あたしの伝えたいこと
「えっと……これでいいのかな? なんだか向こうがどうなっているかわかんないけど……え、もう繋がってるの?」
「わわっ、ならはじめないと! よしっ……まずは自己紹介から……」
「あたしは、百合。なんだかヒロインなんてやっていたらしい女の子」
「あなたは、プレイヤーさん、っていうんだよね。あたし、そういう人がまだどこかに居るだろうって葵に教わったんだ」
「なら、最期くらいはあいさつくらいしたいよね! あたしは、葵にちょっと無理言ってこんな場所を作ってもらったんだ。あたしには少しでも、伝えておきたいことがあったから」
「きっとあたしのお話を見てくれていたなら知っての通り、あたしは弱いよ。誰かのためになりたいと思っているだけの、ちっぽけな存在」
「でもね。誰にも敵わないそんなあたしだからこそ、色々と思えたことがあったんだ」
「まずね。みんなってすっごいよ! 生きているってだけでもう、命を選択し続けているってこと。よく考えたらとんでもないよね……」
「そして、それだけでなく、幸せに向かって誰もが進む意志を持っていることがあたしにはとても素敵に思えてならないんだ」
「ただ、そんなみんなの中にあたしは居る筈なのに、居てほしくないって考えちゃうんだよね」
「あたしはね。あたしが嫌い。そして、それを許しちゃてる」
「だって、あたしはそうでもなければ他の人達のことを思えなかったから。本心ではきっと、あたしはあたしなんかを大事にしたがっちゃってる」
「誰かは天使って言ってくれたけどあたしはきっと、最初から自分勝手な悪いものなんだ。勿論、他の人達はこんな屁理屈関係ないって、知ってるけど」
「嫌いで、だから全て好し。そんなあたし」
「でも、そんなのって歪んだ鏡を持ってるだけ。他人を見て自分を見ない、最もダメなことだったんだ」
「それでもあたしは、幸せになって欲しいと何度も言ってもらったおかげでやっと幸せになろうと思ったよ」
「これで……あたしもみんなの一員になれるのかな。分かんないや」
「でもね。こんなにちっぽけなあたしという存在が、テキストの一片でしかない何も出来ない存在が、幸せに向かえるなら……」
「プレイヤーさんは、もっともっと幸せになって!」
「言われなくたって、って思うよね。でもね。もしかしたら少し足踏みとかしちゃっている人だっているかも知れないから……」
「こんなあたしは、あなた達が何時かあたしを忘れるまでの、勇気と許しにはなりたいんだ」
「ねえ。どうかみんな、ずっと元気でね!」




