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ベルヴァン  作者: 三本ももも
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グランツァイス物語

この村は「ええじゃないか病」に患っている。

ベルヴァンは常日頃から思っていた。


病気にかかったが、健康の大切さをあらためて確認できたから「ええじゃないか」

熊に襲われたが、命があったから「ええじゃないか」

騙されて金をとられたが、その金が自分よりも必要とする人にわたったのだから「ええじゃないか」


なにごとも「ええじゃないか」ですます、その精神。

どんなひどい目に遭おうとも、つらい目にあおうとも、語尾に「ええじゃないか」とつければ万事すべて良しとする鷹揚さ。

それがトトル村の村人みながまとう空気であった。

心が強い、というよりはただ単にそういう地方病にかかっているのではないか、というのがベルヴァンの見解であった。


そんなトトル村の唯一の名産品は、村の名前にもなっているトトルと呼ばれる植物であった。

草の根は煎じればすぐれた痛み止め薬として重宝され、その蜜を集めて作られた蜂蜜は非常に美味であり、また美容に使えば肌が若返ると王侯貴族にも評判であった。


国を超えてもなおその名が高い名産品があればさぞ、村が潤って豊な暮らしぶりとしているかと思われるがそんなことはない。


そもそもトトル村が位置しているのは、アンガー山の山腹であり、まわりを山々に囲まれている。ふもとの町であるジェジェカにでるには、半日かけて人の足で踏み固められただけの山道を使って降りるしかない。そのため、自給自足が原則であり、鍋や包丁などの貴金属類・調味料などの村ではまかなえないものは週に2度ジェジェカからやってくる使いの者から物々交換していた。

交換といえば聞こえは良いが、等価交換ではない。等量交換だ。

鍋一つと交換するには、同量の薬や蜂蜜が必要であった。

どちらも一度に大量生産できる代物ではなく、それぐらいのまとまった量を作るには二ヶ月、あるいは三ヶ月を要する。そしてその他どの物をひとつとっても、対価にまったく見合えぬ量を要求された。

幼いころはそれが当たり前の光景であったため特に疑問に思わなかったが、よくよく考えてみるとひどい話である。

つまりは、トトル村でせっせと作り出された生産品はすべてふもとのジェジェカ町へ運ばれ、報酬としていくばくかの日用品を受け取るのみであったのだ。

運ばれたトトルはジェジェカ産と偽ってラベルを張られ、元手の何百倍の高値で取り引きされジェジェカ町の重要な収入源となっていた。


井戸から水をくみだすことなく、ひねればでてくる水。

日が暮れれば、灯りをともすための潤沢な油。

整備された道路、図書館や学舎、そして立派な街道。


同じ規模のほかの町にくらべ、整いすぎている設備はすべてトトルから生み出される品の売買による収入源でまかなわれていた。


けれどトトル村までの険しい山道は、トトルの年間の売り上げのいくばくかをジェジェカ町の設備投資のように使えばすぐさま整備されもっと利便性がよくなるはずなのに、わざとそうせず、山道のまま使い勝手の悪いままであった。

もし、整備してしまえば、トトルの本当の生産地がばれ、ほかの誰かに勝手に売り買いされ、トトルの売買をコントロールできなくなるからだ。

ジェジェカ町の都合がいいため、放置されているというのが現状だ。


また、ジェジェカ町では

「この先にはとある村があるが、行ってはならない。もし、踏みいれば二度と戻ってこれない」とまるで呪われた村のようにふれこみをして、出入りを制限していた。

とんでもない言われようだが、はっきりいってしまうと、それは事実であった。

この村に入ったが最後、そののんびりとした気候、おだやかで心優しい村人、質素だがおいしい食事、当初日帰りで帰る予定が一日、二日とだらだらと滞在がのび、そのうちに、村の空気に徐々に感染し、そしていつのまにやら住んで、「ええじゃないか、ええじゃないか」とのたまう村人になるのだ。

ちなみに、トトル村の村長はジェジェカ町から派遣され、生産量、村人の動向その出入りを常に監視してるのだが、この村に感化されぬよう、三年ごとに交代していた。だが、中には手遅れになり居着いた者もいる。

呪われた村と言われても仕方がなかった。


トトル村とジェジェカ町は隷属関係にあるといっていい。

村の大人はその事実を知っていた。

なのに、だれも糾弾しようとせず、現状を変えようとしなかった。

今の状況はおかしい、もっと暮らしが便利になるはずだ、とどれだけベルヴァンが熱弁をふるって言っても、最後に誰もが、決まってこういうのだ。

「ベルヴァンの言いたいことは分かった。確かにそうかもしれん。でも、かといって食うに困るほど困窮しているわけじゃあないから、ええじゃないか」



ベルヴァンはこの村のことは嫌いではなかった。

むしろ大好きであった。故に、搾取されている現状に甘んじていることに許せなかった。


ええじゃないか?

ちっともよくねぇよ!


が、現状を変えるにはその力がないことも知っていた。

変えたいと思うのに、力がない。

どうすればいいのか方法が分からない。

鬱屈した気持ちをもんもんと解消せずにいた時、ベルヴァンは真法に出会った。

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