第5章 『墜ちた流星 MIA バルティス』
バルティスが仮死の眠りについてから、4ヶ月が経過。
その間、バルティスは宇宙を漂い続けていた。
「……センサーに反応‼ 居住可能な惑星を発見‼」
バルティスの纏った装甲宇宙服の中のモニターではレインが双眼鏡で何かを見ていた。
……モニターの中なのに変な所で芸が細かいAI であった。
レインは双眼鏡を下ろし、いそいそと身に纏ったセーラー服を脱ぎ始め裸になった。
流石は趣味に生きる男クルーゾー特製のAI 、機能はポンコツでも、モニターの中のレインの裸体は均整がとれたエチエチな体だった。
何故かレインはトラ縞のビキニと角の付いたカチューシャを身に付け、バチバチと放電する2つの棒をそれぞれ左右の手に持ち、画面の外に向けて押し付ける。
「マスター君‼ 起きるっちゃ~‼」
おおっ‼ これこそは伝説に語られるジャパメーションの『電気ショックで人を蘇生させる』方法の作法ではないか⁉
「アババババ……アミバッ‼」
装甲宇宙服の中に電流の嵐が吹き荒れる‼
バルティスは謎の奇声を発しながら、ビクンッ‼ ビクンッ‼ と、海老の様にのたうちながら復活した。
「マスター君、起きたんだね⁉」
「この阿呆‼ もうちょっと、マシな蘇生方法は無かったのか⁉」
「……おお。 マスター君よ‼ 死んでしまうとは何事だ‼」
モニターの中のレインに抗議するアフロヘアーのバルティス。
これも蘇生の作法の一環らしく、モニターの中のレインはいつの間にか王様の格好で謎のチャントを唱えていた。
……一瞬で、王様の格好が出来るなら、トラ縞ビキニを着替える必要は無いのだが、ソコはクルーゾークオリティである。
「それはそれで置いといて……マスター君‼ 生存可能な惑星を見付けたよ‼」
荷物を右から左へ置くジェスチャーをしながら、いつの間にかセーラー服姿に戻ったレイン。
レインのデフォルトの衣装はセーラー服らしい。
「……どうやって、その惑星まで行くんだ?」
「……どうしよう……マスター君?」
「……どうしよう? ではない。 何で推進バーニアとかの推進装置が無いのだ⁉」
「……だって、クルーゾーが……」
「……その辺はちゃんと進言しておくべきだろっ⁉ ……まあ、いい。 レイン、大気圏突入機能は有るのだな?」
「大丈夫‼ その機能はクルーゾーがロマンだからって、付けてたよ‼」
……変な機能だけはちゃんと付いているのがクルーゾークオリティである。
「……ならば……帝国将校108芸の1つ、『宇宙遊泳‼』 」
バルティスは宇宙で平泳ぎの真似を始める。
「マスター君‼ そんなのでは宇宙は泳げな……えー⁉ 泳いでる⁉」
「……フフフ……帝国将校108芸に不可能は無いっ‼」
「……だったら、この技で泳いで、味方の船探した方が良かったんじゃあ……」
「……帝国将校108芸に不可能な事だって有る……」
……ドヤ顔で言い放った言葉に、AI が突っ込みを入れたので、バツの悪そうな顔で前言を翻すバルティス。
スイスイと宙を泳ぐバルティス。
レインが引力を感知。
「マスター君‼ 引力を確認したよ‼ これで後は引力に惹かれて惑星まで行けるよ‼」
「後は、重力に魂を惹かれるだけか……レイン、大気圏突入の用意を」
「オッケー‼ この装甲宇宙服の股間のポケットから、耐熱シートを出してね?」
レインの指示に従い、バルティスは股間のポケットからギンギラギンに光る耐熱シートを広げる。
「マスター君、これにくるまれば準備完了だよ‼」
「……待て、この装甲宇宙服には大気圏突入の為の冷却機能は無いのか? 落下の衝撃の対処法は?」
視線を逸らすレイン。
「大丈夫‼ 根性で‼」
「無いのか⁉ 普通は暑さで死ぬぞ⁉ 」
「ちょっと暑いけど、装甲宇宙服『宇宙提督 バルティス』は超金属『エミルナイト』製だから壊れないよ‼ りゅーん❤」
「お前は大丈夫でも、私が落下の衝撃で死ぬわ‼」
……何だかんだと喚きながら、バルティス達は惑星の引力に引かれ、落下して行く。
「熱ッ‼ 熱チチチチ……‼」
「大丈夫よ‼ 根性で頑張りましょ⁉」
「だったら、貴様がやって見ろおぉぉぉ‼ クソッ‼ 帝国将校108芸 『心頭滅却すれば、鞭打ちもまた、気持ちイイッ‼』 」
「……マスター君、その技名……何か嫌らしいよ?」
「余計なお世話だあぁぁぁっ‼」
大気圏へ突入するバルティス。
……この日、辺境の惑星『バラゾック』に1つの流星が墜ちた……。
最後まで読んでくださって感謝。