第一夫君レオンハルトの恋 11
『彼女』は見た目年齢と共に身体的にも若返ったらしく『彼女』の星で見られる疾患、加齢と共に生じたであろう殆ど既往症がなくなっていた。ある一点を除いては。
先に『彼女』が自己申告したようにおそらく子供を持つことは……
残念だという気持ちとこれでライバルの夫君候補が減るだろうという相反する気持ちに支配され自分でも驚いてしまった。
宰相であるクリストフから夫君候補への立候補の最終確認がされる。
継続して立候補の意志を伝える。同室内にいるルイスもそのまま立候補を維持するらしい。クリストフにも確認をするとどうやらこいつもそのまま継続するそうだ。
隔離されている自分たちとは別に今回立候補した候補も控室にいるのか、『彼女』の医療記録を見たんだろう、何人かが候補から降りたらしい。部屋を退室していく音が聞こえた。
それからしばらくして女官が報告にきた。
どうやら『彼女』はこれから夫君候補が自らのマナで作った『装飾品』を選ぶそうだ。
思わず両手を組み『彼女』が自分のものを選んでもらえることを強く願った。
再び女官が部屋に入ってきた。
どうやら『彼女』に選ばれたらしい。思わず心の中でぐっと拳を握りしめる。
ふと見るとルイスもクリストフも選ばれたみたいだ。クリストフは思いがけない朗報に接したようななんとも言えない表情をしていた。
そんな二人と目が合う。どちらからともなく握手を交わす。
『渡り人・ハルカ』様を守る為、一蓮托生の関係になったのだ。
それぞれがすぐに行われる成婚の儀のための準備に入る。
用意していた正装の衣装を身につける。
ああ、早く『彼女』に会いたい。
ドキドキと年甲斐もなく早る気持ちを抑えながら、本宮を出て別宮『月の光』へ移動し、女官に案内された部屋へと移動する。
隣の部屋には『彼女』がいる。
ああ、だめだ、顔がどうしようもなく緩んでしまう。
本当に『彼女』の夫君に選ばれるなんて、どうしよう。
嬉しい。ああ、そうか、嬉しいんだ。ものすごく幸せだ。
自分がこんな幸せな瞬間を迎えることができただなんて。
信じられないくらい…… 幸せだ。
「用意が整ったそうです。第一夫君のレオンハルト様、お入りください」
女官の声に意識が引き戻される。慌てて立ち上がり、大きく深呼吸をして気持ちを整えてから、『彼女』のいる部屋へと続く扉の前にたった。
『彼女』はまるで伝説の天女のようだった。
白を基調に金と銀の刺繍と繊細なレースのドレス。そしてそれは見る角度によって虹色の虹彩を放つように仕立てられている。王妃様が選び『彼女』に勧めてくれたドレスは、予め私がそうしてくれるように王妃様にお願いしていたものだ。
よく似合っている。良かった。
自分が仕立てたドレスを身にまとい、一際目立つ自分のマナで作ったアースブルーサファイヤの首飾りをつけた彼女。
このまま抱き締めて何処かに攫ってしまいたい。
そんな気持ちをぐっと抑え込む。
止められない気持ちのまま『彼女』の側へ行き、自分が作った首飾りを触れる。
ピクッと『彼女』は身じろぎながらも拒まない。
「これは私が作ったんだ」
そう言いながら『彼女』の正面に立つ。一連の儀式に倣った言葉。ありきたりだ、でも気持ちを込めて求愛をする。
「ハルカ、どうか私を貴女の第一夫君にして欲しい」




