三日後
2日振りに学校に出向くと、すでに私とはるかが別れたとかいう噂が流れていて、まわりの好奇の視線に違和感と不愉快さを感じた。
はるかもどうやら風邪を引いたらしく、マスクをつけて教室の隅で相変わらずいつものメンツとたむろっていた。
その目に私が映ることはなく、むしろ意識して映さなかったと言おうか。
私が席につこうとすると花を筆頭に数人の女子が私の机に集まり、ねえねえとやや興奮気味に話しかける。
「緑と夏目、別れたんだって!?」
別れた、という言葉がギュッと私の心を強く締め付けて、一瞬息を出来なくさせる。
「……そうだよ」
少しだけ間を置いてからそう答えると、
「そうなんだー」
とか
「緑だったらすぐいい彼氏できるよー!」
とかいう今の私には的はずれななぐさめが飛んできた。
「ありがとー」
と曖昧に笑う。
ほら、あなたの元カノが憐れまれてますよ、あなたのせいで。
と、私の中で勝手に意味を込めた視線をはるかに送る。
はるかは相変わらず私に気づかないで、おしゃべりに勤しんでいた。
女子か、まわりのことにも気が付かずに話し続けるなんて。
それすら自分勝手な言い分だと私は自分で知っていた。
結局その日は一度もはるかと目を合わせることはなく、下校時刻になってしまった。
鞄を肩にかけてクラスメイトに笑顔で手を降って校門を出る。
「おい」
はるかはもう二度と私と目を合わせてはくれないのだろうか。
「……おい」
そんなことを考えても無駄だとわかっているのだが、勝手に頭が考えている。
「おいっ、お前!!」
ガッと足を蹴られた衝撃で我に返る。
驚いて後ろを振り向くとそこには身長は私と同じくらい、言い換えればこの歳の男子の平均身長より少し低めの男子が眉間にしわを寄せてズボンに手を突っ込んで立っていた。
少しでも刺激しようものなら殺されそうな雰囲気だった。
何かヤンキーに恨みを買うようなことはした覚えがないのだが。