話し合い
Q.憧れの人は誰ですか?
A.織田信長
Q.好きな有名人は誰ですか?
A.織田信長
Q.好きな人はいますか?
A.織田信長
Q.好きな漫画は?
A.キング〇厶、バガボ〇ド、ひとつなぎの大秘宝、妖精の尻尾、死神代行、黒い五つ葉 etc.....
Q.理由は?
A.体躯が良かったり、屈強なおじ様がいるから。
Q.生まれ変わったら何になりたい?
A.異世界で最強オヤジ将軍のお嫁さん
そう望んだ…そう願っていた…
なのに、夢見た転生先がイケメンしかいない乙女ゲームなんて需要無さ過ぎて泣きたい!!
「…い、おい!!」
トリップしていた意識を呼び戻す声に我に返る。
「貴様が呼び出しておいて急に黙り込むんじゃない!話とは何だ。さっさと用件を言え」
目の前には私がいる国の第一王子であるダニエル殿下が苛立たしげに前の椅子に腰掛けている。
そうだった。彼にはあの手この手でこの話し合いに応じてもらった。何をしたのかって?今、彼が夢中になっているご令嬢、ナディア嬢を話し合いに応じなければ虐めてやると脅しました。
「そうですわね。回りくどいのも面倒ですし、率直に言わせて頂きますわ。今、殿下がお考えになっている婚約破棄なんですけども、婚約破棄するのは構いませんが国外追放や処刑ではなくわたくしを前線へ送ってはくださいませんか?」
「……は?」
殿下は苛立たしげに肘掛けに肘を付き、反対の手で肘掛をトントンと指で叩いていた動作を辞める。
「は?ではなくて、婚約破棄をされましたらその後わたくしを戦場の前線へ送って下さいと申しているのです」
「二度言わずとも聞こえている。そうではなく、何故ベラがその事を知っているのかということと前線へ行きたがるのかを聞いているのだ」
あら、彼に愛称で呼ばれるのはかなり久し振りね。だけど、それによって今まで抱いていた恋心が痛んだりとかは一切なかった。
前世を思い出してから性格が前世に引き寄せられているのか、好みは完全に変わり、今はイケおじにしか興味がない。それも、屈強で強面だと最高に良き!
おっと、また脱線してしまった。
「何故かって?おかしな事をおっしゃいますのね。殿下はご存知無かったのですか?世間は見目麗しい男性を侍らせた男爵令嬢の話題で持ち切りですのよ?その取り巻きをしている殿下が婚約者であるわたくしとの婚約破棄をするのではないかと貴族の皆様も噂をしておいでですわ。前線へはわたくしの自殺願望とでもお好きなように受け取って下さいませ」
「なっ、私が取り巻きだと!?それに、ナディアだけでなく私の友人までも馬鹿にするか!!」
ダニエル殿下は顔を真っ赤にして怒りに肩を上げる。友人ねえ……
「隙あらば一人の女性を取り合う間柄が友人とは笑えるわね」
しまった。
思わず思ってる事が口をついて出てしまった。ちらりと殿下を見ると彼は憤りながらも私の言葉に思い当たる節でもあるのか唇を震わせるだけで返す言葉がないようだ。
「…っ、そもそもお前は私の事が好きだったのではないのか!!」
いやいや、漸く言葉が返って来たかと思ったらそれかい。確かに前世を思い出す前は彼のことを慕っていた。だけど、今はそんな気持ち綺麗さっぱり無くなってしまったのだ。
というか、今まで散々婚約者を蔑ろにして他の女性と公衆の面前で堂々とイチャイチャしていた奴が何言ってんだ?
「確かに、お慕い申していた時期もございましたわ。しかし、それも過去のこと。大体、婚約者がいる身でありながら、散々わたくしの前で他の女性と仲睦まじい姿を見せつけておいてどの口がそのような事をおっしゃっているのでしょうか?」
私は黒さを多分に含んだ笑みを浮かべて威圧する。彼…いや、この国の国王でさえも実は私に強く出ることはあまり出来ない。それに、彼との婚約は王家の方から願い出てきて結んだ契約のようなものだ。
私は幼い事から膨大な魔力を有していた。その力は大人になると国一国は滅ぼせるのでは無いかと言われるほどだった。その為、私をこの地に留め監視の意味も含めてダニエル殿下との婚約が決まった。まあ、そのせいで不自由だと自己憐憫に酔った殿下はあっさりとナディア嬢に攻略されて婚約破棄なんいう暴挙に出ようとしているのだ。
まあ、止める気はさらさらないけど。寧ろ便乗して前線送りルートウェルカムだから。
「そもそも、この婚約は元は王家から望まれたものだということをお忘れなきように。それをわたくしは殿下の作戦に便乗しても良いと申しているのです。自由の無かった殿下にも漸く春が来るのです、その為にはわたくしが邪魔になりますでしょう?ですから、これは交渉です。」
そう、これは殿下の婚約破棄イベントを成功させる為に私が協力してあげると分からなせなければならない。
私はゲームのようにナディア嬢を酷くいじめた記憶がない。ということは、婚約破棄が受理されない可能性もある上に寧ろ陛下がダニエル殿下を切り捨て私の魔力を取る可能性だってあるのだ。それだと困る。大変困る。
「殿下はナディア嬢と一緒になりたい。わたくしは前線に行きたい。利害が一致している限り協力し合った方が上手くいくとは思いませんか?」
ダニエル殿下は元々は馬鹿ではない。ナディア嬢と共にいることで愚者になってしまっているようだが、ここまで説明すれば幾ら脳内花畑になった彼でも私の提案が分からないわけではないだろう。
まあ、前線に行ったからといってこの国に留まるという意味ではないがそんな事は言わなくていいだろう。そんな事を言えば寧ろ自分の首を締めてしまう。敵国に好みの屈強なおじ様がいれば其方に着く気満々だが、取り敢えずは殿下達との共同戦線を張り、私の輝かしい未来、すなわち夫探しの為に更に愚者を演じて頂きましょう。