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花一匁  作者: 芦田香織
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愛しい人

彼の名前は夏目はるか。

私の彼氏。

彼と最初に教室で話した時、照れくさそうに自分の名前は女の子っぽくて余り好きじゃないんだ、と評価した。

大丈夫、私があなたの名前も愛してあげる、なんてバカみたいで、今でも言ってないけれど。


思えば、一目惚れだったと思う。

少し長い襟足。くせっけのそれを押さえつけようとする細長い指。

線が細くて、もう少し髪が長くて声が高ければ女の子に間違えられたんじゃないかといつも思う。

笑うと顔がふにゃってするところも好き。


確か、告白されたのは向こうからだった。近づいたのは私から。

まさかこんなにも魅力的な男子がこの世にいるだなんて思ってなかったから。


授業中、退屈そうにシャーペンをクルクル回す癖とか、たまに失敗して机の上でカシャンとシャーペンが鳴ったときにビクッと跳ね上がる肩とか、

昼過ぎの授業はほとんど寝てしまっていたりとか。

そんなはるかに後で見せてやろう、と必死にノートを取ってる自分に笑えてくるような。

そんな必死になれるほど好きになった人が今までいただろうか。

おかげで成績は上がった。はるかはどうなのかわからないけど。

いつも放課後のありがとう、を聞くためだけに必死になれる。

そんな瞬間が果てしなく愛おしくてたまらなかった。


帰ろうか、とノートを写し終わった彼が席を立つ。

うん、と頷いて、鞄を持ってあとに続いて席を立つ。


背ははるかのほうが15センチくらい高い。たしか175センチあると言っていた。

キスするときは私が背伸びしないといけない。はるかは屈んでくれないから。

ぐっと頑張って背伸びしすぎてぐらついてこけかければ、はるかはその細い腕で抱きしめてくれる。

はるかは口数が少ない。だから、何を考えているのかわからなくなる。

そんなときに、こんなことされると、はるかの優しい雰囲気に誤魔化されてなんだかもう、どうでも良くなってしまうのだから、少し気に食わない。


でも、そのくらい好きなのだ。


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