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四つ

カツー……ン。カツー……ン。部下達の声はもう聞こえなくなり自分の足音が階段の中で寂しく響きます。1歩進む事に奥にある壁の両側の蝋燭が灯り、通り過ぎた蝋燭はすぐに消えていきます。後ろも前も少し行けば真っ暗闇、怪しく光る深蒼の光が頼りなく足元を照らし穴の中に落ちていくようです。

何段降りたでしょう。入口の光は小さくなり、次第に消えて部下達の声も聞こえません。蝋燭の火も弱くなった気がします、この先には何も無いのではと思う人も中には居るでしょうが下から伝わる気配は強くなって来てヘレンはこの先が目的の場所だと確信しています。

でも、ヘレンは立ち止まります。動こうとしません。


「小賢しい」


ヘレンは軽く跳躍し階段を3段ほど飛び下りました。着地したヘレンの後ろには存在するはずの階段は無く、ただ深い穴がありました。覗き込んでも底は見えません。もし落ちていたら、大変な事になっていたでしょう。階段の落とし穴から始め、天井からの槍、背後からの矢、ガス、首の高さにあるピンと張られた強靱な鋼糸。方向や手段を変えて待ち構える罠達をヘレンは顔も呼吸も変えず淡々と処理していきます。

ヘレンはこの罠は召喚を行う人物の最低限の強さを振るいにかける為に作った先人の遺産だと考えていました。下手をすれば自国諸共世界を滅ぼす爆弾になり得る召喚。生半可な人では召喚者を無傷のまま地上に送り届けてしまうでしょう。それを防ぐ為の罠だと。

この国が滅びるのは覚悟の上。両側の国が滅びるのなら本望。けれどその一番最初の犠牲者が自分の部下なのは心が痛む、ヘレンはそう思います。


「馬鹿な部下を持つと苦労するな」


ヘレンは目を閉じ笑いながら言います。頭の上から落ちてくる煉瓦の塊もヒラリと避けます。頭より先に体が動く、そんな様子で数も頻度も多くなった罠の数々を岩を避ける水の流れのように滑らかにすり抜けます。

可哀想、と言う言葉が出てきてしまいそうです。そうやって進むと扉が見えてきました。


「む。」


ヘレンは閉じた目を開いて扉を見ます、単純な作りの木製の扉です。でも張り付く、纏わり付く気配はまだ先です。まだ召喚を行える部屋ではないと分かります。

何故?ヘレンは思います。召喚を行うだけなら部屋は1つで十分です。


「…進むしかないな」


どの道進む他に選択肢はありません。どんなに変でも、おかしくても、怪しくても行くしか無いのです。

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