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憂鬱な朝
『かーってうれしいはないちもんめ』
『まけーてくやしいはないちもんめ』
『たーんす、ながもちどの子がほしい?』
『どのこじゃわからん』
『そうだんしましょ』
『そうしましょ』
こんな歌詞を聞いたのは、一体、いつの事だったか。
夢と現実の狭間、微睡みの中で目を覚ます。
カーテンの隙間から光が差し込んでいる。昨日の天気予報は大当たり、晴天だ。
眩しくて、目を細めながらカーテンを閉める。
二度寝してしまいたい、なんて欲望が頭をよぎったものの、学校に行くまでの準備の時間を考えると、捨てなければならぬ欲望であった。
「緑、ごはん!」
下から母親の声がした。
「はぁい、今行く」
寝間着を脱いで制服のボタンを止めながらそう返事をして、はねているうざったい寝癖を恨みつつ、階段を降りた。