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二つ

カッカッカッ。コツコツコツ。ツカツカツカ。パタパタパタ。ガチャガチャガチャ。様々な足音を響かせて清潔でも質素な1本の廊下を進む人達が居ました。先頭を歩くのは男性よりも頭1つ飛び抜けた身長をもつ白い肌、白い頭髪、黒い瞳が特徴の女性。着てる鎧をドレスに替えればさぞ美しい事でしょう。


「殿下」


「口説いぞ大臣。もう決めたのだ」


「されどもう一度お聞きします。やるのですね?」


「…やる。やらねばならん。やらねば民の安息が奪られる」


「他に方法は?」


「ない。」


「遠回りでも、苦渋を飲み、辛酸を舐め尽くしても。屈辱に塗れる方法も無いのですね?」


初老の男の人に言われて殿下と言われた女性は立ち止まり大臣を真っ直ぐ真正面から見つめます。その顔はとても怖く、どこか哀しいと大臣は思いました。


「前線を突破させ両国に大使を派遣した、戦場から戻れなかった兵もいる。たが安息は来なかった。父と母、私も両国に直接出向いた、両国に陛下に会い話もしたがまだ安息は来ない。民は今でも苦しんでる」


殿下は大臣に目で語り掛けます。


この国は『溝鼠の国』と言われています。溝鼠の国は2つの国に挟まれている小さな国です。左の国は技術力の国『帝国』、左の国は資源の国『商国』。溝鼠の国は2つの国と仲良くしてましたが、2つの国はお互いが嫌いで、お互いの物が欲しくて遂に戦争を起こしてしまいました。互いの物を奪おうと広がっていった戦火は直ぐに溝鼠の国に届きました。

流れ弾で民が死に、女性が襲われ、脱走兵が野党の真似事を始め、国の各地で被害が出ています。

無関係な他国の戦争で被害を受けて、『止めて』とお願いしたのに無視されて、今も誰かの大切な人が苦しんでいます。溝鼠だからと自分たちを見下す彼らが許せない。

この国を任せられてるのに、自分達しか民は頼れないのに何も出来ない自分たちが許せない。

殿下は目で語り掛けます。


これ以上の屈辱があるのか? と。


大臣はゆっくり目を閉じ何も言いません。殿下は再び大股でガチャガチャと鎧を鳴らしながら歩き始めます。


「大臣、嫌われ役ご苦労。気が引き締まった」


その場で立ち止まったままの大臣に少しだけ柔らかい声で殿下は言います。大臣は一礼して殿下とは反対の方に歩きます。

殿下。本名はヘレン・M・ゲシュペスト

、『溝鼠の国』の第四王位継承者。王族直系ではないにしろ国民や国に役立つ事から汚れ役でも進んで名乗り出る頑張り屋さんのお姫様です。ヘレンはこの国を苦しめる色々な問題の中で最も危険で大変なことをしようとしています。

それは国内に入り込んだ両国の脱走兵、正規兵の排除。治安が悪化して急速に成長した犯罪組織の排除。細かい事はまだまだありますが大まかな目的はこの3つです。

お姫様、元より女性にこんな危ない事はさせられない!と言う意見は出ませんてました。なぜならヘレンは王族の血縁と判明するとその日まで冒険者と言う戦う仕事で誰よりも強くなっていたからです。

生真面目なヘレンの性格と強さはたちまち評判になり周りの人から認められるようになりました。

でも、1人で向かうのは流石にヘレンでも危険です、でも護衛や兵士は各地の治安維持で忙しい、他に戦える王族も居ません。そこで溝鼠の国の王様は禁忌を犯すことにしました。

異世界からの呼び、従わせる『召喚』です。出てくるのは主に人ですが呼び出された人間は怪物や人外と呼ばれる程の何らかの『力』をもって呼び出されます。

何故禁忌なのでしょう?それは呼び出される人間が例外なく、大小の違いがあれど世界を滅ぼそうとするのです。自分達の世界を憎んでいるのに別の世界を滅ぼそうとする、変な話ですが溝鼠の国がまだ国では無い頃。この儀式で世界を巻き込みかけたのです。だから禁忌なのです。

世界を滅ぼしてでも国を守りたい、滅ぶにしても相手を巻き込んで。それぐらい国を滅茶苦茶にされているのです。

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