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花一匁  作者: 芦田香織
19/19

卒業

卒業式の日。

練習でやった時と同じように証書を受け取って、友達と喋りながらグラウンドに出た。

外はとても眩しくて、早くも桜が咲き始めていた。

あなたを、はるかを見つけた季節に戻ってきた。


ふっと別のところに視線を向けると、一人で空を見上げてぼんやりとしているはるかを見つけた。

有梨沙さんがいないのを確認して、はるか、と声をかけた。


「……緑」


少し驚いたように私を見つめる。


「卒業おめでとう」

「緑もね」


「私やっぱりはるかのことが好きだよ」


はるかはまた大きく目を開いて、それから少し困ったように笑って、


「ありがとう」


とだけ言った。

きっとごめんなさいの意味も含んでいた。


そのあとは有梨沙さんの姿が見えたから私は大人しくその場を離れて、ぎゃんぎゃん泣いてる花の頭を撫でに行った。

花は悲しくないよ、って言いながら泣いてた。

また会えるもんね、と涙を流しながら笑った。

つられて、泣いてしまった。


その帰り道。

小金井にばったり出会ってしまった。

どうやら向こうも卒業式だったようで、胸元に花をつけていた。

何か声を掛けようかどうか迷っていると、


「……卒業おめでとう」


と向こうから声を掛けられた。


「そ、そっちこそ、ね」


少したどたどしく返事をする。


「じゃ」


「じゃ、あ、元気で」


そういうと小金井は眉を少し下げて笑った。

ちょっと姿が小さくなったところをねえ、と呼び止める。


「前向きに、なれてる!?」


そう大きな声で叫ぶと、


「わかんね!!」


と返ってきた。

小金井らしい返答だ。

事実私もわからない。それでもいい、これからわかっていけばいい。

小金井の連絡先は消去した。進学先も聞かなかった。

だってもう必要ない。

後ろに縋るだけの理由の関係はもういらない。


はないちもんめを歌う声がどこからか聞こえてくる。


これからは、一人で歩いていく。


日が暮れるから、もう帰ろうか。

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