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1部 シズク 5章 黒い蛇が少年と少女の思いを貪り食らう。§1 ②

「……研究棟の地下最下層部、そこに黒い蛇がいる。きっと、あれなのだ」

「義姉さん!!」


 マリアが、声を荒げ、ユウたちは驚く。一度だってマリアが取り乱す姿なんて見たことない。初めて彼女が取り乱した。プタハがこの村の禁忌にユウ達を触れさせたのだ。


「黒い蛇に憑りつかれた者は黒い心……嫉妬、妬み、恨みに囚われ自分を見失い狂うのだ」

「……なんでそんなものがこの村にある?」

「ここは、〈黒い蛇を纏し者〉といつか対峙するための施設なのだ。研究対象があっても不思議じゃないのだ」

「どういうこと? 何? あんた達は、〈黒い蛇を纏し者〉と戦うためにこの村を作ったっていうの!?」


 アリスがマリアとプタハに食って掛かる。シズクは心配そうに三人を見る。


「……その言う通りよ、アリス。ここは〈黒い蛇を纏し者〉による世界の滅びを止めるため私達が作った場所よ。幾年も掛け戦士を育て、より強力な魔法を研究して」


 マリアはユウを見る。


「――でも全部必要なくなったの。ユウ、あなたが、あなたの世界で目覚めた〈黒い蛇を纏し者〉みことを打倒し、それを止めた。そうでしょ?」


 私を殺して、とみことの言葉がまたユウの頭に響く――。


 ――突然赤い鳥が部屋の中を舞う。昨日と同じだ。すぐ守備隊の若者が駆け込んで来た。


「マリア様! 門の前まで敵が来ています!!」

「門の前? 何で誰も気付かないの?」

「村の外の仕掛けが全て壊されていたんです。それに村の場所も分かっているみたいです。今は守備隊とイクトさんがくい止めています。でも数が多すぎる、またあの武器を使っていて、抑え切れない。隊長がユウさん、マリアさん、アリスさん、三人を呼んでます」

「アリスも? 本当に隊長がそう言ったの?」


 マリアは、隊員を、じっと、見つめる。


「マリアさん! 急がないと!!」


 ユウが、マリアを急かした。


「……私とユウの二人で行くわ。アリスあなたはシズクとここに残って」

「私だって、みんなの役に立ちたい! 戦えなくても、治すことなら出来ます!」

「シズク……。彼らの目的が黒い蛇なら、目当てはあなたなのよ。隠れてなさい」

「黒い蛇なら私? 何それ、どういうことですか?」


 シズクがマリアの服を両手で掴み訊いた。


「シズク、みんなが今戦っている。あなたの我儘に付き合ってられないの」


 シズクは俯いたまま、しぶしぶ、手を離す。


「アリス、シズクを頼むわ。今この子を一人に出来ないわ」


 アリスが頷く。マリアに言われるまでもなく、シズクの傍にいるつもりだった。アーティにユウ、それにマリアもプタハも今は信用出来ない。彼女がシズクを守るしかない。


「自分じゃ戦場で役に立ちません。ここに残り、お二人をお守り致します」


 守備隊の若者が、真剣な顔で言った。


「そう、じゃぁ、お願い。ユウ急ぐわよ、隊長達が心配だわ」


 マリアとユウは門に向かう。プタハは研究棟を狙っている可能性もあると研究棟に戻った。


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