表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/55

1部 シズク 6章 世界と時を超え、少年と少女は何を手にする §4 ②

「このままじゃみんな死んじゃ――」


 シズク達を囲む騎士のさらに外側から大きな歓声が上がった。何だ、とイクトが振り返ると、騎士たちに無数の魔法矢が降り注いだ。


「おぉぉぉぉぉ!」


 騎士達に飛びかかる者達、それは守備隊だ。先頭の隊長が咆哮をあげる。後ろに研究棟員もいる。それに、カツ、ナミたち院の少年少女たちもいて、魔法矢を放っていた。


「なぜだ、なぜこいつらが、ここにいる!!」

「マリア様!!」


 ユウの前に隊長が立つと、遅いわ、とマリアが呟く。それを聞いた隊長が豪快に笑う。


 隊長達の襲撃で形勢が反転する。だが騎士達だってがむしゃらだ。本気で世界を守ろうと戦っているのだ。一人で局面を変えられるユウ、アリス、アーティは動けない。マリアもここじゃ力を使えない。騎士に討たれるものも何人か出て来た。


「ごめんなさい……。私のせいで……」

「馬鹿野郎!!」


 叫んだのは隊長だ。彼の声が戦場に響き、敵も味方もの注目を集める。


「目を開けろ、シズク!! 皆、お前達を助けようと戦っている。誰かに命令されたからじゃない、それは自ら望んだことだ。お前を助けたいからだ!!」

「シズク!」「シズクお姉ちゃん!」「シズクちゃん!」「シズクさん!」……。


 守備隊に、研究棟員に、カツやナミ、院の生徒たち、誰もがシズクの名を呼んだ。


「お前の目に何が見える! 耳には何が聞こえる! 誰がお前を責めている!!」


 隊長さん、みんな。嬉しさと申し訳なさで、また涙が出そうになる。


 ――雫。


 シズクの内から聞こえる重なる二つの声、消えたはずの黒と白のミコトの声だ。


 耐えられずシズクはまた泣いた。


「――なぜだ? なぜ貴様らがここにいる!? 村には別隊が攻め込んでいたはずだ!」


 動揺を隠すことのできないイクトが、怒鳴った。


「村には誰も来てないぞ、イクト」

「なんだと? そんなはずは――」


 イクトが振り返りる。視線の先に野営場があるのだろう。その先に煙が上がっていた。マリアが隊長に、何があったのかと、尋ねる。


「プタハ様ですよ。一人で村から出ていって戻ったかと思うと、村の全戦力でマリア様たちを助けに行けと言われたんですわぁ」

「プタハ? そいつは誰だ!? あそこには三百はいたはずだ」

「……イクト、私の義姉さんよ、あの人は私よりずっと強いわ」

「お前よりも強いだと? そんなやつがまだあの村にいたのか……」


 その間にも、攻撃に耐えられず騎士たちの数がみるみる減る。彼らのやり取りに、自分たちが本当に正しいか、疑問が生まれたのだ。戦場での迷いは致命的だ。


「くそ! あいつだ。あいつを捕らえろ! 他はあきらめろ!!」


 シズクを指し、呼応した騎士がシズク囲み、魔法を放つ。だが、隊長が咆哮で掻き消す。


「この程度、不意でもつかれなければやられんわ」

「シズク!! アリス、ユウ、アーティあなた達は、あの洞窟に身を隠しなさい!!」



 洞窟の奥で、アーティが、ぜぇぜぇ、言っている。彼が動けないユウとアリスを背負ってきたのだ。俺は頭脳派だぞ、ずっとぼやいていた。


 洞窟の奥にあった緑の氷は全て、崩れた壁から入った陽に溶かされている。


「みんな、大丈夫かな……」


 シズクが心配そうに言う。


「あれなら大丈夫だろ。隊長たちが蹴散らしてくれる。俺達は、足手まといにならないように、大人しくしていよう。……うん?」


 ユウの視界を何かが横切る。何度か地面を跳ね、ぷにょっ、とシズクの肩に乗った。


「きゃっ!? ……メリトちゃん? メリトちゃんも心配してくれて、来てくれたの?」


 ぷぎゅー。どこから来たのか、メリトがシズクの肩に乗り、シズクに答えて鳴いた。


「こいつ鳴けたの?」

「めずらしいです。めったに、鳴かないんですよ」


 シズクがメリトの頬を突っつきながら言う。それを見たユウも、頬を突――。


 ぎゃっ、突こうとするユウをメリトが、がばっ、と口を開きその手に噛みつく。ユウは飛び上がり、腕を振り回しメリトを引きはがそうとするが、離れない。


 安心したのか、そんな光景を見てシズク達が笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ