七つ
「………ふー…」
ヘレンはゆっくり息を吐いて部屋に動けるスケルトンが居なくなったことを耳と目で確認します。クワロ・メーネの火力を最大にしてヘレンが振り回せば特別硬い黒いスケルトンでも2つか3つに容易く溶断されます。でも、スケルトンの数が20、30と増え続け今ではスケルトンの残骸で床が見えません。流石にヘレンも囲まれながらホーリー・ボムを唱えることは出来ず時間が掛かってしまいました。
骨が溶けた臭さと煙で狭くない部屋は地獄の様です。
スケルトンの残骸を足で蹴り上げながら歩くヘレンは扉の前に立ち止まり主に視覚と足腰、体感に魔力を流して自分を強化していきます。
蝋燭の明かりだけが頼りだった階段はワイヤーや違和感のある天井や壁の窪み、1番奥の扉まで昼間のように見えます。
「化け物。私の先を越した罪は重いぞ」
ヘレンは膝を軽く曲げて前のめりに傾き、階段に倒れかけた瞬間音を置いていく様に階段を駆け落ちます。ヘレンが1歩蹴れば次に足が着く頃には20段は飛んでいるでしょう。落ちるよりも早いかもしれない速さでは罠が発動した頃にはヘレンはもう通り過ぎていました、蝋燭の火もヘレンの風圧で消し飛んでしまいます。
すでに扉は目の前ヘレンは階段に足を掛けると地面と平行に飛ぶよう蹴る角度を調整します。鎧を着込んだ長身の女性が落ちるような速度で駆け込んでくれば最早人ではなく砲弾です。
両手と両足を組んで体を小さくして容易く扉を破壊して入った部屋はシャンデリアのように明るく夜目を強くしていたヘレンは目が眩みます。
しかし黒い骨は組んだ腕の間から微かに見えていました、閉じた足を伸ばして着地し地面を滑りながら最大火力のクワロ・メーネを棍棒かのように振り回します。骨を焼く手応えから何体かは溶断出来たようです。
「ノンブル!」
ノンブルを穴から引き抜くと床に突き刺し減速、それでも止まれないので自分で壁と激突する前に自分から壁を蹴って衝突の衝撃を吸収します。
壁が破壊される音を最後に部屋はシンと静まり返りヘレンの呼吸だけが聞こえます。目を閉じれば誰も居ないかと思うような静けさですが他にも生き物が居ることはヘレンには分かります。
「先程はありがとう。そこで何をしている?」
部屋の隅でちょこんと体育座りをしているスライムにヘレンは問い掛けますがスライムは何も言いません。
目の前のスライムが敵なのかどうか分かりませんが国を救うかもしれない召喚者を殺されたヘレンは怒って先ずスライムの両足をクワロ・メーネで溶断します。
また足をくっ付けられないようにヘレンは切り落とした足を遠くに蹴飛ばして、残った上半身は転がっているスケルトンの大腿骨辺りの骨を突き刺し床に貼り付けます。
モゾモゾとしか動けないスライムを見て少し胸がスッキリしたヘレン。邪魔者を処理して今居る部屋を改めて見回します。