った『彼女』の瞳とお互いに瞳を絡めたまま目がそらすことができない。


「レオン。成婚の儀は終わりましたか?」


 振り返るとルイスとクリストフが立っていた。

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