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勇者の仲間達

「······なる程?そこそこの器量だが、絶世の美女と言う程では無いな。ソレットは一体この娘のどこに······」


 ハリアスさんは初対面の私の顔を値踏みするように覗き込む。な、なんか気分悪いんですけど?


 だが、ハリアスさんの言葉は途中で途切れた。隣に座る赤い鎧の男性に頭を小突かれたからだ。


「ハリアスが失礼をした。俺はゴント。クリスの件で君には世話になった。改めて礼をさせて貰う」


 ゴントと名乗った大柄な戦士は、立ち上がり礼儀正しく私に頭を下げる。い、いえいえ。私は何も。全てナニエルのお陰ですから。


 そのナニエルはテーブルに置かれた酒瓶の前に顔を埋めていた。ナ、ナニエル!?飲めないお酒を飲んだの?


「ソレットの話ではナニエルを連れて来てくれたのはアーテリア。君らしいな。やはり君もナニエルと同様クリスの恩人だ」


 完全に酔い潰れてしまったナニエルを心配する私に、ゴントさんは重ねてお礼を言ってくれた。


 恐縮する私にゴントさんは席に座るよう勧めてくれ、私達はテーブルを囲んで昼食を摂る事になった。


「全く。高名な神官達は御託ばかりで、馬鹿高い謝礼を取る事しか考えていない」


 ハリアスさんが憤慨しながら鳥の丸焼きをかじる。ハリアスさんとゴントさんは、クリスさんを治せる神官を懸命に探していたらしい。


「だが灯台下暗しだったな。クリスを休める為に立ち寄ったこの城下町に、ナニエルのような腕の良い薬師がいるとは」


 ゴントさんはもう食べ終わったらしく、カップに入った紅茶を飲みながらナニエルを称賛する。


「······アーテリアの料理が来ないな。ちょっと調理場に催促してくるよ」


 ソレットはそう言うと、席を立ち上がり奥の調理場に歩いて行った。その瞬間、ハリアスさんが席から身を乗り出し私に詰め寄って来た。


「アーテリア!あんたに聞きたい事がある。ソレットとは何処までの仲になったんだ?」


 は、はあ?何を言っているのこの魔法使いは?ど、何処までって。それ以前に余りにその質問失礼じゃない!?


「アーテリア。度々このハリアスが失礼を言って済まない。だが、今回はソレットにとって重要な転機になるかもしれないんだ」


 ゴントさんがハリアスさんのおでこを叩きながら、真剣な目で私を見る。て、転機って?


 ソレットとのあの真夜中の散歩の日、ソレットが宿に戻った時の様子をゴントさんは私に教えてくれた。


 宿に戻るなり、ソレットはベットに座り込み両手で頭を抱えていたらしい。そして「どうかしてる。初めて会った相手にジャスミンの事を話すなんて」


 と言ったらしい。それを側で聞いていたハリアスさんとゴントさんは、詳しく私の事をソレットに聞いたそうだ。


「アーテリア。君はもう知っているだろう。ジャスミンは五年前に死んだソレットの恋人だ」


 ゴントさんの確認に、私は何度も頷いてしまった。


「それ以来だ。ソレットはずっとジャスミンを引きずっている様子だった。それが今回、アーテリア。あんたにソレットは興味を示した。これはかつてない程の重大事件なんだ!」


 ハリアスさんは熱のこもった口調で力説する。そ、そうなの?これって、私は喜ぶべき事なの?喜んでいいの?


「そこでだ!アーテリア。あんたに単刀直入に聞きたい。今ソレットに抱いている印象は?」


 ハリアスさんのストレートな質問に、私は赤面してしまった。その顔を見たハリアスさんは、テーブルを叩き破顔した。


「両想いで決まりだ!!よし俺に任せろ!お前達の仲を俺がまとめてやるぞ!」


 絶叫するハリアスさんの頭を叩きながら、ゴントさんが私を見る。


「この軽口男が度々済まない。だがアーテリア。余計なお世話だと百も承知だ。だが、ソレットがジャスミンを忘れ、前に踏み出せるかどうかの瀬戸際なんだ」


 ゴントさんが丁寧に私を追い詰める。い、いやいや。両想いってそんな!ソレットにその気があるかどうかまだ分からないでしょう!?


 き、気のせいかもしれないし。気の迷いかもしれないし。気まぐれかもしれない!勇者の仲間に煽られ、私の心は激しく動揺していた。


「勇者と侍女の恋か。まあ古典的かもしれんが仔細は問わん。とにかく俺に任せろ!」


 ······侍女?そ、そうか。ナニエルは皆に私が女王だって事を言ってないのね。どうしよう。ソレットにもまだ言って無いわ。


「······僕はアーテリアが好きなんだあっ!」


 それは突然だった。酔って寝ていたナニエルが急に身体を起こし、真っ赤な顔で叫んだ。


 ハリアスさんとゴントさんがナニエルの叫び声を聞いて同時に固まる。その時、私は後ろから聞こえた金属音に振り返った。


 そこには、お盆からフォークを落としたソレットが立っていた。


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