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1部 シズク 4章 黒い影が少年達を覆い、§2 ⑤

「――勝手に、出ていって何をしているの!?」


 敵が消え、硝煙が舞う戦場の真ん中に、意識を取り戻したユウとアリスが座り込んでいた。二人をマリアが叱る。すいません、と答える二人の顔は、やりきった、と晴れ晴れしていた。


「それは?」


 マリアは言う。ユウが銃を見ると、銃は光の粒子となり、粒子も空気に溶けていく。


「勝手なことをした二人にはどんな罰を受けてもらいましょうか」


 アリスたちが、消えていく粒子に視線を奪われる中、マリアが言った。


「二人がこなかったら僕達は全滅していた」


 助けてもらった礼か、イクトが二人を庇おうとしている。


「……駄目よ。アリス、少なくともあなたはまだ子供なのよ」


 マリアはアリスを抱きしめた。


「――さっきの初めてユウと会ったときに、あいつが使った魔法よね?」


 アリスの言葉に、アーティが頷く。


「そうだ!! ユウ、さっきの武器は!?」


 イクトは興奮したようにユウに訊く。


「……わからない。アリスが殺される、そう思ったら、頭が真っ白になって……気づいたら、手に銃を持っていた」

「イクトはあの武器、知っているの?」

「あぁ、あれは、短機関銃――サブマシンガンのはずだ」

「のはず? イクトさんはあの武器をどこで?」

「……故郷にある本で一度見たんだよ。本当にあるとは思ってなかった。ユウ、君は一体誰なんだい?」


 イクトがユウを見ながら言った。ユウには答えられない質問だ。俺が教えて欲しいくらいだ、とただ黙るだけだ。


「故郷にある本? イクト、あんたの故郷ってどこ? もしかして、二ホン?」

「……あぁそうだ、二ホン、だ」


 イクトは、アリスの表情をじっと、見て答えた。


「二ホン? ユウの故郷と同じだ。ユウ、イクトさんの故郷に連れていってもらえば何かわかるんじゃないか?」

「アーティ、それは出来ないんだ、。あそこは、もう滅びた。それに、帰る方法がわからないんだよ」

「滅びた? 戦争とかですか? それに、帰る方法がわからないって、一体?」

「……そんなところだ。どさぐさに紛れてなんとか逃げ出すことが出来た。どうやってここに来たのかわからない。でもあそこは、滅んでいた。それは確かだ」


 イクトの姿も声も夢の中の生斗そのものだ。でも彼は違うといった。それに、本当にプタハの言う通りユウが時を越えたなら違う時代の人間だ。イクトが生斗のはずがない。



「――村の門はここよ」


 道の途中でマリアが急に立ち止まり言った。彼女が言ったのは、村に着いてもいいころなのに、村がまったく見えなく、ユウが疑問に思い始めたときだった。だがここには何もない。


「ここ? 何もありませんけど……」

「これでどう?」


 マリアが指を鳴らす。下側から少しずつ、門と塀が姿を見せ、村が姿を現わした。


「村全体に魔法が掛かっているんだよ。こんなこと出来るの世界でマリアさんしかいない」


 戸惑うユウに、アーティが説明する。


「偶然じゃ見つけられない。なのに、あいつらは真っ直ぐここを向かっていた」


 イクトが言うとマリアは、ふーん、とそっけなく答えた。内通者がいる、隊長の言葉だ。この中の誰かの可能性もある。潜られると見つけ出すのが困難になる。だからそっけなく答えたのだ。


「ユウ、アリス。とりあえずシズクを迎えに行きましょ」


 はい、とユウとアリスの返事が重なり、アリスは恥ずかしそうにユウを見る。


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