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1部 シズク 3章 祭りの日に日常を手に入れる。§5 ①

 天井から降る雨が地面に弾ける音が響き続けている。おーい、と誰かがその音を裂いた。


「アリスちゃーん!!」


 後からシズクの声が聞こえた。


「シズクぅーーーー!!」


 声を振り絞る。シズクは暗闇を走り、何度も躓き、何回か転び、アリスを見つける。


「無事でよ――」


 無事でよかった、そう言おうとしたシズクの言葉が詰まる。隊長、マリア、アーティ、イクト、それに守備隊の隊員も駆けつけ、隊長が松明でアリスを照らす。彼女は上半身が下着だけで、太股も剥き出しになっている。それに、ユウが寄りかかっていた。

おぉぉぉ、男共がどよめくような、歓声を上げる。


「な、なに見てんのよ!」


 アリスが胸と太腿を隠す。


「ア、アリスちゃん? そ、そんな格好でユウさんとこ、ここで何してたのかな?」


 シズクは右目を、ひくひく、とさせ、笑顔で、アリスとユウをまじまじと見――。


「ど、どうしたの!? アリスちゃん血だらけじゃない!」


 松明の光じゃわかりにくいが、よくよく見ると、アリスのところどころが赤い。それに、地面に大量の血が流れた跡がある。まだ流れている。


「わたしじゃない、ユウ、ユウが!」

「ユウ? ユウさん?」


 やぁ、とかすれた声を絞り出しユウが答える。その顔が青い。


「お願いシズク。わたしを庇って、ユウが」


 アリスの目に薄っすらと涙が浮かんでいる。弱気な姿をユウに見せるわけにいかなかったのだ。そんな姿を見れば、ユウはもっと無理したはずだ。でも、不安で心細かったに決まっている。ユウの怪我はアリスを庇ったものだし、ここに落ちたのもアリスが原因でもある。


「アリスちゃん……。大丈夫、大丈夫だよ。私がユウさんの怪我、今すぐに治すから」

「駄目よシズク!! あれは人に見せちゃ駄目なの」


 マリアがシズクを怒鳴りつける。


「そんなのどうでもいいです!! すぐじゃないと、間に合わない」


 三人が何を揉めているかわからない他の面々は黙って見ている。

皆の視線を無視し、シズクは両目を閉じ、手を組み、両膝を地面につけた。すると、ユウの周囲の空気から水が滲む。


「シズク――」


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