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九階
風にあたりたい。
凍りつくような冷たい夜風にあたって、気持ちを落ち着かせたいと思った。
非常口を開け、梯子を使って屋上へあがると、新雪をかぶった半球形のドームが視界にはいる。
空から舞い降りる雪と厚い雲のせいで星は見えないけれど、眼前にひろがる夜景がきれいだった。
どこの街の光だろう。
青、黄、赤、緑、それに真珠のごとく白い大小さまざまな光の群れがまるで朧にかすむ恒星みたいにゆらゆらと光を発し輝いている。
もっと遠くの方まで見たい。
と、ふちに足をかけ身体を乗りだしたその瞬間、視界の端にうっすらと青白い光を放つなにかを認めた。
降りしきる雪の隙間から、その光の正体を捉えようとじっと目を凝らして見る。
なんだ、あの光は。
雪をかぶった木々に優しく抱かれるようにして、それは確かに存在していた。