表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
720時間の猶予  作者: パーシー
プロローグ
1/4

発掘

おれは茂みに伏せたまま、息を殺した。

足音が近づいてくる。

おれの愛銃、P226を握る手に力が入る。鼓動が速い。ヤツに聞こえないかと不安になるほどだ。


足音がさらに近付き――遠ざかっていった。


ふぅ……。一瞬力が抜ける。

だがボヤボヤしている暇は無い。ヤツは今、おれに背を向けている。

こんなチャンスを逃す訳にはいかない。


おれは素早く立ち上がると、容赦なく引き金を絞った。



「ぐわぁっ!」

弾はわき腹に命中した。

ヤツがこちらを振り返り、目があった。その目には悔しさの色が浮かんでいた。

「おお、アキラじゃねーか。くっそ~、やられた! そんなとこにいたなんて、気配すら感じなかったぞ」

「そういうおまえはリキトか。いいからさっさとコールしろよ」

「分かってるって。ヒット!」

そう言うとヤツは去って行った。

あの頭悪そうな足音でなんとなく分かってたんだけどな。リキトだったか。


今ので他の敵に位置がバレたかもしれない。さっさと移動した方がいいな。

おれは体勢を低くして、木々を縫うように走った。


少しして、休憩しようとしたその時。BB弾がおれの耳のすれすれを通過した。


アッブネェ~!!


おれはサッと木の陰に隠れて、様子をうかがう。敵の姿を確認。距離は……20メートルといったところか。

そして、今度は周囲を観察。15メートル程さきに大きな大木がある。

よし、あそこまで行こう。


おれは新しい敵に一発撃つと、走り出した。


フルオートで撃ち出されるBB弾の嵐が、おれのすぐ後を追ってくる。

おれは一番近くにあった細い木の陰に転がり込む。

すぐに立ち上がり、今度は周辺の木々の間を縫うように、ジグザグに走る。BB弾もおれに続く。


このスリル。このスピード感。たまんねぇゼ!


目標の大木はもう5メートルにまで迫っている。

だが、なんてこった。そこまで身を隠せる木が無い。

あそこまで行こうと思ったら、開けた空間を5メートルも駆け抜けなければならない。


おれは振り返って敵を確認した。

遠目にも、その顔が勝利を確信して笑っているのがわかる。


だが、すまないねぇ。

おれはこういうシチュエーションには慣れっこなんだよ。

なにせ、サブマシンガンを装備せず、ハンドガンだけで戦うってのがおれのスタイルなのだから。

おれは深く息を吸い込むと、障害物のない超危険地帯に躍り出た。


BB弾の嵐が襲いかかってきた。

だがそのタイミングも、射線も、全て予測通りだった。

おれは素早く地に伏せてそれをかわすと、伏せたまま発砲。敵の足元に着弾した。

とたんに銃撃が止んだ。よし、形勢逆転だな。


おれは発砲しながら立ち上がると、走り出した。

そのままマガジン1本分撃ちきるころには、目標の大木にたどり着いていた。


おれは大木の陰に隠れて、慣れた動きでマガジンを交換していた、

その時。

一瞬、太陽の光が反射して、足元で何かがキラリと光った。

「なんだ?」

こんな状況で、普通なら無視するだろうが、これには何か不思議な引力のようなものを感じた。

500円玉が落ちているのを見つけてしまったかのような。


おれはかがんで観察した。

黄金の、コップの取っ手のような物が地面から突き出ている。これが光ったのだろう。

にしても、これは……埋まっているのか?

取っ手を引っ張ってみた。ダメだ。ビクともしない。


今度は掘ってみた。おれはスペアマガジンを取り出して、夢中になって掘った。

徐々に全容が明らかになっていく。

どうやら、取っ手は球状のものに付いているようだ。その球状のものが半分ぐらい現れた時。

もう一度引っ張ってみた。

スポッ!

今度は抜けた。


いよいよ全容があらわになったそれを観察した。

これは……


「……魔法のランプ?」


な訳ないか。

だが、おれが掘り出したそれはあまりにも魔法のランプな姿をしていた。

数千年の時の経過を感じさせる、すり減った体。でも、それでいて輝きはあせていない。


その時、すぐ近くで足音が聞こえた。

クソ、これに夢中になっていて敵の接近に気が付かなかったか。

急いで銃を構えた。

どこだ……? 敵はどこにいる?

木々の陰、茂み……必死に探すが、見つからない。音は聞こえたのに。


どこだ……いた!


10メートルほど先の木の陰に敵を発見した。

が、その時にはもう遅かった。飛んできた弾が胸に命中した。



「ヒット!」

弾が当たったことをコールして、両手を上にあげた。

それと、いま気付いたんだが、どうやらおれは無意識のうちに魔法のランプ(?)を背に隠していたようだ。


さて、どうする。

とりあえず持って帰るか。誰にもバレないように。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ