表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イジメに勝つ!  作者: 橋沢高広
13/24

【第13回】

 出海の言葉が続く。


「私の場合、物凄く恵まれていたのは『相当、強力な見方が、すぐ近くにいた』という点。それが父親であり、母親。

 しかも、母親は、ともかく、父親が〈ヤバかった〉……。本気で私を守ろうとしたけど、その方向性には問題があったかも……。でも、真剣に私のイジメに対して、向き合ってくれたのは確か。これは心から感謝しているわ。

 その程度に差があっても、親は子供の見方になってくれる筈。だから、イジメに遭ったら、まず、『親を見方に付ける』事を考えた方が良いわね。最初の一言を発するまではつらいけど、『イジメに遭っている』と言えれば、事態は変わって行くと思うの。

 でも、中には、『その程度の事で……』と、取り合わない親がいるのも確か。その時は『いじめ相談窓口』みたいな場所が、いくつもあるから、そこに相談すれば良いの。中には国が運営している場所もあるし、警察に相談しても良いんだよね。何しろ、『見方を作る!』。これがイジメから解放される最大、かつ、絶対の条件なんだ。

 そして、『逃げる』必要がある時は『撤退』を選ぶ!

 だから、この二点はつらくても、『やらなきゃ、いけない事』になる。何しろ、これが〈スタートライン〉なんだから、ここは勇気を振り絞る必要があるのよ。

 でも、一つ注意すべき点として、『学校の先生は見方にならない可能性がある』という事実。これは後で話すけど、私の場合が、そうだったんだ。

 で、ここから私はイジメと〈闘う〉事になる。だけど、同時に父親の〈無茶苦茶〉も始まったんだ」


 私の心は、この「無茶苦茶」という言葉に喰い付く。

(出海の父親だもの! 何をするんだろう!)という好奇心に満たされていた。その目は、(早く、続きを!)と訴えていたのは間違いない。

 彼女は私の顔を見て、軽い微笑みを浮かべながら、口を開いた。


「まず、父親が電話で告げた通り、その日のお昼に学校へ行ったんだよね。この時、『出海も連れて行く』と言われ、私は制服へと着替えて、玄関で待っていたの。

 そこへ現れた父親の恰好が凄かった!

(これ、どこで売っていたの!)と同時に、(何で、こんなのを持っているの!)と、思わず聞きそうになった紫色……、しかも、妙な光沢があるワイシャツを着て、第二ボタンまで〈わざと〉外し、そこから太い金色のネックレスが見える様にしたんだよ。しかも、その上に着たジャケットは白。更に、グラデーションのサングラスを掛けていたんだ。はたから見れば完全な〈チンピラ〉。何しろ〈ひん〉が全く感じられない……。

 その恰好でドイツ製のスポーツカー……、これ、屋根が収納出来て、オープンカーになるんだけど、わざわざ屋根を仕舞ってから、『出海も乗りなさい』と言ったんだ。

 確かに、この日は少し暖かかった。でも、一月にオープンカーよ! 何を考えているんだか……。一応、車に乗る際、かなり厚手のジャンパーを『着る様に』と、渡されたんだけど、学校へ付く直前になって、『ジャンパーは脱ぎなさい』と言い出す始末。

(これって、かなりの演出よね?)とは思ったけど、これで学校に〈乗り込んだ〉ものだから、先生達は目を点にしていたわ!」


(うわ! 何それ! 映画やドラマのワンシーンならともかく、現実に、そんな事をするなんて!)

 出海の話は私の心を鷲掴みにした。軽い興奮が、身体を包み込み始める。次に発せられる彼女の言葉を聞き洩らさぬ様、その耳に全神経が集中した。


「そして、この瞬間から、私のイジメに対する〈本当の闘い〉がスタートしたの。

 私達、相談室と呼ばれる部屋に通されたんだけど、そこには校長の姿はなく、教頭先生と学年主任、担任の先生の三人が対応した。

 土曜日の夜、私が話した内容を書いたノートのコピーを父親が先生達に渡し、『娘が話したイジメの全容が、それだ』と告げ、『未遂に終わっているが、金品の要求もされたそうだ。これは立派な恐喝未遂と言えよう。そのノートのオリジナルは別途保管してある。それを警察に持ち込む事も考えているが、まず、学校側で、このイジメに対する対応をして貰いたい』という趣旨の話をして、後は黙っちゃったんだ。

 先生達は、〈おたおた〉とするばかり。

『この件は調査し……』とか、『クラスでアンケートを実施し……』とか、先生達は言ったけど、それには全く反応せず、ただただ、三人を睨み付けているだけ。先生達の狼狽うろたえ振りは半端でなかったわ。父親が行った『無言の攻撃』に対して、(物凄い破壊力!)って思いながら、私は、その様子を見続けたの。

 結局、学校側は、『まず、調査を……』の一点張り。

 父親は最後に、『その調査結果を出し、適切な対応が実施されるまで娘は学校を休ませる。イジメが存在する学校に娘を通わせる程、俺は、お人好しじゃない!』と言い残して、学校を後にしたんだけど、私、心の中で父親に拍手を送りつつ、胸が〈スー〉としたんだ」


 この時、私は出海の父親に対して、(やはり、只者ではない!)と痛感した。

 彼女のお母さんがメモしたノートに関して、コピーを学校側に渡し、オリジナルを手元に残したのは、その内容を書き換えられる事態を考慮した為だと理解する。オリジナルを渡してしまえば、その改竄かいざん……、学校側に都合よく書き換えられる可能性もあるのだ。実際に、その様な事はしないと思われるが……。

(出海のお父さんって、豪快なだけじゃない! かなり的確な状況判断が出来る人!)

 私、彼女の父親に、(会ってみたい!)と、真剣に考える様になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ