月の君と、12月。【原初】
月が大好きな彼女は
余命3ヶ月
満月の夜
天体観測を趣味とするボクは
キミと出逢う
望遠鏡で見る月はとても綺麗で
キミは月にいきたいと
独り言を漏らす
ボクは変わった子だと思いつつ
同じ月に興味を持つ者同士
再会を約束した
この時
ボクはキミの病気のことを
何も知らない
何度目かの再会のある日──
快晴
ボクはいつもの場所で
望遠鏡を覗く
その日は満月であり
一緒に見ようと
約束していた
少し遅れて現れたキミは
いつもと様子が違う
胸を押さえ
息も不規則で
冬であるのに
汗が凄い
ボクは病院へ行こうと腕を引くが
キミはそれを拒否した
苦しそうにしながらも
キミは望遠鏡を覗き
「私は、いつもあそこにいるから」
と、ボクに覗くよう促す
大きく綺麗な満月が見える
ボクはキミに視線を戻すと
キミは倒れていた
急いで病院へ連れていったが
どうやら……
キミは……
助からない……
そして
キミの家族が到着した
ボクはとんでもないことをしてしまったと
もし命を返せと言われたら
心臓を差し出す覚悟で
ご両親に謝り続けた
しかし
ボクが責められることはなく
それどころか
ボクと出会ってから
病気のことなんか忘れ
毎日笑顔で
ボクの話をするときは
特に楽しそうだった
と告げられた
病室に入れることになったボクは
キミの手を握ったまま
こう言った
「必ず会いに行くよ。月のキミに……」
キミは涙をこぼし
酸素マスク越しに
「待ってる」
と、いうと
静かに息を引き取った
1年後──
キミとの思い出の場所で
月を見るボク
目を閉じ
心の中でキミとの再会を果たす
「お待たせ──」
「今日もキミは綺麗だ──」