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第4章 『宇宙の迷子‼ バルティス』

 場面はトレビアーンが沈んだ後のメオサマセ宙域。


 トレビアーンの乗組員はデタロン帝国とネムナルト連合の合同で救助活動が行われていた。


 ……旗艦が沈んだと言うのに、何故か死傷者は殆ど居なかった……。


 何とか救助挺に乗る事が出来たヤンデルは救助挺の窓から宇宙そらを見ていると、とても凄いモノを見た‼


 バルティス親衛隊達が横にクルクルと回りながら、「兄貴ィ~ッ‼ 何処に居るんじゃあ~ッ⁉ 返事をしてくだせぇ~ッ⁉」と、叫びながら宇宙そらを飛び回り乗組員を救助しているのである‼

 ……時には、呼吸をしていない者にはマウス・トゥ・マウスで『ズギュゥゥゥン‼』と人工呼吸のサービス付きである‼ 助けられた者は新たな趣味の扉を破壊されそうであった。

 ……ヤンデルは考えるのを止め、親衛隊達を見なかった事にした。

 「……バル、何処に行ったのさ……まぁ、死んではいないだろうけど……」

 ヤンデルの呟きはAGES 銀河の暗闇に消えていった。


 『ちゃらら~らん♪』

 某超ロボット生命体のアニメのBGMの様にデタロン帝国のエンプレムからバルティスのパーソナルエンプレムに替わる。





 私は白い闇の中に居た。

 「……くん」

 「………バルティスくん」

 何者かの呼び声のする方に目を向ける。

 遠くから、裸エプロン姿のアン提督が駆け寄ってきた。

 「……オゥ‼ スィートゥ⁉ 且つ、夢のごつある⁉」

 私もアン提督に向けて走り出そうとしたが、アン提督の背後に肉雪崩を見た。

 その肉雪崩はバルティス親衛隊達だった。

 ご丁寧に親衛隊達も裸エプロン姿だった。

 「あ、兄貴ィ~ッ‼」

 肉雪崩はアン提督を弾き飛ばし、私に向かってくる。

 「ア、アン提督がぁ~っ⁉ 親衛隊‼ 何て事をするだぁ~っ‼」

 私は怒りに任せて肉雪崩に目からビームを放つ。

 ……しかし、ビームは親衛隊達から溢れ出る漢らしい肉汁で形成された『Mフィールド』でねじ曲げられた。

 私は肉雪崩に呑み込まれた。

 「アイエエエェッ‼」

 絶叫と共に私の意識は覚醒する。

 ……どうやら、夢を見ていた様だ。

 「……此処は何処だ⁉」 

 周りを見渡すと、何やら宇宙服の様なパワードスーツの中に居るらしい。

 パワードスーツのモニター上には真っ暗な宇宙空間が映っていた。

 ………私は此処は何処だろうと考える。 たしか、ヤンデルと喧嘩して、親衛隊の肉雪崩に喧嘩を止められ(巻き込まれたとも言う)、怒りに任せて帝国将校108芸『目からビーム』を出しながら、大回転海老反りジャンプをして宇宙空間に放り出された筈。 ……いや、自ら飛び出たと言うべきか……。

 ……怒りに任せて何と言う阿呆な事をしたのだろうかと、凹んだ。

 ……とりあえず、気持ちを切り替えよう。

 まあ、親衛隊とヤンデルは無事だろう。

 トレビアーンの乗組員も親衛隊達が何とかしてくれるだろう。

 ……私の部下ならこの程度で死んでは務まらない。


 ……だが、何故に私はパワードスーツの中に居るのだろう?

 「マスターくん。 気がついたんだね?」

 メインモニターの隅にサブモニターが展開する。

 サブモニターには青い髪のセーラー服姿の少女が映っていた。

 「……誰だ、君は?」

 私の問いにモニターの向こうの少女が答える。

 「私はトレビアーンの緊急システムAI、レイン・ボーサッキよ。 宜しくね!」

 レインと名乗るAIが元気よく答える。

 私はAIに映像が必要なのかと考えるが、レインの姿に同僚しんゆうのクルーゾー・トチクルーを思い出す……。


 ……昔、帝国大学に居た頃、クルーゾーと呑み明かした次の日の朝、居眠りしていた私が目を覚ますと、彼が徹夜してやっていたギャルゲーを攻略し終えた直後だった。

 「見たまえ‼ バルティス‼

 僕は遂に『センチメンタルな記念日』の最後の一人、イチオシの娘をクリアしたぞぉ‼

 これで全キャラコンプリートだぁ‼」

 ……モニターを見ると、こちらに向かって青い髪の少女が「……私……ずっと貴方の側に居て、貴方を応援したい‼」とか言っていた。

 ……レインのモデルはあの時のゲームのヒロインらしい……。


 

 ……このAIはクルーゾーの作品に間違いない。

 「……で、コレはなんだ? 私はどういう状態なのだ?」

 私の問いかけにレインは「説明しよう‼」 と、声色を変えながら、VTR を再生する。

 メインモニターに再現VTR が映し出される。



 『緊急システムは0.01秒で装着を完了する。

 では、そのプロセスをもう一度視てみよう。

 宇宙空間に放り出されたバルティス。(自ら飛び出たとも言う。)

 それを感知したトレビアーンのAI がクルーゾーの研究所に通報。

 研究所でアイドル番組を視ながら、カップ麺を啜っていたクルーゾーは「承認っ‼」と、緊急システムの発動を承認‼

 トレビアーンから、トレビアーンAI と必要機材をナノマシーン化して放出。

 バルティスの周囲でナノマシーンは再結合。

 バルティスを保護するAI 搭載宇宙服が完成する‼

 そして、徐にポージング‼

 『宇宙提督 バルティスッ‼』

 コレが勝利の鍵だっ‼』



 ……変な所がやけに凝っているふざけたシステムはクルーゾー作で間違いない。

 ……でも、クルーゾーには感謝せねばならないな。

 「で、此所は何処だ? 私は帝国に帰還せねばならないのだが……?」

 私はレインに問いかけた。

 「マスターくん、ゴメンね? この宇宙服、宇宙に放り出された時の臨時の装備で未完成なの。 ……だから、ビーコンや推進剤、位置情報機能とかは一切付いてないの」

 「何だ⁉ その「お帰りなさい♥ ごはんもお風呂も用意出来てないの♥ 」 みたいな返答は⁉ 」 

 「……だって、クルーゾー(お父さん)が「大丈夫‼ ファミ……いや、バルティス親衛隊が直ぐに拾ってくれるだろうから‼ 」 と、ドヤ顔で言って、「試作品だからまだ装備しなくて良いだろ?」 って、装備しなかったんだもの……」

 「……いや、その辺はちゃんと装備するべきだろ……いや、待て。 ならば、私は……」

 「……ゴメンね? マスターくんは宇宙を漂流する事になると思うの……大丈夫‼ 根性が有れば、生きて行けるわ‼」

 「精神論で何とかなるか~っ‼」

 ……クルーゾーめ、AI と言い、宇宙服と言い何と言うポンコツを作ったのか?

 ……む⁉ 何だか段々、酸素が薄くなってきた様な……?

 「……あ、ゴメンね? どうやら、酸素も最低限でしか積んでないみたいなの」

 「何故っ⁉ 不備が過ぎるぞ⁉」

 「……大丈夫‼ 根性が「大事な事だから2度言うが、精神論で何とかなるか~ッ‼」 」

 ……こうなったら、帝国将校108芸に頼るしかない。

 「……レイン、この宇宙服には蘇生機能は有るか? 有るならば、これから私は仮死状態に入る。 適当な居住可能惑星を見つけたら、蘇生をしてくれ」

 「大丈夫‼ 蘇生装置は有るから、根性で蘇らせてみせるわ‼」

 「……根性の力で、蘇生をするのか? ……まあ、良い……頼んだぞ」


 「……逝くぞ‼ 必殺‼ 『帝国将校108芸‼ 春まで冬眠(暖かくなったら、また会おうね‼)』発動ッ‼」


 ……私は考えるのを止めた。




 ……宇宙に沈黙が再び訪れた。

 「……必殺って……マスターくんは誰を殺すつもりだったんだろ……逝くぞも何か違うし……」

 ……誰に向けて言ったのか判らないが、レインの呟きはバルティスには届かず、虚空に消えた。

読んでくださった方々に感謝。

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