本音
「よし、解散!」
先生の合図とともに今日の授業は終わりを告げ、生徒たちはざわめきだす。
教室での立場が最も濃くでる時間。上位者は自身が上だということを確認し、その他は笑顔でそれに頷く。
「ねぇこれ昨日カレシに貰ったんだけどさ~チョーかわいくない?」
「あーわかるぅー」
「めっちゃ可愛いじゃん!」
「いいなー」
「あ、あとさーこのリップよくないー?この前見つけてよかったからもう買っちゃったの!」
「え、なにそれいいなー」
「どこで買ったの?」
「かわいいー」
ほらまたやってる。
1人が話してまわりはそれに合わせる。それを聞いてはそいつは満足してまた話し出す。
その中に本音なんてあるわけがないのに。
というかそのもらいもの元カノにあげようとしてたやつでしょ?
そのリップも下品なあなたには似合わない。
いい加減まわりが合わせてるのに気づきなさいよ。
考えてると眼が合った。
(あ、話さなきゃ)
ほら笑顔をつくって。前を見て、できる限り明るく話すのよ。
「ねぇあなたもそう思うでしょ?」
そんなに威圧する必要なんてないのに。どうせ皆あなたにあわせるんだから。
「そうだね」
私は本音を隠してそう言った。
「でしょ~!」
それでまた彼女はご機嫌になる。この時間が終わることはない。
終わったのなら、それはただの幻想だと私は思う。
自分の本音を言えないこの教室は、息が詰まるほど息苦しい。




