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ミミック・コミュニケーション  作者: ごぼふ
五章 ミミック・コミュニケーション
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ディープブルー&ピンク

 足の痛みと混乱で溺れそうになりながら、三橋愛華はようやく水面に顔を出した。

 急いで落ちてきたテラスを見上げてから、飲んでしまった水をケホケホと吐く。

 ……立島大輔が居ない事に安心した自分を確認し、嘔吐感に目に涙をにじませた。

 どうしてこんな事になってしまったんだろう。よぎる考えを、必死で振り払う。

 きっと、まだ大丈夫だ。もっともっと人間を食べれば、きっと彼は認めてくれる。きっと、自分は彼のようになれる。

 きっと……。

 ドボン。 

 背後で、何かがプールに落ちた。

 本能が必死で拒むのを感じながらも、愛華はまたも後ろを向いてしまった。

 ばしゃん……、ばしゃん……、ばしゃん、ばしゃん。

 水上へと跳ねながら、プールの端から何かが迫ってくる。

 リズム良く、大きな水しぶきを上げながら。

 あれはバタフライだ。 自分が彼と改善しようとしていた、バタフライ。

 スピードはゆっくりだが、まっすぐ自分に向かってくる。

 愛華は微笑もうとした。

 大丈夫、怖くない。

 自分が憧れ、愛した人だ。

 大丈夫、彼が例え私を食べようとしているとしても、一つになることは怖くない。 食べようとしているのだとしても、食べようと、食べられる食べられる食べ化け物に食べられる。

「いやあああああああ!」

 愛華の目の前で、それがひときわ大きく跳ねた。 牙がびっしりと生えたディープピンクの口腔。

 ざばん!

 彼女の叫びは、それに体ごと飲み込まれ消えていった。

 ――波紋と共に、プールに満ちる静寂。

 しばらくし、立島大輔は水面から顔を出した。

 顎を引き、彼を宙から見下ろす双子に問いかける。

「……なぁ、愛華って本当に人間だったのか?」

『人間を丸呑みできる人間なんて』

『いる訳無いじゃない』

 大輔の足が水底を離れ、ゆっくりと体が水面に浮く。

「だよなぁ」

 月を見上げながら、彼はまた水底へと沈んでいった。


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