椎谷氏の場合
ぼくと結婚してください。ぼくは、君のその綺麗な顏と抜群のスタイルが大好きです。
ただ、返事を聞く前に、少しだけ話があります。だましていた訳ではありませんが、黙っていたことがあります。
ぼくの実家は栃木県にありまして、実は、椎茸農家であります。そこそこ有名なブランド椎茸を作っています。
……そう、君の嫌いな椎茸です。
がっかりしましたか? 君は椎茸がすこぶる苦手でしたね。苦手というか、確か食べ物の中で一番嫌いで、お金積まれても食べれないって言ってましたね。
ぼくは幼いころから椎茸三昧でした。椎茸のおかげで大きくなれたといっても過言ではありません。単純に栄養としてだけではなく、椎茸で生計を立てていたからです。いわば、ぼくは椎茸の権化です。
正直、ぼくと結婚したら嫌でも椎茸と触れ合うことになると思います。実家にいった際には必ずお土産で持たされるでしょう。定期的に実家からB級品の椎茸を送ってくるでしょう。
椎茸とぼく、どちらを取りますか?
愛で食べ物の好き嫌いは乗り越えられませんか?
こう言っちゃあなんですけど、ぼく、そこそこ優良物件ですよ。
厳しいかもしれませんが、ぼくは食べ物の好き嫌いはいけないと思います。これを機に克服しましょう。あと君の外見は非常に素晴らしいですが、性格は少々良くないし、がさつでズボラな所は改善すべき点です。大丈夫です、ぼくが付いてます。
料理も全く出来ないですよね。ぜひぼくの母から教わってください。ぼくの大好物、それは母が作ってくれる、大ぶりの椎茸がはいった茶わん蒸しなんです。
どうか、ぼくのお嫁さんになって、椎茸入り茶わん蒸しを作ってください。