実銃コレクション
それから1週間後。
おれの実銃コレクションは……6丁にもなっていた。
それらは全て、壁に飾っている。親にはエアガンという事にしている。
はやり、1番最初に頼んだのはシグザウエルP226。おれがサバゲーで使ってるやつだ(使ってるのはエアガンだけどな)。
他にハンドガンは、リキトが使っているデザートイーグルと、ガクが使っているグロック17。
あと、ライフルがSG552、M4A1、G36C。これもそれぞれがサバゲーで使っている武器だ。
なんでこれを頼んだかというと……真っ先に思いついたのがこれらの銃だったからだ。
これで“願い”を6つも使ってしまった。だが、後悔は全くしていない。
むしろ大満足だ。まさか実銃を持てる日が来るとは、思ってもみなかったな。
ただ……撃ちたい衝動と毎日闘わなければならない。
銃声なんか聞かれたら一発でアウトだろう。そう思って弾薬は頼んでいない。
でも……撃ちてぇ~!
いや、撃たなくてもいいから、弾薬も欲しい~!
別に、撃たないのなら問題は無いだろう? ただ、マガジンに弾薬を込めるだけだ。
絶対に引き金は引かない。
そう思うと、もう我慢ができなくなった。
おれは、カバンの中に隠してあったランプを取り出して、つついた。
「なぁ……お願いがあるんだけど」
すると、ランプから黒い煙が出てきて、それがカラスになった。
最近出てくる時はいつもカラスだな。
最初の方は巨大ムカデとか、コウモリの翼が生えたおっさんとか、ラフレシアとか、とにかく不気味だった。
それに比べるとカラスが一番いいな。
「30個も叶えてもらえるからと言って、ロクに考えもしないで頼んではいるまいな?
ほぼ毎日願いを叶えている気がするのだが。まあオレ様はどうでもいいがな」
「弾薬をくれ。そうだな……9mmパラベラム弾200発、.50AE弾100発、.223レミントン弾500発。
あ、もちろんホンモノのヤツだぞ」
「小僧……殺したい者でもいるのか? それとも世界征服でもたくらんでいるのか?」
「バカ、そんな訳ないだろ! おれは絶対に撃ったりしねぇよ。ただ、マガジンに入れたいだけだ。それだけだ」
「ふん、どうだかな。だが、まぁいいだろう。それが小僧の願いならな。仕方あるまい。
だが、“願い”は3つ分つかうぞ。いいな?」
「オッケー」
そう言うと、カラスは何やらブツブツ唱え始めた。
すると……部屋の真ん中に直径2mくらいの青く光る円が現れた。円の中には見たことも無い文字がビッシリつまっている。
円はさらに明るくなっていき――円の中から勢いよく火花がふき出した。一瞬、部屋が青い光に包まれる。
思わず目をつぶる。まったく、何回見ても驚かされるぜ。
目を開けた頃には、すべてが元通りになっていた。ただ、部屋の真ん中に木箱が3つ、たたずんでいた。
「お?」
木箱には、弾薬がそれぞれ入っていた。
「お~! サンキュ!」
おれは机の上に置いてあったP226をつかみ取ると、素早くマガジンを引き抜いた。
今からタマを込めるぞ……。
おれは、恐る恐る木箱から9mmパラベラム弾を取り出した。重たい……。
ゆっくりマガジンに入れた。おお~~!!!
「もう用は済んだな。オレ様はかえるぞ」
「オッケ~」
そして、弾薬をフル装填したマガジンをグリップに戻した。
少し重くなったP226に安全装置がかかっているのを確認すると、なんとなくポケットに入れてみた。
これでおれは、最強の力を手に入れた。魔法なんか使えなくても、おれは最強……
っておい! なに考えてんだよ!
ていうか、ちょっと待てよ? 落ち着いて考えてみると、これってスゲェやばくないか?
おれはとんでもないモノを注文してしまったのかもしれない。
……捨てるか? いや……。
とか考えながら、結局全ての銃に弾薬を込めたのだった。
翌日。
ピンポーン。
学校から帰って、インターホンを鳴らしているのだが、誰も出ない。
出かけてんのかな。
おれは自分の鍵で開けて入った。
静かだ。
いや、誰もいないのだから当然なのだが……静かだった。
おれは自分の部屋に入ると、カバンを置き、魚にエサをやった。……なんだろう。さっきからなんか落ち着かない。
何となく、おれは壁に掛けてあるP226をとって、ポケットに入れた。
ふん、バカバカしい。おれは、家に誰もいないってだけで何に怖気づいてんだよ。ガキか。
だが……どうしてもP226を手放す気にはなれなかった。
7時になった。
まだ誰も帰ってこない。弟にも、お母さんにもメールしたのだが、返事は無い。腹減ったし、レトルトのカレーでも食べるか。
そう思って台所に行った時。突然目まいがした。その後に強烈な吐き気が襲ってくる。
おれはたまらず膝をついた。
「うぅぅっ……うっ……」
どうしたってんだよ。何かの病気にでもかかったのか? おれ、死ぬのか?
そう思った時、目まいも吐き気もおさまった。
何だったんだ?
おれはゆっくり立ち上がった。その時。
凄まじい爆音がして、何かが吹き飛んだ。――たぶん、玄関のドアだ。




