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そのときには灰の月を  作者: しろてん
灰の鳥かご
10/20

10.


 アウリスは走っていた。昼食後の運動といった軽いものではなく、全力疾走だ。 

 林には昼下がりの陽が満ちていて、眠くなるような暖かさを頭上に注いでいる。けれどアウリスの足は止まらない。落ち葉の絨毯がとぎれ、乾いた砂利が靴の下で鳴る。そう言えば、ここに来てからは一度も雨が降っていない。そんなことを脈絡なく思いだしながら、お気に入りの二つ穴のあいた石造りの壁を通り過ぎ、訓練所の古城を目指した。

 はじめに見えてきたのはコの字型に開いた施設の中庭だった。剣や格闘技の練習がある所だ。建物からはわざと遠ざけられたような場所に、大きな木工の檻のようなものが置かれている。初めて見るものだったが、今のアウリスにはどうでもよかった。彼女の興味は別のところにある。

 馬を引く誰かがちょうど裏手の馬屋の方角へ歩いていくのが見え、アウリスは夢中で追いついた。

 その人物は御者だろうか。黒いチュニックを纏い、下は半ズボンに膝丈のブーツという、秋初めの快晴の日には少々暑苦しい恰好だ。

 男性の顔には多分見覚えがない。遠くからではわからなかったし、アウリスは大人たちの殆どと給仕中の短い時間にしか顔を合わせないため、彼が教官の一人だとしても見分けがつかないかもしれない。黒炭の訓練所には五十人余りの人間が暮らしているのだ。ただ、初老の男の洗礼された格好を見て、多分ここに駐在している者ではないと思った。

「どうかしたのか?」

 いかつい四角形の顔の男は、意外に穏やかで優しそうな声で聞いてくる。

 アウリスはすぐに返事ができなかった。走った距離の分、まず呼吸を整えなければならない。動悸が痛いくらい速くて、半袖の服の心臓の辺りを握る。消耗したせいで、膝が少し震えている。

 見知らぬ人だけれど、外界の香りのするこのひとに、アウリスはどうしても聞かなければならない。

「……猫じゃらしは、どこにいますか?」

「ああ、あいつね。まだ二階じゃないか? 今フェゼルが食事を持って行ってたからな」

 アウリスはみなまで聞くより早くに走りだしていた。

 フェゼルは訓練所付きの医師だ。アウリスは遅れて今の御者の言葉を反芻した。

 フェゼルには訓練所に来る前から厄介になっていた。ここよりずっとジークリンデ家に近い下町にて、猫じゃらしに運び入れられたときに容態を見てくれていたからだ。その分、フェゼルのことはじぶんに同行したかのようにアウリスには感じられていたのだが、彼はもともとこの山奥の訓練所に配置が決まっていたらしい。訓練所に来たあとにフェゼル本人からそう聞いた。

 今フェゼルは猫じゃらしと一緒にいるのだろうか。猫じゃらしの来訪にじぶんだけ気づけなかったのはどういうわけだろう。ずっと図書室にこもっていたからだろうか。

 城跡の図書室は一階西の隅っこにあって、山ふもとへ続く道からは遠い。部屋は中庭にも面していない。くわえて窓がないので、外の蹄の音がまったく聞こえなかったのだろう。

 アウリスの頭にはまだ、十分ほど前の河原での光景がぼんやりと残っている。

 向かいあい距離を測る、アルヴィーンとグレウ。野次馬たちの興奮した声。地面に零れた、野菜シチューの香り。大勢の足踏み。

(あれ、どっちが勝ったんだろう?)

 今は他のことに気をとられているけれども、戦いの行方はアウリスにとって無関係ではない。途中で観客席を抜けてきた分、その序盤の出来事は生々しく記憶にある。

 野次馬が集まるのを待っていたのか、アルヴィーンとグレウが何食わぬ顔で一言、二言交わしていたときのことだ。グレウが突然、その手の木刀の一つをアウリスの方へ向けた。

「つまらねえ。なんなら、そこのチビを賭けっか」

 アルヴィーンには言われている意味がわからないようだった。木刀を構え、もう片方の手で肩の長さの髪を結びなおしつつ、その無表情は若干眉をひそめた。

 アウリスも話題についていけていなかった。野次馬の少年たちが周りに半円を描くのに混じったばかりだったので、対戦する二人の会話がよく聞こえていなかったのだ。

「いいな、それ。……そうすっか、勝ちの景品はそこのチビだ」

 グレウは何が愉快なのか楽しげだった。

「俺が勝ったら、向こう一週間そのチビは俺のだ。てめえのセツ二号を俺の奴隷にする。何から何まで世話してもらう、前の晩の寝床を整えんのからはじめて、毎度飯を取りに行かせるのはもちろん、水浴びに連れてってせっせと背中流させるし、面倒くせえ洗濯も何もかも全部やらせる。そいつを擦り切れるまで使ってやるよ」

 アルヴィーンが構えの体勢のまま二歩、三歩と後ずさりした。ちょうど木陰に入ったのでその表情は見えない。

 きっと、人を物扱いするグレウの非道な発言にどん引きしたのだろう。アウリスはそう思ったが、近くでアルヴィーンの変化をより的確に見ていただろうグレウの方は、別の意見を持ったらしい。

「なんだ? やる気ねぇな」

 そう不機嫌に唸った。それに返事をするように、アウリスのすぐ隣で手が挙がった。

「グレウ! アウリスはセツ二号じゃないよ!」

 そのとおりだ。アウリスは、従者でもまして奴隷でもない。肉だんごの助太刀は意外だったが、アウリスは彼の厚意に胸いっぱいになった。

「アウリスはアルヴィーンにつきまとってるだけなんだ」

 肉だんごはそう続けた。

「アルヴィーンは多分迷惑してると思う。アウリスがグレウのものになるとかなあ、そんなこと聞いても、アルヴィーンはやる気出ねえって。逆に負けが好条件だろうよ。グレウに勝ってほしいと思っちゃうかもしれない」

 じぶんはなぜ肉だんごに心許したのだろう。アウリスは彼と日々些末なことで言い合いをしているもの、ここまでの殺意を抱いたのは初めてだった。

 そんなアウリスの苦い事実も、グレウにとっては考察の重要な参考になるらしい。

「へえ、そうなのか、アルヴィーン?」

 グレウは確認するように問う。アルヴィーンは否定しない。

 グレウは一度アウリスの方を見たが、すぐに対戦相手のアルヴィーンに向きなおった。

 野次馬は始終二人の少年たちの応酬を見守っていた。十を超える数の少年たちが異様に静まりかえっている。アウリスは訓練を受けないからわからないだけで、グレウとアルヴィーンという顔合わせには何か、稀有な価値があるのかもしれない。観客の数と、手に汗握る期待に満ちた表情には、そう思わせるものがあった。

 やがて注目の的の一人のグレウが、獰猛な獣のように喉を鳴らした。

「いいんじゃねえ、上等。わかった、……俺が勝ったら、てめえは向こう一週間そこのチビの側を片時も離れんな。そういうのはどうだ? その邪魔臭えガキの側にいて、俺がさっき言ったようなことを全部やってやれ。食事中はもちろん、寝床だって水浴びん時だって始終一緒だ。ん? どうする、アルヴィーン」

 名指されたのはアルヴィーンだったが、声なき声で悲鳴を上げたのはアウリスだった。もっとも、アルヴィーンも無表情の裏側では同じに必死に首を打ち振っているのかもしれない。

(ね、ねどこ……? それに水浴び、っ入浴だなんて……!)

 むりだ。考えるだけで顔に血液が集まる。つむじまで火照りあがってしまう。

 というより、羞恥心以前の問題だった。もしかすると、山奥の訓練所に来て初めて、アウリスは己の性別が露見する危機に見舞われているのかもしれない。

「あ、アルヴィーン……」

 思わず縋るように相手の方を見て、アウリスは虚を突かれた。アルヴィーンはグレウの言葉にまったく動じていない風に自ら木陰を出てきた。両手の間で木刀を放って遊んでいる。

「負ける気がしない」

 挑発か、本心なのか、アルヴィーンが呟いた。グレウの言葉を無視したわけではなく、逆に非常にやる気がでたらしい。

 それを目の当たりにしたグレウもにやりと笑い、八の字を描くように二本の刀を宙で凪いだ。

「言うじゃねえか。じゃあ、てめえが勝ったらそこのチビを」

「アウリスは関係がない」 

 アルヴィーンがグレウを遮り、グレウだけではなく、アウリスも不意打ちを食らった顔になった。

 野次馬の注意は今や、対戦者の二人はもちろん、アウリスにも集まっている。今日を経て一躍有名人になるかもしれない。感動するアウリスはまったく気づかなかった。

(アルヴィーン、わたしの名前知ってたんだ……)

「へえ、そう。負けたら俺が引き受けてやるって言ってんのに、ここにきて出し惜しみか?」

 グレウが茶化す。声は酷薄で、漆黒の瞳には一抹の光も通らず、どこか突き放して愉快がっているような感じがした。対するアルヴィーンは静かに首を横に振る。

「勝ちの付録とやらはあとで請求する」

 負ければ、我慢して大人しく今以上にアウリスにつき纏われる。一方、勝ったときのことはそのとき考える。アルヴィーンはそんな風に纏めたいらしかった。

 一方、勝敗によって何を得、何を失うのかを完全にわからないグレウは用心深くあるべきだろう。にもかかわらず、彼は二つ返事で提案を呑んだ。言い合いに飽きてきているのかもしれない。

 二人の少年はここで互いに近づき、互いの刀身の側面を軽く交えた。グレウの方は右手の木刀のみを翳す。アウリスには見たことのない儀式だった。それが、対戦の始まりの合図であることは唐突に周囲がどよめいたことでわかった。

 五歩も離れないうちに打ちあいが始まった。比べ物にならないくらいに派手な音。先制はアルヴィーンだ。

 少年たちの顔つきは少し前までとは違う。グレウの顔からは笑みが消え、アルヴィーンの方も心なしか、眠たげな目つきがそこはかとなく吊り上がっている。

 河原の地面に一本の線が引かれてでもいるように、二人の少年は直線で正面衝突していた。見ている観客の方にも熱が入る。どちらかが踏み込めば、そのたびに野次馬がそろって足踏みする。訓練所独特の応援の仕方なのかもしれない。

 地面の唸りを感じて、アウリスの体にも痺れと興奮がくりかえし伝う。

「グレウは二刀流なんだ」

 そこは見ればわかる。肉だんごは奇声に近い歓声を上げるあいまに、アウリスに話しかけてきた。

「木刀はどれも同じだ。グレウは二倍の重さを操ってるってことだ! 重いだけじゃねえ、慣性力! 慣性力って知ってるか? 重いモン振り回すときに体にくる反動みてえなもんだよ。二刀流はだから難しい。習い始めで腰がいっちまう、ふつうは体が壊れちまう。そういう流儀をあえてやる! 並の鍛え方じゃあねえよ、それをあんな軽々と……グレウはやっぱ、半端ねえ……!」

「静かにしないか、みんな! アルヴィーン様の気が散る! あっ、惜しい! 今のを見たか、ええ? 給仕の小僧! おい見たか!?」

 逆側に立つセツも叫び散らしている。肉だんごの方は口も悪くなっている様子。なんにせよ、どちらもアウリスに言葉が届くようにとわざわざ頭を屈めてくれるうえ、耳元で怒鳴るのだから、たまったものではない。

 うるさい。集中させてほしい。

 アウリスは齧りつくように見ていた。左右の二人が熱狂するくらいに見境のない戦いが繰り広げられている。時々、手を伸ばせば届きそうになる。アルヴィーンの髪がなびくのがすごく涼しげな感じで、いい。じぶんは背が低いから、取り巻きの輪の最前線に出られてほんとうによかった。

 危機感が足らなかったのかもしれない。アウリスの真向かいで、グレウがアルヴィーンの足払いをくらった。グレウはとっさに後ろへ跳んで転倒の衝撃を和らげようとしたようだが、ちょうど背後にいた野次馬の二人が、その勢いの餌食になった。

「痛ぇ!」

 三人はいっしょくたに倒れた。今のは野次馬のどちらかの悲鳴のようだ。グレウを追っていくアルヴィーンの足元を見れば、鼻血程度の血痕が散っている。

 一人が地面に倒れても、終わりではないのだろうか。

 アウリスはそのことに重ねて驚かされた。

 秘密で下町に出て、ちゃんばらごっこをしていた頃を思い出す。倒され、地に伏した者は、仲間たちに駆け寄られて助け起こされるはずだった。そこで勝敗が決まっているからだ。

 けれど目の前の展開はちがう。グレウが前のめりに起きようとするところへ、アルヴィーンは迷いなく刃を振り下ろした。

「あっぶねえ!」

 肉だんごの悲痛な声が響く。

 グレウはどうにか右手の木刀でアルヴィーンの一撃を防いでいた。しかし問題がある。一緒に倒れた野次馬たちがすぐ後ろで障害物になっているのだ。

 アルヴィーンも当然それに気づいたようで、逃げ場のないグレウを真正面から蹴りつけた。グレウはくの字に身を曲げて落ちた。

 なおもグレウは身を起こそうとする。その木刀を握る左手を、アルヴィーンが踏みつけた。

「おい! さっきから何やってんだ! 剣術の手合いだろうが! 汚ねえんだよ!」

 肉だんごが叫ぶ間に、グレウは自由な刃を凪いでいた。切っ先が河原の地面を撫で、砂利が宙に舞う。

 目くらましの一撃は見事的中した。グレウは予想していたから、目を瞑るか薄目になるかして避けたのだろう。アルヴィーンの攻撃が緩んだ隙を突き、グレウは立ち上がる勢いに乗って柄部分を前へ出した。

 こめかみを殴られ、アルヴィーンがひどく危なっかしい足取りで後ずさりした。すぐ再び前を向いたが、彼の半面は血まみれだった。前髪が汗で張りついていてよく見えない。額が割れたりしたのだろう。

「この外道! 今のはなんだ、ええ? 砂で目を潰すなんて最悪に姑息な手ではないか!」

「なに言ってやがんだ! それなら足払いだって姑息じゃねえか! だいたい、戦い方が嫌味なんだよ、アルヴィーンは! 踏んだり蹴ったり足癖悪ぃな!」

「何だと貴様! 嫌味で粘着質はグレウだろうが! さっきのを見たろう! 真っ向から刃を交えず、あえて柄で殴りにくるか、ふつう? あれは人を愚弄しているのか、ええ? 野蛮粗野極まりない!」

 両側の少年たちがアウリスを挟み、吠えあう。アウリスは少々辟易しつつ、戦況からは目を逸らさなかった。いや、逸らせなかったのかもしれない。

 きっとどちらの言い分も違うんだろう、とアウリスは肉だんごとセツに対して思った。アルヴィーンもグレウもべつに剣術の競い合いだの正攻法だの考えているわけではないだろう。

 誰か怪我するまでやめねえんだよ。肉だんごの言葉をアウリスは思い出した。訓練所の教官が許可しないわけだ。訓練中に体を壊したら本末転倒だろう。生涯剣を握ることの叶わない傷を負う可能性だってある。

 それでも、それぞれ戦い方の信念みたいなものはあるのかもしれない。少なくとも、アウリス個人にはそんな風に見えていた。剣への憧れはじぶんにも、ある。そんなじぶんが二人の戦い方を見せられても不快に思わない理由は、多分、彼らの剣筋が洗礼されているからだ。

 アルヴィーンの背筋をきれいに伸ばした、その高い背をより高く見せる構え。どんなに激しく、肉だんごによると姑息な攻防の間にも、常に刃の切っ先と間合いに注意している冷静な戦い方をアルヴィーンはしていた。

 そして、悔しいことに技ではグレウも負けてはいない。

 グレウの二刀流なんて、アウリスが真似すれば二分もかからず腕が上がらなくなるだろう。特に筋肉質な体つきではないのに、どこに力が隠れているのか。二本の木刀を己の両手の代わりみたいに違和感なく操っている。得体の知れないという意味では、アウリスはグレウの方に倍の脅威を覚えるかもしれない。

(初めて会ったときにけんかしたけど、本気じゃなかったんだな、グレウ)

 そう思うと、悔しすぎる。

 肉屋のエドに。牧場のトマスに。貴族のじぶんより二回りも大きかった下町の少年たちにわざと勝たせられていると気づいたとき、まったく同じ気持ちになった。そんなことをふと思いだした。

「したいな、……剣」

 知らないうちに呟いていた。

「習いたいな」

 アウリスは興奮に呼吸が上がっていた。気づくと周りと一緒に叫んでいた。

 恐怖はある。けれど、暴力だけが展開ではない。目まぐるしいけんかの最中にも剣術の応酬は美しく、見ているとやはり楽しく、さらに期待感が高まる。直前までのアルヴィーンとグレウの賭けの話なんてもうすっかり頭から抜けていた。

「気合い入ってんなあ、二人とも」

 肉だんごが叫ぶのではない会話の声で言った。

 アウリスはうなずく。二人とも確かに楽しそうだ。グレウの目つきの悪い顔は凶悪な笑みを浮かべている。アルヴィーンの方も、琥珀色の瞳がフクロウの目のごとく捕食者の輝きを放っていた。後者は変わらずの無表情だが。

「こんな山奥に閉じ込もってちゃあ、周りに女もいねえからなあ。発散するって言やあ、こんな形でしかねえんだよ」

「おぞましい奴め! そんな卑猥な言葉を口にするなどと恥を知れ!」

「うるせえ! グレウがよくそう言ってボヤいてんだ!」

「……そういうことを言う人ほど実は恥ずかしがり屋さんなんですよ」

 剣の打ち合いには割り入れないので、アウリスはじぶんの頭上の言葉の打ち合いに参加した。肉だんごは聞き取れたようだ。

「ふうん、そんなもんか? そうかグレウって奥手なのか」

「逆に、アルヴィーンのような人の方がむっつり助べえなんですよ」

「貴様! 言う事かいて、我が主に対する侮辱はこのセツに対する侮辱以上に許せん! 許せんぞ!」

 セツも聞き取れたようだ。何か喚き続けているようだが、セツの忠犬ぶりには飽きているので、アウリスは無視した。

 そのとき、思ってもみなかったことを彼が言った。

「そんな低俗な事情ではない! アルヴィーン様がやる気を出しているとすれば、それは審議会の方が来られているからだろう」

「審議会?」

 聞き覚えがある気がしたので、アウリスは聞き返した。肉だんごが唐突にふり向いた。

「そうそう! 猫じゃらしが来てるよ」

「え?」

「猫じゃらしだよ」

 肉だんごは天気の話をしているように軽々しかった。

「いつここに寄るのかって気にしてたじゃねえか。そうだ、さっき言おうと思って忘れてたんだ。悪い、アウリス」



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