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十二階
「拓海、起きて。拓海ぃ」
か、かあさんッ。
「かあさん、じゃないわよ。朝ご飯食べるんでしょ?」
んんんんん、これは一体なんだ。
「なに、どうしたのよ。どっか痛いの?」
「いや、別に、なんでもないよ」
この声、それにこの小さな身体、なにがどうなっている。
「はいはい、さっさと顔洗ってらっしゃい」
促されるまま布団からでる。
ここは、僕の部屋だ。
たしか大学生になるまで住んでいた川口のマンション。
まてよ今はいつなんだ。
部屋中を見渡してみたが携帯電話はおろかカレンダーすらない。
ふとランドセルを認める。
勉強机の椅子に乱暴に引っ掛けてあるそれは、アジサイを思わせる明るいブルーだった。




