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一階
夢をみた。また智美の夢だ。
十月の中旬、少し肌寒くなってきたころから似たような夢をなんどもみるようになった。
その夢のせいか、智美のことを最近よく考える。
顔も声もほとんど思い出せないのに、いまさらどうして十五年も前のことを想うのだろう。
朝早くから不馴れな車を運転し、自然豊かな埼玉県ときがわ町に到着したのは、ちょうど昼過ぎのことである。
五日前、部長に、「少し休んだらどうだ?」と言われた僕は、上司の配慮に甘え休暇を申請した。
ここ数日、仕事が全く手につかない状態が続いている。
理由は智美だ。
智美のことが無性に気になってしまい、何事にも集中できなくなっていた。
静養先に山頂の天文台を選んだのは、冬の星空を満喫したいという理由もあるけれど、人気のない静かな環境が今の僕にはどうしても必要だったからだ。
ただ、この宿泊施設はどうにも広すぎてなんだか落ち着かない。
一階に降り、サンダルを履いて外へ出た。




